特集 : シンポジウム「入試が変わった!高校はどう変わる?」
 
 高校だけでは変われない

黒沢:どうもありがとうございました。それでは5人目の塾の方からのご質問で、モチベーションの問題で、中学校の進路指導がちょっと遅れているんじゃないかということを主にした問題だと思いますが、これは中学校の先生に答えていただいてよろしいでしょうか。先生のご経験でも、少し言いにくいところがあるのかもしれませんが。

高尾:そうではなくて、モチベーションアップのシステム的なことが、今日の話では欠落しているように思うんです。
黒沢:県の行政に対して。

高尾:そうですね。むしろ、高校を変えます。主体的に選びとれます。でも、選ぶためのプロセスはどこで培われるのかということ。小学校なのか、中学校なのか、そういうことは具体的にシステム化されているのか、そういうことってないわけですね。

黒沢:そういう研究と言いますか。

高尾:じゃ、それはどうするのという話では、どうもその手の教育改革の話の中では、どこからも出てきていないように思うんです。

黒沢:わかりました。取り違えまして、どうも失礼しました。今お話しくださったことで、中学で選択ができるかどうかということもお考えと思いますが、ちょっと県の方でもし。

奥山:今非常に貴重な意見を頂きました、ありがいと思っています。実のところ、将来構想の答申の中でも今お話しのとおり、高校が変わろうとしたって、高校だけで変われるわけがない。その前後が変わらなきゃだめだよというお話をもらったんです。ですから、中学の進路指導はもちろん大事ですし、受け入れ側の大学、さらに言えば企業、そちらの方が変わらなきゃいけない、そういう方向性は頂いています。
 ただ、おっしゃるとおり、モチベーションとしてどういうふうなシステムを考えているのか。これは今のところ考えていかなければいけないというところでしかお答えができません。ただ、考えられる一つの方法としては、隣に中学の先生がいらっしゃるので厳しいんですけれども、とにかく進路指導というのか有効な手段として生きていけばいいなと思います。

河村:最初に話した進路指導と進学指導のギャップという点にかかわって、入試の件がやっぱり大きなネックになっているのかなと。1、2年の進路指導で育てようとしている、自分で選択して、自己決定をしていく力というのが、進路決定の場面ではなかなか生かすことができないということがあると思います。

鈴木彰:今の件につきまして、関係者からいろいろご意見、ご指摘をもらっているということを先程申し上げましたけれども、その中で私どもは中学校の進路指導担当者の方にお集まりを頂きまして、多い人数ではないのですけれども、12〜13名でしたか、進路指導のお話を聞いた中で、生き方指導に基づく進路指導が定着化してきたというご意見も頂いておりますので、やはり今までの措置だけではなくて、そういったものも含めて進路指導が行われているのではないかと。そういう意味では生徒が変わると同時に、新たな面が出てきていることが、関係者の意見の中にあったということだけお知らせしたいと思います。

黒沢:それでは6番目に高校の鈴木さんの方から、改革がちょっと分かりにくかった点もあったんですけれども、生徒中心ということが忘れられているということでしょうか。形式的に流れているということでしょうか。

鈴木真人:本当に目を据えた改革であるのかという趣旨です。

黒沢:具体的に言うと、どういうところに支障を感じますか、1点だけでも結構です。

鈴木真人:この入試制度に関してですか。

黒沢:ええ。

鈴木真人:入試制度に関して言うならば、先ほどの塾の先生のお話とはまっく違うんですけれども、塾に行っている中学生の割合が65%〜70%と言います。そして95%の進学率の中では、言ってみれば、たとえば高等学校に行こうという意思を持っている者がほとんどなんですよ。今、中学生が塾に行っている時間を考えたときに、高校間の格差というものは、結局是正されていかないんじゃないかという感じがします。そのことを捉えていったときに、本当に44%の総合的選考の枠の中で行きたい学校を選んで、そこが保証されるのかということです。一方高等学校側は本当にそういうことの対応ができていくんだろうか。この部分になってくると思うんです。それは今単位認定のことで、まとめた方がいいでしょうけれども、その辺をちょっと。

