●特集T● 公開研究会
「神奈川の高校教育の未来を考える」

   「県立高校の将来像について」 
(県立高校改革推進協議会報告) をめぐって


 中学校の卒業生が急速に増える時期、 神奈川では大規模な高校増設が進められた。 1970年代半ばから始まる、 いわゆる 「百校計画」 である。 その時期につくられた新設校のほとんどは、 一学年12クラス、 全校で36クラスをかかえる巨大な学校であった。 その中学卒業生の増加も1988年に頂点に達し、 それ以後は減少が始まる。 それとともに学校規模は縮小の方向へと向かった。 さらに1999年8月には 「県立高校改革推進計画」 が公表され、 神奈川県は高校の数を減らす方向、 高校統廃合の方向へとすすんでいった。
 当研究所では 「県立高校改革推進計画」 開始から10年が経過した2009年、 この計画の検証をテーマとした討論集会を開いた。 その記録は所報 『ねざす』 45号 (2010年5月) におさめてある。 さらに所報の47号、 48号、 49号の三回にわたり、 継続的な検証を連載した。 「県立高校改革推進計画」 そのものの問題性をめぐっては様々な議論があるところである。 ただこの計画がすすめられる過程で、 現場では多様な取り組みが生まれ、 様々な理想も語られてきた。 そこに検証の意味があり、 受け継いでいかなければならないものを確認しておく必要があったと思う。
 今また県が設置した 「県立高校改革推進検討協議会」 から 「県立高校の将来像」 という報告が教育委員会に提出された (2014年6月3日)。 この報告書自体は、 昨年の8月末に公表された、 「神奈川の教育を考える調査会」 の最終まとめを受けてできあがったものである。 いずれの報告書も教育委員会のホームページからダウンロードできるので、 参考にしていただきたい。 今後、 この報告に基づいてつくられる県立高校の改編案が、 行政の手により具体化されていくことになるのだろう。
 今回の公開研究会は、 この 「県立高校の将来像」 の検証を出発点にしながら、 「神奈川の高校教育の未来を考える」 ことをめざした。 しかし、 一回の研究会では、 とうていここまで論ずることは無理であった。 これは企画をたてた研究所が反省しなければならないところである。 とはいえ、 これからも神奈川の高校で多くの生徒が学び、 多くの教員が仕事をしていくという当たり前な事実を忘れてはならない。 報告書とそこからはじまる県立高校の改革なるものの問題点をあきらかにするとともに、 つねに神奈川の高校の未来像を考え、 描いていくことが必要である。 そういう意味で、 無理を承知でこの企画を立てたこともご理解いただきたい。
 以下、 コーディネータをつとめた方に全体のまとめをお願いし、 さらに当日提案してくださった三人の方にそれぞれのお考えをまとめた論考をお寄せいただいて、 公開研究会の報告とした。 これからの 「県立高校の将来像」 をめぐる議論の手がかりのひとつになればと願う。
 
(教育研究所)


ねざす目次にもどる