第二部 「学校間格差」がどのように高校生の生活意識と行動に反映するか

〜クロス集計による分析

 第二部では、調査した学校のうち普通科だけを取り出し、それぞれの項目についてクロス集計を行うことにした。その際、各学校をA・B・Cの3つに分類した。それぞれ進学校・中堅校・課題集中校に該当する(3つに分類した基準は、いわゆる入試における難易度を中心に所員が判断したものである)。このように分類した理由は、高校においての学校間格差の問題がどのような形で生活意識や行動に反映しているかを調査する目的によるものである(注)。サンプル数としては、それぞれA(360)・B(897)・C(544)の計1801を得た。
  (注)こうした分類はそれを是認して行っているわけではなく、むしろその問題性こそを浮かび上がらせたい動機によるものであることをご了解願いたい。


(1)学校生活

 現在の学校生活全体の満足度については、「満足している」「どらかといえば満足している」のいずれも(それゆえ両方の相対度数の合計も)批准の高い方から、進学校、中堅校、課題集中校の順になっている(表1)(以下、特に断らない限り批准の高い順に記す)。

表1 現在の学校生活についてどう感じていますか
  平均
 満足している 22.8 11.7 6.8 12.4
 どちらかといえば満足している 39.7 33.4 26.3 32.4
 どちらかといえば不満である 13.9 20.7 18.8 19.1
 不満である 8.9 13.5 19.1 14.5
 どちらともいえない 13.6 20.2 29.0 21.1
 無回答 1.1 0.5 0.0 0.4
 計       100.0

 しかし、その個別の内容に関しては興味深い結果を得た。確かに、授業・友人関係・教員・学校行事の全てに関して進学校の生徒の満足度は他と比して高い結果を得たが、授業と教員に関しては、課題集中校より中堅校の生徒の方が「満足している」と答えた比率が低い結果になったのである(表1-a、1-b、1-c、1-d)。われわれの実感から言えば少々予想外である。

学校生活について、満足している(不満な)点を細かく聞きます。

表1-a 授業について
 
表1-c 教員について
  A B C 平均
満足している 21.9 11.9 13.1 14.2
不満である 31.4 37.7 33.8 35.1
どちらともいえない 46.7 50.2 52.8 50.5
無回答 0.0 0.2 0.4 0.3
      100.0
  A B C 平均
満足している 24.4 13.7 18.0 17.2
不満である 26.7 34.5 34.4 32.7
どちらともいえない 48.6 51.4 47.2 49.8
無回答 0.3 0.5 0.4 0.4
      100.0

表1-b 友人関係について

表1-d 学校行事について
  A B C 平均
満足している 68.3 62.5 57.7 62.0
不満である 7.2 7.1 12.9 9.2
どちらともいえない 24.2 29.8 29.2 28.5
無回答 0.3 0.6 0.2 0.4
      100.0
  A B C 平均
満足している 51.4 22.5 13.6 25.2
不満である 22.5 34.7 40.8 34.4
どちらともいえない 25.6 42.5 45.4 40.1
無回答 0.6 0.3 0.2 0.3
      100.0

 学校生活の主な目的に関しては、「豊かな教養・学力を身につけるため」と「進学・就職のため」とを合わせた比率が、どの学校分類別のレベルでも50%に近い(表2)。また、「豊かな教養・学力を身につけるため」は進学校が最もその比率が高いのに対して、「進学・就職のため」は課題集中校が最も高い比率を示している。これは学力の低い生徒ほど抽象的な教養・学力といったものより進学・就職のための資格レベルに主眼があることによるからではないかと思われる。実際、本調査の項目で卒業後の興味・関心の度合いをたずねたところ、進学校の方が関心度は高いという結果になった(表3)。つまり、進学校では多くの生徒が進学するので、それを前提としてより上位の欲求である「豊かな教養・学力を身につけるため」が他と比較して高い比率であったと推察される。また、課題集中校では、「進学・就職のため」というのはそのこと自体というより(実際は、課題集中校の場合はなかなか進学・就職ができない現実がある)、その前提としての「高卒資格」というのが内実であろうと推察される。

