特集 : シンポジウム「17歳〜高校生の生活実態と学校」
 

 本年度第9回 教育研究所 シンポジウム2000

17歳〜高校生の生活実態と学校

 


◇日 時 2000年11月4日(土)14:00〜
◇会 場 神奈川労働プラザ 3F 多目的ホール
◇シンポジスト
   小畠 由起子(県立高校カウンセラー)
   苅谷 剛彦(東京大学教授・教育社会学)
   浜崎 美保(県立柿生西高校教諭)
◇コーディネーター
    本間正吾(県立田奈高校教諭・教育研究所員)

 
 はじめに

開会:時間になりましたので、開会いたします。はじめにお断りですが、記録の関係で途中写真を撮りますので、若干煩わしいかもしれませんが、ご容赦のほど、お願いいたします。
 最初に、研究所代表杉山宏から挨拶があります。よろしくお願いいたします。

杉山:研究所の杉山でございます。昨日が祝日、明日が日曜日で、こういう催しを行うには、今日という日は向いていないのかな、と最初は思いました。しかし、このように大勢の方にご参加いただき本当にありがとうございます。
 首相の私的な諮問機関ということで、教育改革国民会議というのが前の内閣のときに発足して、現内閣もそれを受け継いでおります。ご承知のように、国民会議から、教育基本法の改廃の問題とか、奉仕活動の義務化の問題とか、いろいろ話題が提供されております。
 内閣が教育改革を課題として取り上げるのは、大変結構なことだと思うんですが、問題はその方向ではないかと思うんです。新聞等によりますと、首相が、教育勅語にもいいことが書いてあるということを盛んに言っているようです。
 確かに、教育勅語に徳目が列挙されている部分があり、その辺を取り上げてそう仰っているんだろうと思うんですが、ところが徳目の前のところに、「汝臣民」という言葉が出てきます。その三つの文字で、教育勅語が今の民主主義社会ではまったく通ることができないということが明らかなんです。
 そういうものをちょろちょろ出してくるところに、教育改革の方向を、われわれがきちっと見守って、言うべきときにはどんどん発言していかなければいけないんじゃないかなと最近強く思っております。
 本日のシンポジウムですが、数えまして、第9回でございます。私ども教育研究所は、本年度高校2年生を対象としまして、生活実態の調査を行いました。今日はその結果を踏まえて、新しい高校像を考えていただきたいと思います。
 シンポジウムのコーディネーターは生活実態調査を担当した研究所の所員です。シンポジストのお三方はそれぞれ立場が異なるので、幅の広いご意見が聞かれるのじゃないか。加えて、後ほど、フロアの皆様方からもいろいろご意見を出していただけるならば、非常に実り多い話し合いになるのじゃないかと、期待しております。
 今日はよろしくお願いいたします。(拍手)

 

 シンポジウムの趣旨

本間:コーディネーターの本間です。最初に、シンポジストの方々の紹介になるんですが、私、自分の力不足もありまして、個々の方のご紹介というより、全体的に、今日何故、こういう方々にお出でいただいたのか、という話にしたいと思います。
 まず私のお隣りが苅谷先生。ご紹介するまでもなく、皆さんは先生の著書・論文を読んでおられるだろうと思います。今日は大学の教育社会学の研究者として、今の教育問題を客観的な目で、さまざまなデータを基に分析し、考えておられる方ということでお出でいただきました。先生からはそういう角度からのお話をいただけると思いますし、フロアからも先生への積極的な質問が出されるものと思います。場合によっては苅谷先生から、「是非こういうことを現場の教員に聞きたい、保護者の方に聞きたい」ということがあるかもしれません。そのように話が盛り上がっていければ、と思います。
 そのお隣りに、スクールカウンセラーの小畠さん。スクールカウンセラーが神奈川のいくつかの高校に配置されています。立場上、教員の目には見えない生徒の姿をさまざまなところで見ておられるだろうと思います。教員とは違う視点から、生徒の意識・生活実態についてお話いただけると考えております。
 次に、そのお隣りの浜崎さん。柿生西高校の教員ですが、いくつかの学校を経験され、今の柿生西はまだ2年目です。新しい学校で、カウンセリング委員会等の仕事で生徒の生活や意識を理解するのにいろいろ工夫されておられます。カウンセリングに係わっていく中で見えてきた生徒の姿・意識についてお話をいただけたらと思います。
 ということで、それぞれ立場の違う三人の方をシンポジストとしてお願いいたしました。
 フロアにお集まりの方々も、高校の教員、小学校・中学校の先生、また保護者の方もいらっしゃるかもしれません。それぞれさまざまな視点で、子どもたちのこと、学校のことを考えておられるだろうと思います。
 今日は、そういうさまざまな視点からお互いに考えていく場にできたらと思います。もちろん、ここで何らかの視点や何らかの方向にまとめよう、ということを考えていません。いろいろな視点があるなということをお互いに知って、今後教育について考えていく手助けになれば、ということです。
 皆様のお手許に『教育白書2000』があると思います。先ほど代表から話のあった「高校生の生活実態と学校」という調査は最後のほうに載っています。このような調査は、今までも80年代に教育調査プロジェクトティームというところで行ったものがあります。最初のページに、それとの比較を書きました。80年代の調査とは、「進学校・中堅校・課題集中校」という呼び方も違っています。アンケートの調査項目にも幾分のずれがあります。というように過去との比較は、かなり心許ないのですが、これからの参考にしてください。
 一つ言えるのは、客観的な数値として、中途退学率・長期欠席率がこの数年、神奈川で上昇しています。それと絡めて調査結果を見ていただければと思います。
 第2部の63ページ以降では、「高校生の生活意識と行動」を、いわゆる「進学校・中堅校・課題集中校」(この言い方は、いろいろ引っかかる点があるかもしれませんが、作業上こういうふうに分けたとご理解ください)の三つに分けて、分析しました。
 ここで浮かび上がってきたのは、「中堅校」の生徒において、問題として感じられるところがいろいろと出てきている、ということです。今は時間の関係で、細かいところまでは説明しませんが、シンポジウムが進んでいく中で、触れる機会があるかと思います。
 それでは、私の話はこのくらいにして、これからシンポジストの方にお願いいたします。進め方は、浜崎さん、小畠さん、苅谷さんの順でご発言をいただきます。それぞれの視点で、今の高校生、若者について考えているところを述べていただいた上で、フロアからご質問・ご意見をいただきます。その後また、シンポジストからそれまでの論議を踏まえたご発言をいただく、という形で進んでいきたいと思います。
 この後はかなり長いと思いますが、最後までお付き合いください。

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