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サークル活動を通して感じたこと

安道 健太郎

 私は現在、 大学で教育学を学んでいる学生です。 大学では、 教育学について研究するサークルに所属しています。 サークルの活動は、 週に一回集まり、 教育学に関する文献を読み、 その内容について議論をする、 というかたちで行われています。 今回は、 このサークルの今年の前半の活動について振り返りつつ、 サークル活動を通じて考えたことについて書いていきたいと思います。
 はじめに、 今年サークルの活動で扱った文献について、 紹介したいと思います。 今年の前半は以下の三つの文献を扱いました。

堀尾輝久 『教育入門』 岩波新書, 1989年.
今井康雄 「見失われた公共性を求めて:戦後教育学における議論」 今井康雄 『メディアの教育学』 東京大学出版会, 2004年, pp.47-70.
下司晶 「発達 : 戦後教育学のピアジェ受容」 森田尚人・森田伸子編著 『教育思想で読む現代教育』 勁草書房, 2013年, pp.307-329.

 堀尾輝久の 『教育入門』 は、 文字通り教育学の入門書なので、 教育学を学んだことがない 1 年生にとっては、 基礎的な知識を身につけることができるし、 上級生にとっても基礎的な知識の復習ができると考えて選びました。 それに加えて、 堀尾輝久の考え方を批判的に検討するために、 今井康雄、 下司晶の論文も読むことにしました。 文献を読み、 そこから知識を得るだけではなく、 書いてある内容に対して、 批判的な目を向ける力も養いたいと考えていました。
 このようなねらいを持って活動を行っていったのですが、 『教育入門』 の内容は予想以上にも難しく、 特に 1 、 2 年生にとっては内容を理解するのが大変だったようです。 さらに、 今井康雄と下司晶の 2 つの論文も難しく内容を理解するのに苦労しました。 本来ならば、 文献の内容を理解するよりも、 文献の内容について議論することに時間をかけたかいのですが、 内容理解に時間をかけざるを得ない状態でした。 その結果、 文献に対するそれぞれの意見や見解を話し合う時間をあまりとれませんでした。 それぞれの意見を交換し、 それぞれが自分の考えを深めていくことがこのサークルの目的なので、 そうした活動を十分に行えなかったことは反省点として今後の活動に活かしていきたいと思います。 しかし、 自分一人で文献を読んでいるだけでは十分に理解できなかった部分も、 他の人と一緒に読み、 意見を交換するうちに理解が深まったということもあったと思います。
 当初のねらい通りには活動を行うことができなかったのですが、 ある程度の目標を設定し、 計画的に活動を行えたことはよかったと思います。 昨年までは、 1 冊の本が読み終わると、 つぎに読む本を探すというかたちで活動を行っていました。 そのため、 それぞれの文献の関連性が低く、 以前に読んだ本の内容がその後の活動に活かし切れていない部分がありました。 そうした反省を踏まえて、 今年は、 事前に読む文献を決めて活動を行っていきました。 その結果、 それぞれの文献の内容理解がそれ以外の文献を理解することに繋がったように思います。
 今年は、 通常の活動とは別に、 私を含めた数名で他大学の院生が主宰する読書会に参加する機会がありました。 他大学の院生や社会人の方と意見を交わすことができ、 大変刺激を受けました。 改めて、 自分とは異なる意見や立場の人たちと交流することの重要性を学んだように思います。 毎回同じメンバーで活動を行っているとどうしても共通認識のようなものが生まれやすく、 「この問題はこのように考えるのが自然だ」 と考えてしまったりします。 しかし、 それは異なる立場の人からすれば、 全く自然なことではない場合もあります。 このように、 自分たちとは異なる立場や意見の人たちと意見を交わすことで、 今まで自分たちが問題だと思っていなかったことを問題として意識することができる場合もあります。 自分たちが常識だと考えていたことの中にも問題が潜んでいることが自覚することで、 自分たちの考えを深めることができます。 今後は可能な限り、 学外の人たちと交流する機会を設けるなどして様々な立場の人たちと交流する機会をつくっていきたいと考えています。
 私は、 大学 1 年生の秋頃からこのサークルに参加し、 現在は 3 年生になり、 サークルの運営にも携わっています。 このサークルで様々な人と出会い、 意見を交わしてきました。 それによって、 自分の教育に対する考え方を深めることができたと思います。 自分とは異なる見解や意見を聞くことで、 自分の考えを深めていくことができるのがこのサークルの魅力の一つだと考えています。 大学の授業を受けることや、 本を読むことで自分の知識を増やし、 考えを深めていくことも重要だと思います。 しかし、 それだけではなく自分とは異なる考えの人と意見を交わすことで新たな発見をすることもあると思います。 私たちのサークルはそうした機会を提供する場でありたいと考えています。
   
 (あんどう けんたろう 日本大学)


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