鈴木彰:選考に当たって重視する内容ですけれども、これは毎年、各学校に資料づくりとあわせまして、今年はどういった形のものにしていくのかということで回答をお願いしているわけです。ちなみに平成10年度から11年度にかけまして、つまり、来年に向けて重視する内容を変える学校はかなりあります。具体的な数で言いますと、46校あるわけです。ですから、全体で182(全日制)ありますので、過渡的な状況ということで、それぞれ改善段階にあるわけですから、入試制度の選考に当たって重視する内容を改善していくということで、何とか追いついていくようなことになろうかと、こういうことです。

黒沢:どうもありがとうございました。予想されたとおり、県側との質疑応答のようになっている感じがしますので、最後に広瀬さんが質問された今度の基本的問題とも重なるんですが、それにまずお答えを頂いて、次に他のいろんな先生方、保護者の方々との意見のやりとりに移りたいと思います。

 格差是正につながるか

鈴木彰:逆にお聞きしたいことがあるんですが、関係者の方から、リーダー性を持つ方が出てきているという話をしましたね。あるいはご質問の中にもありました格差というのはどういった面ではかっているんですか、ということです。リーダー性というのも、生徒の個性だと思うんです。それが今までなかった学校に出てきたということは、やはり格差是正じゃないでしょうか。
 だから、逆に、先に質問された方は、格差とは何なのかということを知りたいと思う。要するに数値ではかれるものであると言うんだったら、やっぱり趣旨が違ってくるんじゃないか。こう反論させていただきたいと思います。

黒沢:では、ご質問された方々にはシンポジストからお答えをして頂いたので、これから意見をどんどん出して欲しいと思います。あるいは今のお答えについて、ちょっと問題があるかなあということも含めて…。それではどうぞ。

松本(久里浜高校):今議論を聞いていまして、今までア・テストがあって、学力テストの点数ではかっていたが、特色入試というのは、それぞれの人間的な部分を重視する方向で選ぶという形で、今の流れは理念的に正しいと思うんです。
 しかも、試験回数が増えるということですし。ただ、まだ100%確実だというところでの移行はできないと思うんです。やはり問題点を幾つか抱えながら、理念的には正しい方向に向かっていく形ですから、今までどおりの学力の輪切りよりはいいいと思います。中でも最大の問題点は、重視する44%の部分が、実際見てみると、やはり学力部分に偏っている内容が極めて強い。3教科にね。それから部活、生徒会は基本的に今までと同じ。今回本当に生徒が主体的に選ぶのであれば、芸術のこういうものがあるからとか、あれができるからといった観点で選ぶのが本来の趣旨じゃないだろうか。そこが欠けている。実際、私の知る範囲ではそれで実施されている高等学校は極めて少ない。
 そこで特色づくりというのをどうこれから進めていくのかという観点と、あと1点は、多様化とか、重視するとかいうのであれば、入試の部分ですね、推薦枠とか、入試そのものまでもある程度学校側に権限移譲というか、学校がこういう特色を出すのなら、その特色に応じてこういう入試をしたいということがなし遂げられて初めて完結するんじゃないかなという部分も考えているんです。ですから、166校(県立)が同じ入試システムでやるというのはどうでしょうか。そこまで踏み込む自信があるのかと、県教委の方にお伺いしたい。

