(3)進級・卒業の判定基準

 進級にあたって全科目の履修・修得を条件としている学校が全体で53.0%、一定程度の不認定科目を認める学校全体で46.1%だった。この結果を校種別にグラフ化してみると(図5−1)、全科目履修・修得を条件としている学校が、1.進学校の67.7%、2.中堅校の51.0%、3.課題集中校の42.9%と順序よく並んでいることが分かる。不認定科目があっても進級させるという学校については、この逆の順序に並ぶことは言うまでもない。単位制の弾力的運用に関しては、課題集中校で積極的に導入していることが分かる。ではなぜ、進学校では導入に消極的なのか?大学進学希望者がほとんどを占める進学校では、受験科目だけを勉強すればよいという受験対策指導をしていないこと、どの科目も教養の基礎として必要であるとして、履修した全科目を修得させる体制を維持しているのではないだろうか。卒業にあたっての条件についても、校種別に見ると同様の傾向を示している(図5−2)。全科目履修・修得を条件としている学校が、1.進学校の61.3%、2.中堅校の57.1%、3.課題集中校の42.9%と並んでいる。

 このデータと、判定会議後の原級留置候補生徒への年度内追認(再試験・補講等)の機会の有無のデータとをクロス集計させたものが、校種別グラフ(図5−3、図5−4)である。進級・卒業条件と追認との関係を調べてみると、次のような点が問題点として浮かんでくる。進学校は全科目履修・修得を課している学校で、進級において追認の機会のない学校が29.0%、卒業において追認の機会がない学校が19.4%存在している。中堅校では、全科目履修・修得を課している学校であれ、一部時認定を認める学校であれ、進級・卒業ともに、1〜2割の幅で追認の機会のない学校存在している。課題集中校は一部不認定科目を認める学校で、進級に際しては25.7%、卒業に際しては20.0%が追認の機会を認めていない。特に卒業に関しては、2月上旬に学年末テストを実施して、2月半ばには卒業判定会議が開かれる学校が多いと思われるが、3月1日前後の卒業式に間に合わなくても、3月末日までの期間に追認の期間を設定すべきではないだろうか。

図5-3・図5-4

 前回の高総検のアンケートにはなかった項目で、今回は進級・卒業判定会議前に再試験等の機会が保障されているか否かを聞いている。それを校種別に集計してグラフ化を試みた(図5−5)。しかし、このアンケートで「再試験等の機会が保障されていますか」と聞いたため、制度として保障されているか、教科担当が再試験をする期間があるか、回答者には判別しにくかったようである。「ある」と回答した中に教科担当の判断で行うという回答があるとともに、「その他」の回答のほとんどに同趣旨の回答があったため、「その他」の回答を「ある」の中に含めて分析する。「ない」と答えた回答(ここでも個々にやっていても、「制度」がないと判断した可能性もある)が、進学校で51.6%、中堅校で63.3%、課題集中校で62.9%もあった。学年末テストの段階に絞って考えると、5割以上の学校で判定会議前に、再試験の機会がないのは奇異に感じる。それこそ、病気・事故等でテストが受けられなかった、テストの点数が合格点に達しなかったなど様々な事情があるが、教務部がきちんと再試験の会場・期間を設定するなりの対応が必要である。


(4)卒業単位数

 卒業単位数の校種別データ(図6−1)のグラフは、無回答の学校が13校あったため、その数を除いた割合となっているので注意されたい。80単位を卒業単位数にしている学校は全体では30.4%であるが、1.課題集中校の中の53.1%、2.中堅校野中の20.5%、進学校の中の19.2%とはっきりと課題集中校とそうでない学校の際が現れてくる。さらに、卒業単位数を80〜84単位の幅にとって見ると、1.課題集中校87.55、2.中堅校45.5%、3.進学校34.5%と中堅校と進学校の間にも開きが出てくるのが分かる。
 文部省は80単位を卒業に必要な単位数としているが、実際は80単位を超える修得を神奈川の県立高校(全日制普通科)の7割が要求していることになる。例えば90単位を卒業単位にしている学校で、4単位を修得できなかった生徒がいた場合に、文部省の基準をクリアーして86単位を修得していながら卒業できないというケースが出てくる。その生徒はもう1年間3年生に在学して卒業にこぎ着けることになるが、退学して通信制高校に入った場合はどうなるのだろうか?
 そこで、80単位修得していても卒業できない場合があるかを聞いて、校種別にまとめてみた(図6−2)。全体では卒業できないという学校が75.0%あった。尚、無回答の学校が23校あったが、その数を除いた割合になっている。1.課題集中校の中では84.1%の学校が卒業できないと回答している。2.進学校の中では81.0%、3.中堅校の中では84.1%の学校が卒業できないと回答している。逆に、80単位修得していれば卒業できるとした学校は、全体では25.0%だったが、1.課題集中校の44.4%、2.進学校の19.0%、3.中堅校の15.9%であった。単位制の弾力的運用が、卒業単位数にまで及んでいないのが実態である。