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教育実習を通じて
〜多様化する高等学校教育〜

上田 真矢

はじめに
 私は今年 6 月、 兵庫県の公立高等学校で教育実習を経験しました。 2 週間という非常に短い期間でしたが、 日々吸収することがたくさんあり、 本稿では書き表しきれないほど有意義な体験でした。 そこで、 今回は、 教育実習の中でも私が特に印象に残った 「高等学校教育の多様化」 について執筆したいと思います。

母校と教育実習校の違い
 私の母校は 「兵庫県立御影高等学校」 ですが、 今回の実習で訪れた学校は 「兵庫県立村岡高等学校」 でした。 母校ではない教育実習からでしか得られない知識や知りえない情報が多数あり、 今思い返すと大変貴重な実習であったと感じられます。 同じ 県立 高校ですが、 生徒数の違い、 部活動、 校内設備、 周囲の地域環境など様々な相違点が見られましたが、 中でも私が最も印象的であったのは 「教育方針・学校経営の違い」 でした。
 具体的に述べると、 私の母校では以下のような教育方針です。

 校訓である 「清く、 明るく、 正しく、 強く」 の生き方の方針として、 知・徳・体の調和のとれた知性的で情操豊かな心身とともに逞しい人間の育成に努めます。
(出所:「兵庫県立御影高等学校HP」 http://www.hyogo-c.ed.jp/~mikage-hs/)

 私の母校は、 所謂進学校と言われる高校であり、 それに応じた教育課程 (類型) が存在しています。 文化系と理科系、 さらに文化系 (人間文化類型) の中でも私立大学への進学を目指すT型と国公立大学を目指すU型に分かれており、 重点科目が異なっています。 例えば私が選択した 「人間文化類型T型」 の教育課程は国語が週 7 時間、 社会が週 6 時間 (選択科目を加えると 8 時間)、 英語が週 6 時間 (選択科目を加えると 8 時間) です。 そして、 卒業後の進路は 9 割以上が大学進学です。
 一方、 私が教育実習をした高校では、 以下のような教育方針になっています。

(1) 地域に学び、 学力を高め、 地域に貢献する創造的で知性豊かな人材を育てる。
(2) 学校と地域の活動の中で、 自律の精神を養い、 規範意識と自己統制力を育てる。
(3) 学校と地域の活動の中で、 豊かな心を培い、 敬愛と協調の態度を育てる。
(出所:「兵庫県立村岡高等学校HP」 http://www.hyogo-c.ed.jp/~muraoka-hs/)

 この教育方針からわかる通り、 実習校では 「地域に学び地域に貢献する教育活動」 に学校全体で取り組んでいました。 総合学習をはじめ、 部活動や学校行事を通じて積極的に地域社会と関わり合う学校でした。 このことは、 都市部とは異なり過疎化・高齢化が進行する地域に位置する学校ならではの特徴であると感じました。 そして近年では、 地域アウトドアスポーツ類型を設置し全国から生徒を募集するなど画期的な取り組みを実施しています。 また、 教科指導についても母校とは異なり、 「能力・適性・進路に応じた多様な教育課程を通じて個性の尊重を図る」 ことを重点目標としており、 生徒は大学進学のみならず専門学校や就職といった多岐にわたる進路を選択し、 それに応じた授業が用意されてあります。 学校教育の多様化が生徒にもたらす影響
 私は教育実習を通じて、 以上のような教育方針・学校経営の違いを初めて感じ取ることができました。 そして、 このことは生徒にとって非常に効果的であり、 これからも推し進めていくべきであると感じました。 私自身の高校生活を見返すと、 限られた学区内で興味や関心が定まらないままに自分の学力に見合った高校へ進学しました。 そのことを後悔しているわけではありませんが、 あの高校入試の時期から数年が経ち私たちの学区制度も大きく変わりつつあります。 (当時は神戸市内で 3 つの学区に区切られてあり、 私が住んでいた第 1 学区には公立高校はわずか 6 校しか存在しなかった。 来年度より、 3 つの学区が全て統合され公立学校も20校以上に選択肢が広る。)
 文部科学省が大学に進する高校生の意識調査を行った統計を見ると、 大学進路選択時には高校段階での学業成績を重視した進路選択をし、 進学後の具体的な就学内容については 余り関心を持っていなかったと推測されます。
 そして、 大学では、 自分自身で授業を選択し履修し、 興味関心を深めていくことになります。 このような 「なんとなく」 の状況で大学に進学すると、 実際に私の友人で教育にあまり興味がなくブランドイメージのみで教育学部に入学し後悔した人や、 入学後に猛勉強して転学部した人、 就職活動で自分の学んできたことを思い悩む人がいます。 数名ではなく大勢です。 私の周囲では半数以上です。

 こうした事態を未然に防止するためにも、 高校生の時期から選択肢を設け生徒自身に判断・意思決定していく機会を設けることは重要である、 と教育実習と私自身の大学生活を通じて感じました。 そして、 こうした多様化を推進していくべきと考えます。

   
 (うえだ しんや 青山学院大学)


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