八島(中沢高校):今お答えになっている、課題集中校に当たるかと思いますが、意見の中で、格差是正の問題があったと思います。本校はいろいろな問題がありまして、入試制度が変わりまして、プラス面とし積極的になってきたなということがあると思います。ただし、ご存じのとおり、生活指導ではいろいろな問題が多発し、昨年を上回っています。
 また、学力の面も、この2年間を見てきて、やはり落ちていると言わざるを得ません。基礎学力の面です。それから退学者がやはり増えています。私の学校は毎日相当厳しい生徒を抱え、日々教員は厳しい生活をしております。「個性を重視する」という言い方や「人それぞれの多様な進路に応じて」という言い方をされますけれども、現在こういう問題を抱えている、格差を抱えていることに対する配慮を抜きにしては、今議論されているようなすばらしい内容も、絵に描いた餅になるんじゃないかと危惧をしております。
 それから、奥山さんからいただいた資料の中にも書いてあるんですが、生徒の学級定員ですね、30人学級で組合の方でも取り組み始めました。本校ではこれを20人ぐらいにしても実際成り立たないという話が職場の中で出てきています。その意味では、こういった長いスパンの議論と同時に、今日、明日やっていくことをきちん受けとめて、実り多い議論をして頂かないといけないと思います。奥山さんの資料の中に、40人学級を主体に続けると書いてございますが、そういった意味できめ細かくいろいろ見ていきますと、個性重視と多様化は、実際私の学校から見ると不可能です。
 1人1人本当にいろいろバラエティーでありまして、いろんな問題も抱えております。不可能です。したがって、現実的な問題をきちんと押さえて今後実行していただきたいと思います。
 入試改革については、プラスの面は少しありますけれども、必ずしも格差が改善されていないと私は受けとめております。
 教育の議論の中ですばらしい内容があり、賛同するところが多いんですけれども、経済的な保障という意味で、統廃合云々という形で、教育の条件を狭めるというのが今少し気になりましたので、言わせて頂きました。

中野(県教文研):鈴木さんでも、奥山さんでもよろしいんですが、2点伺いたいことがあります。
 1点目は、選抜の柱のうち6割を占めている学習の記録についてなんですけれども、現在相対評価で評価がつけられていますけれども、母集団の性質が様々なのに中学校で相対評価をするということが、ずっと前から私は疑問だったんです。例えばA中学では英語のできる生徒が多いのです。90点以上取っていても5段階で3がついてしまう可能性があり得る。またそれがB中学に行けば、同じ力のその子に5がつく可能性がある。そういうことが現実にあると思うんですけれども、なぜ相対評価でなければならないのか。絶対評価になった方が、子どもたちの成績というものが、到達度による評価となると思いますし、定期試験の時のプレッシャーというものもかなり変わってくるんじゃないかと思うんです。将来的に絶対評価でと、そういう構想はないのかどうか。
 2点目なんですけれども、不登校の子どもが10万人を超えているという現状で、不登校の中学生の進学についてはどういった対策を持っていらっしゃるのか。現実では不登校の子どもたちが公立の高校に進みたいと思えば、定時制か通信制にしか行けないというのが現状だと思います。もちろん定時制、通信制にもよさがあり、何でもかんでも全日制でなければいけないという価値観は壊していかなければいけないと思いますけれども、全日制の学校でたくさんのお友だちと一緒に部活とかもやりたいのに、不登校であったから定時制にしか行けないという、現状はやはり不平等だと思うんです。その改善に対してどういう構想を持っていらっしゃるのか伺いたいと思うんです。

出川(横浜平沼高校):少し意見が違うかと思うんですが、入学試験で高校の格差是正を求めること自体が無理なんではないかと感じます。むしろ条件整備の方が重要な意味を持ってくるのではないかという感じがします。この議論の中でもう一つ忘れられているのは、小学校から中学校に来る段階で、4分の1ないし5分の1の物差しがある。こういう議論も出てきているという状況があるだろうと思います。 それからもう一つは、一方において大学審は、大学の入学レベルの維持のために、入試の科目を増やすという議論が始まったという話がありますけれども、むしろその方向性にあるんじゃないか。私は、高校入試は学力だけでいいと思っていますけれども、高校入試を易しくすることは大きく間違った方向に歩み出すのではないかという感じがします。
 単位制だとか、あるいは総合学科だとかいう学校に期待を持たれている感があるようですが、先週、全国の高校が200校ぐらい集まる会議に出席をしました。文部省の方もお見えになったわけです。例えば東京の都立北野高という学校ですけれども、あそこは単位制の進学校という趣旨で、本来の目的とは全く違う形の学校になりました。神奈川県からは、総合高校の校長先生が発表されましたけれども、大変立派だという声があった反面、私の後ろの方では「神奈川県は金があるからいいね」という声がして、それは東北地方の高校の先生からで、そうした実態もあるということをご紹介したいと思います。

 

