5.教務規定にも学校間格差が現れている

(1)出欠席について

 授業での遅刻・早退の欠席への換算の校種別グラフ(図3−1)を見ると、規定そのものを持っている学校が、課題集中校に37.1%と最も多いことが分かる。個人で判断して換算している学校は、中堅校に49.0%と最も多い。換算そのものが行われていない学校は、進学校で54.8%と最も多い。これは、生徒の授業に対する姿勢と教師の対応の仕方を如実に示している。チャイムが鳴っても、教科担当の先生が来ても、教室に入ろうとしない。授業が始まってもじっと席についていることが苦痛で、友達に誘われれば、授業を抜け出してしまう。そうした生徒を多く抱える課題集中校では、学校全体で遅刻も早退も許さないという姿勢を生徒に示さなければ、授業そのものが成り立たなくなってしまう。それと対照的に、授業には遅刻も早退模してはならないという暗黙の規律が生きている進学校では、学校全体で規定を作る必要は感じられない。中堅校では、授業への遅刻・早退の指導の必要性は感じられても、教員個人個人の対応に委ねられている。数字の裏から、そうした実態が浮かんでくる。
 家庭謹慎生徒の学校への出欠席扱いについては、家庭謹慎による生活指導件数の実態を反映して、謹慎指導の多い課題集中校で出席扱いとする学校の割合がやや多い(図3−2)。年度末の進級・卒業判定会議で、謹慎指導の欠課を考慮するかどうかについては、無回答のそうした措置を取っていない学校等25校を除くと、1.課題集中校は60.7%の学校で考慮していると答えているのに対して、2.中堅校は51.4%、3.進学校は44.0%と、考慮する学校の割合が低下している(図3−4)。日常的に欠席が多く謹慎指導でリミットを迎える生徒が多ければ多いほど、考慮しないと留年者・中退者が増えてしまう事情を課題集中校では抱えている。その実態の差がこのグラフに現れていると考えることができる。


(2)履修の認定について

 履修と修得の区別について全体では半数近い学校が行っている。校種別に分析してみると(図4−1)、全体の比率に近いのは進学校で、中堅校と課題集中校は対応が別れている。履修と修得の区別をしているのは課題集中校の方で、65.7%となっている。中堅校は、区別をしていないとする学校が63.3%となっている。なぜ、履修と修得の区別が、1.課題集中校、2.進学校、3.中堅校の順で導入されていて、中堅校が課題集中校の半分程度という導入状況なのか?
 履修と修得を分離するメリットは、文部省指定の必修科目を履修さえしていれば、未修得であっても進級することができ、合計で80単位修得できれば卒業できるという点にある。学年制の枠をわずかでもはずして、未修得科目があっても進級・卒業させ、単位制弾力的運用が図れるようになる。さらに、教育課程の編成面でも、必修科目以外の多様な自由選択科目を設置して、生徒の選択幅を拡大することができる。こうした改革に、課題集中校が率先して取り組み始めたのは、生徒のニーズ面からも、県教委の教育条件整備の実績からも肯けることである。しかし中堅校は、教育課程の編成で新たな工夫をしようとしても、教育条件整備面で県教委の援助を期待できない状況に置かれてきた。数字は中堅校の置かれた難しい事情を物語っている。

 次に、履修要件に関わって、各学校が授業時数の何分の1としているのか、校種別のグラフ(図4−2)ともとに検討したい。グラフは授業時数を実授業時数とするか標準時数とするかの回答を、履修不認定となる割合を1/3とするか1/2とするかの回答をクロス集計して、校種別にまとめたものである。「その他」の回答が多く目立ってはいるが、上記以外の時数の基準と割合を用いている学校だけではなく、無回答の学校を含めたために、比率が高くなっている。さて、全体では実授業時数×1/3とする学校が31.3%と最も多く、次いで標準時数×1/3とする学校が27.8%と多い。実授業次数×1/2とその他の基準がそれぞれ1割以下で続いている。進学校の中で最も多いのが、標準時数×1/3で35.3%を占めている。中堅校の中では、実授業時数×1/3が最も多く36.7%である。課題集中校の中では、実授業時数×1/3が28.6%で標準時数×1/3が25.7%と、どちらも拮抗した数字になっている。中堅校は授業への出欠を厳しく、進学校では緩やかに、そして課題集中校では厳しくする学校と穏やかにする学校とが別れている、そんな姿が浮かんでくる。


 それでは、授業の欠課のリミットオーバーへの対応はどう校種別で別れているのだろうか(図4−3)。課題集中校だけが、規定通り対応する(特別な事情は考慮するが)学校が74.3%と、突出した数値を示している。欠課時数を補充させる特別指導を実施する学校は4校に1校だけということになる。進学校・中堅校は5校に2校の割合で特別指導を行っている。この違いは、授業等へ生徒の欠席・遅刻・早退が余りにも日常化している課題集中校と、そうでない学校の違いから生じていると考えられる。従って課題集中校では、年度末に履修要件を満たせずに留年・退学する生徒より、年度末を待たずに履修要件が満たせないことが見通されて中退していく生徒の方が多くなっている。近年の中途退学者の増加の原因の一端がここにある。