(5)時間の使い方

 放課後や休日の時間の使い方については学校分類別による有意な差が見られた(表7)。その中で特徴的なことを挙げれば「家の外で友人と遊ぶことが多い」「アルバイトに行くことが多い」について課題集中校が他と比すると高い比率になっている。一方、「部活動などで学校にいることが多い」は少なく、進学校・中堅校が30%前後なのに課題集中校では10%にも満たなかった。つまり、課題集中校の生徒はクラブで学校にいることも少なく、家にいることも少なくて、外で遊んだりアルバイトをして過ごすことが多いということになろう。

表7 放課後および休日の時間の使い方について聞きます

  平均
 家の中で自分一人で過ごすことが多い 28.9 19.0 22.6 22.3
 家の外で友人と遊ぶことが多い 14.4 19.8 31.4 22.5
 部活動などで学校にいることが多い 36.4 29.7 9.9 24.8
 予備校・塾に行くことが多い 6.4 3.9 0.9 3.3
 アルバイトに行くことが多い 6.9 19.8 26.3 19.2
 その他 4.4 4.7 5.0 4.7
 無回答 2.5 3.1 3.9 3.2
 計       100.0


(6)やってはいけないこと

 高校生としてやっていはいけないと思うことについてのアンケート項目の中で学校分類別による有意な差が認められないものとしては次のものがあった。

 ・暴力 ・バイク登校 ・無断欠席 ・無断早退 ・賭け事 ・授業の中抜け

 ただし、暴力に関してはやってはいけないと思う生徒の比率が高いものの、他は全て50%以下の比率である。
 他の項目は有意な差が認められるが、その中で進学校、中堅校、課題集中校の順でやtってはいけないと思う生徒の比率が高いのは次の通りである(やってはいけないと思う生徒の比率が高いものから並べた。またかっこ内の数字はそれぞれ進学校・中堅校・課題集中校におけるやってはいけないと思う生徒の比率を示す)。

  1. 器物破損          (77.5 69.3 66.7)
  2. 教員への暴力        (76.5 66.0 62.7)
  3. カンニング         (75.0 70.1 65.4)
  4. 授業中に携帯電話をかける  (67.2 49.6 41.7)
  5. 土足で教室に入る      (66.7 61.3 58.5)
  6. 喫煙            (59.7 50.3 45.0)
  7. 授業中の飲食        (51.9 32.9 30.7)
  8. 授業の立ち歩き       (49.4 30.7 26.1)
  9. 授業中にウォークマンを聞く (43.3 27.1 26.8)
  10. 授業中のおしゃべり     (32.2 22.1 16.9)

ここで、教員への暴力より器物破損の方をやっては行けないと考える生徒の比率が高いことは驚くべきことだが、それはどの学校分類別の生徒についてもそうであった。また、「授業中の飲食・立ち歩き・ウォークマンを聞く・おしゃべり」をいけないとする比率の低さは、授業そのものが根本的なところで揺れていることを示す数字であろう。
 次にいくつか特徴的なものをとりあげてみたい。
 喫煙に比して飲酒は学校分類別に関係なく、やってはいけないと思う生徒の比率は低くなっている(平均35.7%)。つまり喫煙よりも飲酒が日常的であるということになろう。付言するなら、中堅校の生徒(32.4%)の方が課題集中校の生徒(37.3%)より飲酒がいけないと思う生徒の比率が低くなっている。
 また、教員への暴言にしても同じように中堅校(37.7%)は課題集中校(38.2%)よりわずかだが低くなっている。そもそも教員への暴言に関してはいけないと思う意識はどの学校分類でも50%に満たない。
 しかし、カンパに関してはやってはいけないと思う生徒に比率の高さは、課題集中校(74.6%)、中堅校(60.0%)、進学校(58.9%)の順になっている。ただ、カンパの内容には認識の違いがあると考えられる。いわゆるカンパが募金的なイメージではなく、強制的で恐喝的な意味付与がなされている場合、当然やってはいけないと思うことになろう。そうした意味で実際にカンパが行われている課題集中校ゆえに、それに対してやってはいけないという意識が形成されたと思われる。
 他に、授業中に漫画を読む、化粧をする、授業の中抜けをするに関しても、中堅校の生徒のいけないとする割合が課題集中校より低い(それぞれ、21.7%:27.9%、37.0%:38.1%、34.8%:35.1%)。こうした意識を見ると中堅校においてもかなり授業への忌避感が形成されているのではないかと考えられる。しかし、実際にはそのことを実行する生徒が課題集中校ほどにはいない。この意識と実際の行動の齟齬は、授業や教師への不満や嫌悪感として上述のような数字となって現れると見るべきであろう。