 子どもの実態にどう高校が合わせるか

伊藤(小学校):小学校の教員をしております。
 まず、新しい入試制度が、実効あるものになっていくためには、子どもの立場から見ても、高校間格差というものがない中でこういった制度の形があれば、地区に応じて純粋に選んでいけるのではないかなと思います。一番子どもたち、あるいは保護者が気になるのは高校間格差、つまり、地域で自分がどういう位置にあって、その高校に入れるのかということが非常に大きな関心事になっていると率直に思うわけです。
 それで中学校3年生の段階で、進路希望調査を受けるわけですが、これが秋なんです。10月か11月ごろです。そうすると、既に高校の箱が決まっているところへ進学希望調査が入ってくるということです。したがって、子どもたちは箱が決まっている中で、自分の方向性が進路指導等の中で決まってきてしまう現実があるわけですから、本当の希望になっているのかどうなのか。本当の希望というのは、子どもが自分の将来や、自分の周りや、先輩や、自分が高校でやりたいことを考えた上で希望が出せるものなんじゃないのか。だとすれば、その希望の調査は前に行われていて、全くそのとおりに高校ができるとは思いませんけれども、その希望に基づいて、希望枠に沿った高校の箱ができるべきなのではないかと思います。
 それから、特色に応じた学校づくりなんですが、子どもの立場からすれば、既にその形で2回、高校に入っているわけですね。その特色に応じた学校のサービスが受けられなかった場合に、子どもに対してどういうふうに返していくのかということです。サービスが受けられなければ、お金を戻すという話になるわけだけれども、特色で受けて、そしてその子どもを合格させるのは高校ですから、高校はその子どもを3年間見るということを前提に契約したわけですね。しかも、その高校の特色を授業にして、あるいは学校生活として保証するということで合格をさせているわけですから、それができなかった場合には、どういうふうに子どもに保証するのかということについて、答えて頂ければと思います。
 それから中途退学についても、僕は小学校に勤めているので、小学校でも塾に行くという厳しい部分もあるわけですけれども、基本的には子どもに合わせた教育になるはずだろうと思うんです。確かに高校は義務教育ではありませんが、神奈川でも96%高校に行っているわけですから、非常に幅のある子どもたちです。それがたまたま高校間格差というものも十分是正されていないわけですから、いろんな問題があるでしょう。それでも、子どもの実態にどう高校が合わせるのか。さっき教育条件整備の話もありましたが、そういう観点と合わせて、システムとして子どもの実態に合わせた教育づくりができるようになっていないと、結局いつまでたっても中途退学の子どもたちは出ざるを得ないんじゃないかと思います。
 従って、そういうところの施策を将来構想の中でどう展開していくのか、ということを県民にわかるような、そういった方向性が必要なんじゃないかなと思います。

外山(秦野高校):先ほど学校間格差ということについて話があり、そして鈴木さんの方から、その格差というものの考え方がやはり問題じゃないかと、切り返された形になっているわけですけれども、私は学校間格差、これは学力間格差だと言ってもいいと思います。学力間格差そのものが、現実にはさまざまな生徒会活動にしても、あるいは部活動にしても、偏りをもたらしている。そういう現実があるんじゃないか。そういうふうに思っています。
 学力間格差でも、学校間格差でもいいんですが、とにかくこれは相当意識的になくしていこうという意思が外に見えてこないと、やはり子どもたちにとっては、それこそ開放された個性あふれる、自分の意思決定みたいなものはできないのではないか。そう私は考えます。学校間格差をなくすんだというこちらの意思がきちんと見えるということが、とても大切なことなんじゃないか。そういう意味では、先ほど黒沢さんの方から呼びかけられて、その学校間格差に対して、きちんと立ち向かうという姿勢を、県の方でもぜひ盛り上げて欲しいなと思っています。
 もう1点、この格差は親の経済的な格差みたいなものとやはり連動していて、幾つかの学校で調査をすると、例えば授業料を引き落とす際に落ちない生徒なんかも、いわゆる学校間格差が反映されています。上位校では滞納するといった生徒はいないけれども、もう一方では割合多いんだという傾向もあって、やはり親の経済間格差が反映されている。学校間格差というものに対しては、県の方から相当見える形できちんと打ち出すことによって、生徒自身が自分の個性を自由に伸ばせる。そういう大きな条件づくりになるのでないかと思っています。

