(2)履修の認定について

 履修とは授業への参加のことをいい、授業日数の内どれくらい出席したかまたは欠席したかで判定される。修得は授業に参加した上で、その授業の目的から見てどの程度達成しているか、つまりどの程度の成績を取ったかで判定される。アンケートではまず、履修と修得を分けた規定があるかどうかを聞いている(表5−1)。前回は規定があると答えた学校が15.3%しかなかったものが、今回47.0%にまで増えている。文部省は現在の学習指導要領から、必修科目は必履修科目であって修得を義務づけていないこと(従来と同じだが)を強調し始めて、履修と修得の分離の指導を強化してきた。その成果と受け止めることができる。
 履修の認定は授業時数の何分の1出席したかで決まる(表5−2、表5−3)。授業時数を実際の授業時間数とする学校は前回59.2%だったものが45.2%に減っていて、標準時数(文部省は1単位の年間授業時間数を35時間としている)とする学校が40.8%から44.3%に微増している。実際の授業時間数が標準時数を決して上回ることはないと考えると、やや緩やかになったといえる。では、欠課時数の割合はどうなっただろうか。1/3とする学校が26%ほど減少して、1/2とする学校が1割ほど増えた。ここでも少し穏やかになったと考えられる。
 しかし、この履修要件のリミットオーバーに対する対応はむしろ厳しくなっている(表5−4)。規定通り対応と特別指導をして補充する学校の割合がほぼ逆転して、規定通り対応する(特別な事情のある場合は除く)学校が6割を占めるようになった。遅刻・早退を授業の欠課に換算する規定を持つ学校が増えたことと合わせて、授業への参加を厳しく要求する傾向が働いていると考えられる。


表5-1 履修と修得を厳密に分けた規定があるか
今回

%

実数 前回

%

1 ある 47.0 (54) ある 15.3
2 ない 50.4 (58) ない 84.7
3 無回答 2.6 (3)


表5-2 授業時数の算出方法
今回

%

実数 前回

%

1 実授業時数 45.2 (52) 実授業時数 59.2
2 35時間X単位数(標準時数) 44.3 (51) 標準時数 40.8
3 その他 5.2

(6)

4 無回答 5.2 (6)

 
表5-3 履修不認定となる結果時数の割合
今回

%

実数 前回

%

1 1/3 62.6 (72) 1/3 88.7
2 1/2 12.2 (14) 1/2 2.8
3 2/5 0.9 (1) 1/5 2.8
4 その他 16.5 (19) その他 5.6
5 無回答 7.8 (9)

 
表5-4 履修要件のリミットオーバーへの対応
今回

%

実数 前回

%

1 規定通り対応(特別な事情は除く) 60.9 (70) 規定通り 35.3
2 欠時補充など特別指導を実施 33.9 (39) 特別指導 64.7
3 無回答 5.2 (6)



(3)進級・卒業の判定基準

 学年制を取っている現在の高校は、学年毎に進級判定会議を行い、その学年で定められた教科・科目の単位数を履修・修得しているかを判断して、進級か原級留置かを判定する(表6−1)。その学年で定められた全科目を履修・修得しなければならないという学校は、4校に3校だった割合が減って2校に1校となった。定められた限度内ではあるが不認定科目があっても進級させる学校が半数に及ぶようになった。しかし、不認定科目があって進級ができない生徒へのフォロー(年度内に追加認定を行う)は、7割から6割に減ってやや弱まったと言える(表6−2)。
 単位制の弾力的運用と呼ばれるこの措置は、卒業判定会議でも同様の傾向を示している(表6−3)。最終学年で全科目の履修・修得を求めている学校が9割ほどあったのが、半数に減った。そして、不認定科目があっても卒業させる学校が半数近くになった。
 前回の調査では、「仮進級」という表現で、未履修・未修得科目が一定範囲内であれば進級させ、時年次に補講・課題・テスト等を行い単位を追加認定している制度の有無を聞いている。6校(6.6%)が実施していると答えていたが、今回「再履修制度」という表現でその有無を尋ねたところ、23校(20.0%)から「ある」との回答を得た。予想以上に実施している学校が多かった。しかし、厳密には「再履修」とは一定の範囲内であれば未履修・未修得科目があっても進級させ、再度選択科目として履修させる制度のことであるが、言葉の定義が曖昧だったため、「ある」と回答してくれた学校に電話で聞き取り調査を行った。その結果、未履修・未修得科目について一定の範囲内であれば進級させ、授業時間外の補講・課題・テスト等を実施して次年度(主に1学期末)に追加認定を行っている学校が多いことが分かった。こうした年度を越えた追加認定制度も含めて「再履修制度」は着実に増加しているといえる。
 しかし、履修・修得ができずに原級留置となった生徒に対する措置は、厳しくなった。原級留置になった生徒が、いくつかの修得科目を持っていても、次年度はそれらをすべて無効とする学校が増えている(表6−4)。無効にしなかった学校が2割ほどあったが、それも1割に減っている。ところが、原級留置となった生徒が転学・退学する場合は、不認定となった科目の単位を認定する学校が増えている(表6−5)。規定の有無に関わらず単位認定を行う学校が前回は40.3%だったのが、今回は64.3%と倍増していて、あくまでも認定しないとしている学校は10.4%に止まっている。原級留置者つまり留年生に対しては、在籍する限り単位制の弾力的運用は適用しないが、学校を出ていくとなると弾力的に運用するというちぐはぐな内容になっている。