(7)お金

 一ヶ月にどれくらいお金を使うかについては、1万円以下まで進学校、中堅校、課題集中校の順となっている(表8)。しかし、1万円を分岐点として比率の順位は逆転し、10001〜20000円、20001円〜30000円、30001円〜50000円、50001円〜、におけるどのカテゴリーにおいても課題集中校、中堅校、進学校の順になっている。その中で3万円以上使うものが進学校においては2.8%であるのに対し、中堅校では12.5%、課題集中校では20.6%なのはかなりの差である。
 一方、保護者(親)からもらう一ヶ月のこづかいは、使うお金に連動するように、1万円以下までは進学校、中堅校、課題集中校の順になっている(表9)。また、10001〜20000円においてもこの順位は変わらない。ここで注目すべきは、こづかいが「決まっていない」や「もらっていない」が課題集中校に多いことである。決まっていないとは多い場合もあるだろうし少ない場合もあるであろう。ただ、もらっていないという回答の比率が課題集中校で28.3%もある。これは進学校の7.5%に比べるとかなり多い比率である。
 ここには階層の問題もまた焙り出されてくる。

表8 あなたは、一ヶ月にどれくらいお金を使いますか
  平均
 〜5000 43.1 31.9 26.3 32.2
  5001〜10000 38.1 28.9 23.0 28.9
 10001〜20000 10.6 16.7 17.7 15.8
 20001〜30000 5.3 8.7 10.1 8.6
 30001〜50000 2.2 9.8 13.2 9.7
 50001〜 0.6 2.7 7.4 3.5
 無回答 0.3 1.3 2.4 1.3
 計       100.0
表9 保護者(親)からもらう一ヶ月のこづかいはどれくらいですか
  平均
 〜5000 37.8 30.0 27.0 30.2
  5001〜10000 39.2 33.7 20.4 30.3
 10001〜20000 6.7 5.5 4.4 5.5
 20001〜 0.8 1.7 2.2 1.5
 決まっていない 7.5 8.3 15.4 10.6
 もらっていない 7.5 20.1 28.3 20.8
 無回答 0.6 0.9 2.2 1.2
 計       100.0


 また、もらっていないけど使うことも多いという課題集中校の生徒は、後述するようにアルバイトをしてその落差を埋めることになる。
 お金の使い方として、「生活費・学費・通学費」「飲食費など」の生活に関わる費用は進学校、中堅校、課題集中校の順でその割合が高くなったが、一方、「ゲーム代など外で遊ぶお金」などのいわゆる娯楽費的なものは逆になった。「バイクなどのローン・維持費」も「ゲーム代など外で遊ぶお金」と同じ傾向を示すが、どの学校分類においてもみな10%以下と少ないものであった。「衣服・アクセサリなど」「化粧品・美容関係など」「ゲームソフトや雑誌など」に関しては学校分類別間の有意な差は見られなかった。
 ここで興味深いのは「携帯電話など」に関しては中堅校(43.7%)、課題集中校(41.5%)、進学校(25.6%)というように若干だが中堅校の比率が課題集中校の比率より高い点である。また、進学校は他と比べてかなり低い比率になっている点は特徴的である。携帯電話を持っているか否かの問いに対しては、このことと連動するように中堅校(79.5%)、課題集中校(71.9%)、進学校(63.1%)という順になっている。


(8)アルバイト

 アルバイトを経験したことがない者は進学校(45.8%)、中堅校(29.3%)、課題集中校(22.8%)の順になっていて、進学校の生徒は半数近くがアルバイトを経験していない(表10)。アルバイト経験者のうち長期間(1ヶ月以上)アルバイトをしたことがあるものは、課題集中校の生徒で60.7%に及んでいる。それは進学校の生徒の約2倍である。長期アルバイトのうちほぼ毎日(5日以上)働いているのは課題集中校の生徒が多い。

表10 あなたはアルバイトの経験がありますか

  平均
 まったく経験がない 45.8 29.3 22.8 30.2
 短期(ほぼ一ヶ月以内)のアルバイトの経験がある 21.7 19.6 15.3 18.7
 長期(ほぼ一ヶ月以上)のアルバイトの経験がある 31.4 50.3 60.7 50.2
 無回答 1.1 0.8 1.3 0.9
 計       100.0