報告のはじめに
- 過去の 「教員の意識」 調査について
本研究所はこれまでもたびたび 「教員の意識」 についての調査を実施してきた。 早いものとしては、 1994年に約1000人を対象に行い847人から回答を得た、 「教員の生きがいと健康調査」 というものがある (研究所 「教育白書」 94所収)。 この調査は、 学校間の 「格差」 に関心を向けたものであり、 高校の創立時期に注目したまとめ方をしていた。 さらにその翌年には、 学校間の 「格差」 にかかわる教員の意識を探る調査を、 一学区に限定しておこなった (研究所 「教育白書」 95所収)。
この94年の調査から始めて、 本研究所では10年ほどの間隔を空けながら教員の意識についてのアンケート調査を積み重ねてきた。 ただし、 それぞれの調査には焦点の合わせ方に大きなちがいがあった。 94年の調査はいま言ったように、 学校間格差に注目したものであった。 それに対し、 2003年の調査は、 「教育改革期における教員の意識調査」 (865人回答) というタイトルにしめされるように、 急速に進められていた 「教育改革」 に翻弄される教員の意識に注目するものになっていた (この調査結果は小冊子にまとめて報告した)。 そして2012年の調査は、 「百校計画」 進展の時期に大量に採用された教員が退職し、 新採用の教員が増え、 教員集団の年齢構成が急速に変化していく時期におこなうことになった (回答数971)。 したがって、 その調査のまとめ方は年代による意識のちがいに注目したものになった (所報 「ねざす」 52号所収)。
このようにそれぞれの調査は実施時期の状況により、 まとめかたの視点もちがったものになっていた。 それでも結果には共通した傾向をみることができる。 1994年の調査において、 「生きがい」 のトップは生徒とのふれあいであり、 次ぐものが授業であった。 2003年の調査ではこうまとめられていた。 「全般的に、 教員は教育内容や生徒とのふれあいということへの関心が相当高い。 …授業に関しては、 教材研究の時間や、 基礎学力の保障、 興味・関心に応じた工夫が不足していると感じるものが多く、 教育内容に大きな関心を寄せている様子がうかがえる」。 つまり 「生徒とのふれあい」 への強い志向と 「授業」 への強い関心はほぼ10年の間隔を空けた二回の調査に共通していた。 その10年後の調査 (2012年) でも、 生徒とのふれあいと授業への関心の強さに変わりはなかった。 そして何れの調査においても、 授業の準備や生徒への対応に充てる時間の不足が嘆かれていた。 これまで重ねてきた調査から共通にうかびあがってくるものは、 生徒とのふれあいをもとめ、 授業への強い関心を持ちながら、 それに割く時間が不足していることに焦燥を感じている教員の姿であった。
こうしたアンケート方式による量的な調査を実施するとともに、 研究所では聞き取り方式によって内容を深める方策もとってきた。 2003年のアンケート調査に続けて、 翌年の夏に聞き取り方式の調査をおこない、 2005年にその結果を報告した (所報 「ねざす」 35号所収)。 もちろんアンケートによる調査と連動しておこなわれたものであるが、 補完すると言うよりも新たな視点も浮かび上がってきている。 2004年の聞き取り調査も、 アンケート調査を引き継ぐ形で 「教育改革」 の施策への教員の思いをくみ取るとともに、 一人ひとりの教員としての成長の様子も浮かび上がらせようとする独自のまとめ方をするものになった。 今回もまた2012年におこなった調査に続けるかたちで、 聞き取り方式による調査を実施することにした。
- 今回の聞き取り調査について
前回 (2004年) の聞き取り調査では20人の教員に面接をおこなった。 今回の聞き取り調査では18人と前回より結果的には2人少なくなった。 ただし、 数量を問うものではないので大きな影響はないと考える。 2013年の夏に所員が手分けをして、 一対一の面接方式によって聞き取りをおこなった。 忙しい中、 調査に応じてくださった方々に感謝したい。
調査に応じてくださった方の内訳は次の表のようになっている。 数が少ないため、 偏りが生ずるのは避けがたい。 それでも教科に関しては一応網羅することができた。 性別は一昨年のアンケート調査 (女性34.2%、 男性65.8%) とほぼ同じ比率になった。 ただ年齢に関しては、 アンケート調査では56.6%と大半を占めていた50歳代が大幅に減る結果になった。 その分、 他の年代が増えたが、 中でも20歳代が全体の三分の一を占める結果になった。 2004年の聞き取り調査では20人中11人が40歳代、 4人が50歳代だったことを考えると、 調査対象者は大幅に若くなっている。
調査に応じてくださった方には、 面接方式で質問に答えていただくとともに、 「教育改革」 の項目について五段階 (「とても賛成」 「やや賛成」 「どちらとも言えない」 「やや反対」 「とても反対」) で調査用紙に記入していただいた。 この項目は、 2012年におこなったアンケートによる調査とまったく同じである。 その結果を若干見ておきたい。
「スクールカウンセラーの導入」、 「NPOなどの外部資源の活用」 といった、 アンケート調査においても賛成が多かった項目については、 今回も同じような傾向になった。 ただし、 「学校五日制」 については、 「やや反対」 という回答が聞き取り調査では4人もいた (「とても反対」 という答えはなかった)。 アンケート調査では 「やや反対」 と 「とても反対」 をあわせても6.9%にすぎなかったことを考えると反対がかなり多い。 これとは逆に、 「人事異動における公募制度」 については、 アンケートでは 「やや反対」 と 「反対」 があわせて33.7%もいたにもかかわらず、 聞き取り調査では 「やや反対」 「とても反対」 はゼロになっている。 このように個々の項目についてみると、 アンケート調査とかなりずれる結果になったものもある。 しかし、 18人という限られた数のなかでの結果であり、 一部の項目で偏った結果になるのはいたしかたないと言える。 概して言えば、 アンケート調査の結果と比べるならば、 各項目についてやや賛成傾向が強くなっている。 しかし、 「教育改革」 の項目の大半に賛成という方も、 大半に反対という方も、 それぞれ 3 人にとどまっており、 この聞き取り調査に応じてくださった方の 「教育改革」 への傾向は、 大方においては賛否相半ばするというところである。
- 調査のまとめについて
昨年の夏におこなった面接による調査を終えて、 結果を集約、 分析、 検討してきた。 しかし、 全体を見通したまとめにするにはさらに時間をかける必要がある。 今号における報告はあくまでも担当した所員がそれぞれの見方で書いたものである。 今後さらに検討を加え、 次の所報で不十分な点をおぎなっていくことにしたい。
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