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丸木政臣・中野 光
斎藤 孝(編)
新評論
2200円+税
本書は、1948年10月の結成以来53年にわたって、総合学習の歴史を担ってきた民間教育団体の日本生活教育連盟(日生連、丸木政臣委員長)が企画・編集したものである。日生連は、「日本の社会の基本的な問題、現代の課題を『ひとまとまりの教育=総合学習』として展開していくことが、子どもたちの学習要求にこたえる道」との立場に立つ。
ここに掲載されているのは小学校の実践が中心だが、「まえがき」にある、「夥しい数の総合(的)学習に関する“ハウ・ツーもの”とは違い、少なくとも、戦後の社会科、理科、家庭科、行事などの教育で私たちと先輩が積み上げてきた『総合学習』研究の遺産の上に立つものでありたい」など5つの視点は、中学・高校にも共通している。第4章「総合学習を科学する」にある4つの論稿は、簡潔だがよくまとまっており、読みやすい。(綿引)
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平和・国際教育
研究会(編)
平和文化
1000円+税
『ハンドブック』とタイトルにあるように、わずか95ページにすぎない小冊子なので、「忙しくて、分厚い本なんて読めない」人にはきっとお薦めと思われる。
本書は、第一部が「自主的・創造的な総合学習を 私たちの実践」(実践編)、第二部が「提言 子どもとともに、学び−調べ−表現し・参加する総合学習」(理論編)の二部構成。実践編には、大東学園高校(東京)など3本の総合学習のとりくみが冒頭にあり、それぞれ9ページを割き、実践過程が報告されている。これに続いて、授業・教科学習5、総合学習3、学校外活動3の実践(1本あたり3ページ)が掲載されている。「受験勉強」に化けることなく、「子ども・父母・教職員が参加する総合学習」をめざしている。類書と比べ、中・高の実践が割合に多いので、今後とりくむにあたって参考になろう。(綿引)
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稲垣忠彦
岩波書店
1700円+税
稲垣氏は、教科書中心の「教えこむ」一斉授業から、日本の教育現場が脱皮するためには、総合学習を授業改造に結びつけることを強調する。そのさい氏は、日本の明治以降の授業の歴史にあって、一斉授業が定型化されてきた主要な流れとは別に、1世紀前から総合学習の実践と理論が試みられてきたことを具体的に跡づけている。さらにイギリスで1960年代からおこなわれてきた「トピック学習」も丁寧に紹介している。今日の状況では、総合学習をおこなうとき、子どもたちの必要に即しての学習の援助、教師の構想力と対応力が求められているとするのが氏の主張の力点の一つである。イギリスの例を含め、具体例がかなり豊富である。(山梨)
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久田俊彦(編)
フォーラム・A
2667円+税
教科・教科外活動との関係を明示することなく新学習指導要領総則の中に登場した「総合的な学習の時間」。その「総合的な学習の時間」を批判的に乗り越え、対置するものとして私たちは総合学習を展望する必要がある。総合学習を原理としてとらえ、教科学習に埋没する現状も批判的に見据えながら、教科学習の発展をそこから導き出す。新学習指導要領で例示されたこの時間の課題を越えて、子ども達や我々の切実な現実的課題を読み解くこと。まさに本当の意味での総合学習が語られる必要がある。
本書は、「総合的な学習の時間」をやりすごすのではなく、その問題点を把握した上で総合学習を構築するための必読の一冊と言える。(金沢)
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わたしたちの「沖縄問題」沖縄の高校生が調べた・書いた・考えた |
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森 弘達
ボーダーインク
1500円+税
沖縄にある昭和薬科大付属高校での社会科の実践をまとめたもの。政治・経済の教科学習の中で行われた「今、沖縄問題を考える」のテーマで行われた授業実践とそこから生まれた19編の生徒の論文が紹介されている。
授業記録の部分はややマニュアルめいているものの、図書館活用のポイントや論文指導の手順など実際の授業実践の参考になる。また、生徒の論文内容も、基地問題、環境問題、沖縄の経済問題から僻地医療、スポーツ施設の問題など多岐にわたる。本書は「沖縄学習」の参考になる。しかし、それ以上に「高校生に自分の周囲と教科学習の関係を考える」という観点での総合学習の参考としたい。 (佐藤)
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森下一期(編著)
晩聲社
1800円+税
和光高校では1978年から日教組が提起していた「総合学習」を意識しながら「総合学習」の実践を行ってきた。本書では和光高校での総合学習のなかで行われた討論・新聞づくり・ディベート・取材などといった方法論が具体的な展開とともに記されるとともに、各教科・選択講座での総合学習的な教科学習の内容、卒業生の和光高校で学んだ感想が収録されている。
生徒の声の中の印象的なことば「和光の授業は受験には役立ちません。でも、人間がすっぽんぽんになったとき光るのがこれなんです」を受け止めたい。総合学習の議論がカリキュラム総体、学校づくりへと拡大していくことを期待させてくれそうな1冊である。(佐藤)
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授業を変える学校が変わる−総合学習からカリキュラムの創造へ− |
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佐藤 学
小学館
1900円+税
茅ヶ崎市立浜之郷小学校の創設を導いた佐藤氏の考え方はこの本によく示されている。特に、教師との関わりや教材から切り離して、関心・意欲などの子ども自身の性向に「主体性」を求める「主体性神話」への批判にたった「学び」の実現を求める氏の主張には、耳を傾けたい。氏は、学校を変えるには、総合学習を中心としたカリキュラムの創造、教員の授業研究のための週一回の校内研修の実施、授業づくりを中心にするための校務分掌と委員会の廃止、授業改革の指針としての生徒の「活動的で協同的で反省的な学び」の具体化、など、魅力に富んだ視点を実際例に則して提起される。
また、教員自身が一人の市民として生きていなければ、リアルで魅力的な総合学習は実現できないという氏の指摘も重要である。 (山梨)
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長尾彰夫
アドバンテージサーバー
1650円+税
6巻からなるシリーズ[カリキュラム改革としての総合学習]の1巻目。「総合的な学習の時間」を「上」から押しつけられたものととらえるのみでは、生徒を中心とした学校改革はすすまない。
戦後の文教政策の中でのカリキュラムの変化と、どのような流れの中で「総合的な学習の時間」が提起されたかを整理し、今、総合的学習にどう取り組むかを考えさせる。「総合的な学習の時間」導入以前から、日教組などのすすめようとしていた「総合学習」を含めた現場からのカリキュラム編成が、学校づくり、すなわち教育改革につながると提起する。教育関係者以外の市民の方にもおすすめ。(武田)
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