表2 あなたにとり学校生活の主な目的はなんですか
  平均
 豊かな教養・学力を身につけるため 28.6 15.8 9.7 16.9
 進学・就職のため 26.7 34.5 41.2 35.8
 部活動のため 7.2 9.5 6.4 8.0
 友人を見えつけるため 21.1 17.6 15.8 17.2
 特に目的はない 8.9 16.5 21.0 16.1
 その他 4.4 3.8 3.9 3.8
 無回答 3.1 2.3 2.0 2.2
 計       100.0

表3 高校卒業後の進路(就職・進学など)
  平均
 関心がある 76.1 69.7 52.4 65.9
 やや関心がある 18.6 23.8 32.4 25.5
 やや関心がない 3.6 4.1 10.7 5.8
 関心がない 1.4 2.1 3.9 2.4
 無回答 0.3 0.3 0.7 0.4
 計       100.0


(2)不登校願望

 登校したくないと思ったかどうかということに関しては、「良くある」が課題集中校(29.8%)、中堅校(25.5%)、進学校(14.2%)の順でその比率が高くなっている(表4)。しかし、中堅校と課題集中校の差はそれほどない。また、「良くある」に「時々ある」も含めると、進学校は68.1%、中堅校は81.5%、課題集中校は83.8%とどれも高い比率である。一方、そう思っても実際に登校しなかったかどうかに関しては、学校分類別による有意な差は認められなかった(注)。

表4 高校生になってから登校したくないと思ったことがありますか。

  平均
 良くある 14.2 25.5 29.8 24.2
 時々ある 53.9 56.0 54.0 54.4
 ない 31.4 18.3 16.0 21.2
 無回答 0.6 0.2 0.2 0.3
 計       100.0

 登校したくないと思った主な理由として挙げられている「なんとなく気分がすぐれない」「学校・クラス・友人になじめない」「家で嫌なことがあった」「身体が疲れている」に関しては学校分類別による有意な差は見られなかった。一方、「勉強・授業がつまらない」「教員が嫌い」には差が見られた。ここで特徴的なことは、「勉強・授業がつまらない」との理由を挙げたものが、わずかだが課題集中校より中堅校が上回ったことである。これは学校生活の満足度に関わって、その不満として授業を挙げた中堅校の生徒の動向に連動していよう。
 (注)本稿において有意な差(意味のある差)があるとかないとかの結論は、危険率(有為水準)5%(つまり信頼度95%)を基準に統計的に判定している。

(3)退学願望

 今の学校をやめたいと思ったことがあるかどうかに関しては、「良くある」も「時々ある」の両方ともその割合の高さは、課題集中校、中堅校、進学校の順になっている(表5)。その理由としてアンケート用紙に挙げられたほとんどの項目に関して学校分類別による有意な差は見られなかったものの、唯一差が見られたのは「学校・クラス・友人になじめない」というものであった。それは進学校(29.6%)、課題集中校(23.9%)、中堅校(15.8%)の順になっていた。進学校が最も高い割合であったのは興味深い数字である。

表5 いまの学校をやめたいと思ったことがありますか

 

平均
 良くある 4.7 9.5 16.2 10.6
 時々ある 15.0 30.7 37.7 29.9
 ない 79.4 59.2 45.0 58.7
 無回答 0.8 0.7 1.1 0.9
 計       100.0


(4)友人関係

 クラスの仲間との付き合い方について、「ほぼ全員と仲良くしている」比率は進学校(38.6%)、中堅校(29.3%)、課題集中校(25.0%)の順になっており、「一部の人だけ付き合っている」はその逆で、課題集中校(67.8%)、中堅校(65.9%)、進学校(57.8%)となっている(表6)。しかし、一部の人とだけ付き合っているものの比率はどこも50%以上と高くなっている。学校内外の友人とのつきあいに関しては、学校分類別による有意な差は見られなかった。

表6 あなたは今のクラスの仲間とどのようにつきあっていますか

  平均
 ほぼ全員と仲良くしている 38.6 29.3 25.0 29.4
 一部の人とだけつきあっている 57.8 65.9 67.8 65.2
 クラス内に、特につきあっている人はいない 2.5 4.0 6.4 4.6
 無回答 1.1 0.8 0.7 0.8
 計       100.0