早川:先ほど、私は現在の制度に対しての質問をしたんですが、まだ制度としては確立していない、答申の段階のことで返されているんですね。ということは言い方を変えれば、問題があるということを認めたということになるわけですよ。先ほど編入学の弾力化をしろと、そういう話がありました。これはまだできていないわけです。現実に私の生徒がこの間佐賀に行ったんですけれども、向こうの学校が合わないので戻りたい。保護者は佐賀の方にいるんだけれども、こちらの方にお兄さんがいるから戻したいんだという。これは認められませんでしたね。つまり、試行錯誤を認めない。県教委は戻ることについてだめと答えました。これが事実です。
 それからもう一つの事実として、これは言っておきたいんですけれども、今後は推薦制度は来年30%で県に出します。ある学校では40%で出しました。この2校は絶対にだめというので戻されました。そして校長が、何回も職員会議を開いて、「私は50%をお願いする。これ以外ありません。工業高校は県内すべて50%の推薦です」と。これですよ。どこが弾力があるんですか。どこが個性尊重なんですか。個人の個性を尊重するということをおっしゃるならば、学校ごとの個性を尊重すべきです。それはない。画一化を強制しつつ、個性を言うことのおかしさというものを私は実感をしています。
 もう一つ、選抜をいくら言っていてもだめですね。つまり、学力以外で入るものをつくりたい。学力偏重はだめだ。逆に言えば、学力がある者が落っことされるわけですね。今まで入れた者が落とされるという制度です。選抜制度というのはそういうもんなんです。先程私は、複数化するということは落ちる回数を増やすだけですよと申しました。これは事実でしょう。これは間違いない事実です。落ちる回数は確実にふえるんです。だって入る人間を変えていないんだから、ということなんです。
 だから、選抜制度を幾らいじったってだめなんだということなんです。例えば、私が是非お願いしたいのは、学力以外の観点でもって入れた生徒は、学力以外の観点でもって卒業させなければならないという事実、ところが、そういうことになっていませんね。今の高等学校の教育制度はそのようになっていません。これは当たり前のことなんです。入れるからには、その生徒の学習権をいかに保障するかという観点がなければだめなんです。学力以外の観点を出すならば、高等学校の中でも、学力がひどくても、学力の格差があっても、それを認めていく。そういう観点でなければだめなんです。しかし、今の制度の中ではそれはありません。なぜならば同じ教室で同じように教えなければならないということになっている。それだけの人間を保障していないからです。教師も、施設も、設備も、人間も、教育内容も含めて、そういうものを保障していない。入口だけをいくらいじくったって、そういうものを保証しなければだめだと思う。
 そして今回出された答申を見ても、その答えは組替えと言わざるを得ない。入試制度をいじくるならば、その生徒の行く末も保障しろということを強く訴えたいと思います。
 

 高校はどれだけ変われるか

黒沢:それでは時間がなくなってきましたので、今出ていることにすべて丹念に答えることは不可能でございますが、シンポジストの方から、主として県に対する質問であったと思いますので、全体でまず鈴木さんから。

鈴木彰:藤沢の先生から出たもので、44%のことで、学力偏重じゃないかという話がございました。各中学3年生に全員配っている募集案内では、学力だけを記載している学校はないんですね。必ず特色ということも入っているわけです。その比重というんですかね、それにつきまして各学校で若干違うということだと思います。
 「産経新聞」の10月13日の夕刊と14日の夕刊に「じゅく〜る」ということで、「新神奈川方式の総合的選抜基準」というふうに、校内の選考基準などが抜粋されて出ていました。それを見ますと、確かにそういった面が見られる部分もあります。
 それから、学校によって全く逆に教科外活動を重視している学校もあります。
 それから、不登校の生徒さんの入試についての取り扱いなんですけれども、これは平成10年度から東京都でやられたことで、私ども神奈川県も11年度からこの扱いが入ります。ある欠席日数を超えた方につきましては、内申点、つまり調査書の「学習の記録」の評定を見ないということで定めさせて頂きます。ですから、この生徒さんにつきましては、資料の整わない生徒という形で選考されます。この資料の整わない生徒の扱いについては、各高等学校の方にそのやり方につきましては、プリント等をお配りして、説明ももう既にしてございます。ただ、日数等の通知につきましては、11月の下旬ごろに中学校長を通して中学校へ、それから高校長を通して高校へという形になろうかと思っています。