表6-1 進級条件
今回

%

実数 前回

%

1 全科目の履修・修得 53.0 (61) 全科目 75.4
2 一定程度の不認定科目を認める 46.1 (53) 一定程度認める 24.6
3 無回答 0.9 (1)


表6-2 年度内の追認機会
今回

%

実数 前回

%

1 ある 60.9 (70) 再試験させる 68.2
2 ない 34.8 (40) 再試験させない 31.8
3 規定なし 1.7

(2)

4 無回答 2.6 (3)

 
表6-3 卒業条件
今回

%

実数 前回

%

1 全科目の履修・修得 53.9 (62) 全科目 87.1
2 一定程度の不認定科目を認める 46.1 (53) 一定程度認める 12.9

 
表6-4 原級留置者の履修・修得単位の扱い
今回

%

実数 前回

%

1 すべて無効 76.5 (88) すべて無効 35.3
2 当該科目以外は認定 9.6 (11) 無効にせず 64.7
3 その他 12.2 (14) その他 9.9
4 無回答 1.7 (2)

 
表6-5 原級留置者が転退学する場合の不認定科目の扱い
今回

%

実数 前回

%

1 教務規定に定めがあり認定している 22.6 (26) 規定で認定 9.0
2 規定にはないが認定 61.7 (71) 慣例で認定 31.3
3 単位の認定はしない 10.4 (12) 認定せず 34.3
4 その他 2.6 (3) その他 25.4
5 無回答 2.6 (3)



(4)卒業単位数

 大きく変わったのは卒業単位数である。前回は、学習指導要領で定められた卒業に必要な単位数80単位で卒業を認める学校は皆無だった。やっと85単位で卒業を認める学校が6.7%出現する程度だったのに対して、今回は80単位ぎりぎりで卒業を認める学校が、27.0%と大幅に増えた(表7)。前回は最多頻度が、90単位と95単位に見られたが、今回は80単位となっている。この背景には、1992年度9月から月1回ではあるが施行に入った学校五日制の影響がある。1995年度からは月2回の学校五日制が実施され週授業時間数の削減がその学校でも不可避であった。こうして県下全体で卒業に必要な単位数の削減が進み、49.6%とほぼ半数の高校が80〜84単位を卒業単位数とするようになった。しかし、85単位以上の修得を求めている学校は39.1%にのぼり、90単位以上の修得を求めている学校は18.3%存在する。
今回 % 実数 前回 %

 

80 27.0 (31)
82 7.0 (8)
83 7.8 (9)
84 7.8 (9)
85 6.1 (7) 85 6.7
86 5.2 (6) 86 0.0
87 4.3 (5) 87 0.0
88 2.6 (3) 88 6.7
89 2.6 (3) 89 0.0
90 4.3 (5) 90 26.7
91 2.6 (3) 91 0.0
92 3.5 (4) 92 3.3
93 4.3 (5) 93 13.3
94 1.7 (2) 94 3.3
95 1.7 (2) 95 26.7
無回答 11.3 (13) 96 0.0
97 0.0
98 0.0
99 3.3
100 3.3
101 0.0
102 6.7