「総合的な学習の時間」 に代表される新学習指導要領は学校に競争原理を導入し、 義務教育を解体するといった点で高校よりも小中学校に深刻な影響が出ることが予想される。 さらに、 階層格差の拡大と固定化が現在よりも進行するといった社会的な要因が加味され、 高校における学校間格差はより明瞭に小学校からの競争路のゴールとして、 新学習指導要領や財界風に言えば自己責任の結果として意識されるのであろう。
8 月18日付朝日新聞に 「できる子に特別授業」、 同紙19日付に 「20高校で理系英才教育」 という記事が報じられた。 小学校から子ども達の選別を開始していくプログラムが現実のものになりつつあるようだ。 選別と競争が激化する中で、 本当の意味での総合学習を構築することはとても困難な作業になりそうだ。
だが、 悲観的になってばかりもいられない。 2003年から 「総合的な学習の時間」 は始まる。 子ども達の可能性を信じ、 彼ら彼女たちの現実から発想した 「総合的な学習の時間」 はつくれないものだろうか。 「総合的な学習の時間」 を本当の意味での総合学習に編成し直すことは、 混迷の度を深める現代社会を生きる子どもたちにとって必要不可欠なことと考えられる。 その視点として、 日教組が示してきた総合学習の理念を再度確認することが必要だろう。 そういった意味での 「総合的な学習の時間」 を構築する試みは、 学校現場がこれまでの教育実践を見直す好機となり得る可能性も秘めているのではないだろうか。
参考文献
久田俊彦編 『共同でつくる総合学習の【理論】』 フォーラムA
久田俊彦他編 『共同でつくる総合学習の【実 践】』 フォーラムA
教育評論 1996 年 8 月号
中央公論編集部編 『論争・学力崩壊』 中公新書
中央公論編集部編 『論争・中流崩壊』 中公新書
井上修 『私立中高一貫校しかない』 宝島新書
高等学校教育問題総合検討委員会編 『総合的な 学習の時間QandA』
(かなざわ のぶゆき 教育研究所員 県立元石川高校教諭)