黒沢:内申の相対評価についてお答えがございましたら。

鈴木彰:内申の相対評価につきましては、これを絶対評価にするということは、逆に言えば、その学校のつけ方にむしろばらつきが出て、要するに選抜資料なんですから、選抜資料としてのある根拠を持たせるということで、それを7%とか、24%という形で定めさせて頂いて、選抜資料に使っておるわけです。絶対評価への移行というのは難しいんじゃないかと思っています。

早川:それが5割もあるんだな。減らすことはないの。

鈴木彰:5割ですか。

早川:それを1割ぐらいに。

鈴木彰:それについては高課研の委員にもいろいろご論議をいただきましたし、5:5にするとか、6:4にするとか、実際、全国の状況を見ますと、4:6とか、5:5とか、6:4、各学校で選択できるとか、そういったところの入試選抜を行っている県もありますので、実態はそういうことです。

奥山:時間がございませんので、飛び飛びになって済みません。
 まず課題集中校の問題ですけれども、これは協議会の中でも今後の課題として受け止めております。しかも、高校フォーラムを県内で3回開いたんですけれども、その中でもこの問題について意見を頂きました。どういう形で答申の中に盛り込んでいるのかということで、今日配られた概要の中には出ていないんですが、答申そのものを見て頂きますと、目的意識、学習意欲に欠ける生徒、そういう方々も存在するんだ。こういった人たちが一部の高校に多く見られる、そういう傾向もあるということを認めて、それでどういう対応をするのかを具体案の中で幾つか盛り込んでおります。
 先程お話を頂きました、例えば小集団学習ですね。こういった形で、その意味では40人学級をもっと細かくというお話もありました。具体的にはそういうことも個別にやっていった方がいいだろう。条件整備の方でそういうことを考えていく必要があるとしています。
 それからもう1点、子どもの実態にどう合わせていくのか。中退する生徒がこのままのシシステムだと、どうも減らないんじゃないかというお話も頂きました。これは今回のシンポジウムの主体のテーマの学校間格差にもつながってくるんじゃないのかと思っているんです。答申の中でも、この学校間格差についてどうするかということが触れられております。
 一つには、何遍も繰り返しますけれども、多様で柔軟な高校教育の展開、この中で生徒が様々な観点から高校を選べるようになるには、やはり特色づくりを今後どんどん進めていく必要がある。その結果、高校間の序列意識が見直されるんじゃないのか。こういうふうな考え方に立っております。要は一つの物差し、学力だけの物差しで今までやってきたわけですね。ここで入試が変わったということで、学力以外の評価という新しいもう1本の物差しを立てたわけです。まだ2年目なんですけれども、私はこれは画期的なことだと思っています。戦後教育の中で、それこそ頂点の大学を目指して中学から勉強して高校に入って、高校から大学に入っていく。私は、これは本当に気の毒だし、よろしくないと個人的には思っています。
 そのためにもこういう格差是正の入試の取り組みと合わせて、その受皿として高校がどれだけ変わって、どれだけバラエティーに富んだ特色を打ち出せるかが重要になっている。これはきょうお集まりの高校の先生方にぜひお願いしたいことです。自分たちの高校にはこういうものがあるんだ。だから、私の高校に来なさい。生徒が減るんですから、奪い合いになると思うんです。それも後10年なんです。そのときに「特色特色ってみんな同じことやっていたら、特色がなくなるだろう」なんておっしゃっている方もいらっしゃるんですが、とんでもございません。教育委員会は枠として特色づくりという形を出して、その中に何を盛るのかはそれぞれ高校が考えることになります。それを目指して生徒さんが、そのときに主体的な意思に立って選べれば、私はこれからの県立高校は決して暗くないと思っております。

黒沢:どうもありがとうございました。お二方、何かございましたらつけ加えて頂ければと思うんですが、時間がほとんどないので、一言ぐらいで済みません。感想でも結構です。

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