編 集 後 記


■ 『ねざす』 54号の表紙は 「虹の架かる有馬高校」 である。 『ねざす』 40号で藤沢総合高校のコスモスが咲き誇る通学路の風景を採用して以来、 特色のある校舎あるいはその周辺の風景写真を表紙に採用してきた。 学校の思い出として印象深く残るものは案外こんな風景なのかもしれない。

■ さて今号の特集の一つ目は、 研究所の夏季公開研究会の報告である。 研究会のテーマは 「これからの神奈川の高校教育を考える」 というものであった。 特集の前書きにも書いたとおり、 一回の研究会で論ずるにはテーマは大きすぎたと言ってよい。 しかし、 教育を取り巻く環境は絶え間なく変わっていく。 行政の動きについてもその都度検証し、 同時に現場に根ざした将来像を描いていくことが必要だろう。

■ 二つ目の特集は 「校務情報管理システムの問題」 というものである。 すでに神奈川県の県立高校では成績をはじめとする生徒に関する情報は、 個々の教員、 個々の学校が管理保管するものではなく、 県全体で統一的に管理保管されている。 おりしもベネッセにおける情報流出問題も起こった。 これは情報の集中管理の危険性が露わになった事件とも言える。 しかし、 問題は流出の危険だけではないだろう。 情報管理の問題は様々な角度から考えていく必要があると思う。 その出発点と思って組んだ特集であった。

■ 「学校から学校へ」 には、 「なくそう子どもの貧困!東京ユースミーティング」 の中心になった学生に書いてもらった。 その学生たちは、 あしなが育英会の支援を受けて大学に通っている。 自らが経済的に厳しい状況に置かれて学びながら、 子どもたちの貧困を訴え、 その解決を求める活動を続けている若者たちがいる。 それを伝えてくれる文章である。 さらに、 そうした子ども、 若者を支えている 「あしなが育英会」 についての紹介の文章も、 育英会事務局の方から寄せていただいた。

■ 「学校から学校へ」 の中にはこんな言葉がある。 「経済的に厳しい家庭の子どもたちの進学は、 家族の誰かの自己犠牲で成り立っている」。 じつは若者の自己犠牲は他にもある。 最近になって 「ヤングケアラー」 という言葉があることも知った。 家族の介護に自身の青春を犠牲にしている若者の存在が今まで見えていなかった。 この問題について論考をいただくことができた。 もしかしたら、 この社会は様々な形で若者を犠牲にして成り立っているのかもしれない。

■ 読者のページにおいても、 5 人の若者の声を載せることができた。 様々な思いを見ることができる。 そして、 大学の先生からも寄せてもらうことができた。 様々な立場の人の声を少しでも多く伝えていきたい。
■所員レポートとして 「研究所独自調査: 「教員の意識調査」 が示唆すること」 という論考を載せることができた。 これは2012年に実施したアンケート調査をふまえた論考である。 これからも研究所としては教員の意識を追い続け、 そこから見える問題を探っていきたい。

■海外の教育情報は18回目を迎えた。 教育費の高騰の問題、 「教育困難校」 のまさに困難な状況、 行政による現場に対する 「強制と恫喝」、 これらの話はイギリスの新聞記事に載っているものである。 だが、 あまりにも日本との共通点が多い。 そして先進国 (世界中かもしれないが) のどこでも、 「教育改革」 を推し進めている。 しかし、 どこも変わったとは思えない。 それを知るのが、 このコーナーの意味だろう。



(本間正吾 研究所特別研究員)



ねざす No54 2014年10月20日発行

編集・発行 一般財団法人:神奈川県高等学校教育会館教育研究所
 〒220-8566 横浜市西区藤棚町 2-197/TEL 045-231-2546
FAX 045-241-2700
e-mail:GAE02106@nifty.ne.jp
URL:http://www.edu-kana.com
印刷:横浜印刷/TEL 045-421-4047
FAX 045-401-3786
e-mail:sp7c6yx9@voice.ocn.ne.jp

ねざす目次にもどる