特集 : 「総合的な学習の時間」が迫ってくる
 

 公立中学校における

総合的な学習の時間への
取り組みについて

飯島 俊幸

 
1.はじめに

 本校は各学年の生徒数が130名程の中規模校で、総合的な学習の時間を平成11年度は2学期より約半年間実施し、平成12年度は5月より翌年の3月まで約1年間実施する計画を立て、実践してきた。13年度は過去1年半の反省を踏まえ、軌道修正を加えて14年度の完全実施に向かおうとしている。近隣の中学校もほぼ同じペースで進んできている。この間の経過と問題点についてお伝えし、高校での総合的な学習の時間の参考になればと思う。
 

2.総合的な学習の時間を実施して

(1) テーマと課題の設定について
 本校ではメインテーマを「自分さがしの旅」とし、最初の2年間は生徒個人で課題を決定した。それは総合的な学習の時間のねらいにはじめから迫ることを意識したためである。そのため、個人の課題は多岐に渡った。平成13年度は反省から、学年単位のテーマを設定し、そのテーマに沿って個人またはグループで課題を設定し学習をする方法に変った。このように生徒が課題を自由に選択する方法をとった学校は少数で、初めから学年ごとの課題を決定し、その枠の中で個人やグループで課題を決めていくと言うやり方が多かったようである。そして3学年になって慣れたところで個人の自由テーマで学習をするといった方法がとられた。
(2) 実施時間について
 平成11年度、12年度は隔週土曜日の帰りの会後の1時間を充てがい、平成13年度は毎週金曜日の第6限と隔週土曜日の帰りの会後の1時間を使って実施している。平成14年度からは新指導要領で示された時間内で実施していく方向にある。 
(3) 実施への段取り
 まず、研究推進委員会が総合的な学習の時間の要項を作成し、職員会議にて職員の共通理解を図った。総合的な学習の時間のすすめ方について生徒に全体説明がなされ、生徒は課題の決定をした。この間、保護者宛、地域宛に理解をしてもらうための文書の配布をした。また、外部指導者の協力要請もした。総合学習カードにより生徒は自分の学習課題、計画表、担当教師の確認等を行なった。
(4) 指導体制
 11年度・12年度の2年間は生徒が指導教師も選択し、アドバイスを受ける方法をとった。同じ教師のところへは学年を取り払った生徒が集合し、自分で選択した課題の学習を自主的に進めた。図書館等へ校外学習に出るときは校外学習許可証を持ち学習に出かけた。料理学習やパソコンの指導には外部指導者の方がボランティアで協力をしてくれた。13年度は課題が学年単位になったので学年の教師が学年の生徒の指導を行なう形となった。活動場所も基本的にはホームルームになった。
(5) 学習発表の方法
 本校は個人課題のまとめとして全員にA4一枚のレポートを課し、提出させた。これとは別に個人の意志で展示またはステージ発表会を全校規模で3月卒業間際に実施してきた。レポートについてはファイルし、図書室に置いて次の課題選びの参考とした。他校ではグループ学習の形式を利用して学習内容を新聞形式にして発表するところもあった。
(6) 評価
 いままではレポートまたは発表会をもってまとめとしてきたが、14年度からは指導要録の中にも総合的な学習の時間の評価欄が設定されており、評価の方法について研究を重ね14年度実施に備えていきたい。
 

3.まとめ

 総合学習(と呼んでいる)で一番大きな問題は学習課題の設定の仕方だと思う。学習の趣旨に沿って自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てる為には自分のやってみたいことを課題に選択し、多様な学習方法により解決していくことが必要だと思う。この方法で始めたとき、自ら課題を設定できた生徒は実に生き生きと学習活動を展開していった。しかし、この課題を見つけることができる生徒がそれほど多くはいず、最後まで何をしてよいのか迷い続けている生徒が見られる。このような生徒の指導がうまくいけば、個人で課題を設定し解決していく学習方法が最も良いと思う。それがうまくいかない場合は、学年単位の共通テーマで地域の特性、環境問題、国際理解、福祉ボランティア等について学習を進めることになる。
 学習を進めていく段階では、教師が学習内容に対して如何に立ち入って指導またはアドバイスができるかが問われる。教師にそれなりの資質が要求されることになる。指導方法が分からないまでも学習方法に対する対応の仕方について全教職員が知っていなければならない。幸い高校の場合は教師の専門性が高いので、これに対処できると考える。教師以外のサポートとしてインターネット(平成12年度40台設置)の利用と外部指導者の存在がある。そのための対策としてコンピューターの導入と外部指導者の開拓が必要となる。
 中学校では新指導要領の実施に伴い選択教科の拡大導入と総合的な学習の時間を教科の授業時間数の確保の中で、時間割りにどう編成するかが課題となっている。また、学習内容のまとめ・発表の方法(これは年度当初に提示したほうがよい)を確立しておくことや、評価のための観点をまとめておくことも重要な課題となっている。
 小中高とつながっていく総合的な学習の時間の学習がうまく連携し、その10年間の時間を有効なものへと導けることを願っている。

(いいじまとしゆき 南足柄市立足柄台中学校教諭)

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