●特集T● 研究所独自調査
「教員の意識調査」 の分析について
〜 「スクールカウンセラーの導入」 にかかわって
一養護教諭として感じること〜


 山崎 隆恵
 教員の意識調査の2003年と2012年は、 再編計画の前期が進行している時と、 後期がほとんど終わった時を比較することになり、 たった10年の違いでも教育制度や教員の変化を感じとれた。
 調査で個人的に注目したものについて述べてみたい。 新旧どちらの調査でもどの年代でも高く支持されているものとして、 「五日制の導入」 「スクールカウンセラーの導入」 「外部資源の活用」 についてあげられているが、 特にスクールカウンセラー (以下S.C.と略す) の導入 (勤務日の増加) について考えてみたい。 現行では学校状況により多少の差があるが、 大半は 3 校に 1 名の配置になっていて、 3 校は学校行事と照らしながら35回の勤務日を調整する。 その結果、 S.C.の 1 校あたりの勤務は 1 か月に 1 回程度、 場合によっては 2 か月間来られないような状況である。 生徒や保護者の要求に応えられず、 申し訳なく思うことも少なくない。 また生徒は、 小中学校の経験でS.C.は心の相談員 (正式にカウンセラーの資格がない方もいる) も含めて週に 2 〜 3 日勤務しているという経験があり、 そのせいか、 お気楽に (?) 「S.C.に会いたい。」 という声は増加していて、 内容はピンきりであるが、 物理的に無理で苦慮する場合もある。
 今回の調査は教諭と総括教諭が対象であるが、 養護教諭もS.C.の勤務増加には賛成である。 しかし自分の経験から、 養護教諭と教諭・総括教諭の考え方には若干ずれがあるように感じる。 学校の多忙化に伴い、 少しでも仕事の軽減をしたいために問題のある生徒にかかわる時間を減らそうと思っているならそれは違いますと言いたくなってしまう。 大半の養護教諭はS.C.の勤務が増えたら養護教諭自身も含め教員の仕事は増加すると考えている。 S.C.は、 相談室に来る 目の前の生徒の問題 と捉えて支援の手立てを講ずるだけではなく、 保護者や同級生、 あるいは教師など他者との関わりや、 その関わり方のひずみ全体を生徒の問題と捉えている。 そのためS.C.は、 登校しない生徒や多動の生徒を問題視するだけでなく、 そうした生徒と学校がどうかかわっていくかということを注視するのが仕事の中心と思う。 一方で、 家族形態の変化や経済状態の悪化により貧困化に伴って問題を抱える生徒は確実に増えていて、 S.C.の予定を組む養護教諭やコーディネーターはその数に頭を悩ませている。 S.C.の勤務が増えると、 それらの要望に応えることができ、 担任も問題を抱える生徒の行き場ができて安心できるであろう。 しかし、 忘れてならないのは、 それに伴う会議 (S.C.勤務日ごとのカンファレンスやケース会議) が確実に増えることである。 前述のように生徒と学校がどうかかわるかが焦点であり、 会議には、 担任や関係者は同席する必要があるし、 済めば終わりではなく、 そこで出された課題や問題点について、 次のカウンセリングまで担任や教科担当者や養護教諭がそれぞれの立場でその生徒や保護者にどうかかわっていくかを確認し、 実施していかなければならない。 だが、 会議で時間がとられたとしても、 教員の生徒の問題を抱え込む不安は減少するであろう。 教員が苦労して生徒や保護者の相手をしているとしたらなおさらである。 その対応が適切であったかを受け止めてくれたり、 正しい方法を示してもらったり、 自分も含めてみんなで生徒のことを考える機会が増える。 これは全体としてプラスになることは言うまでもない。 この前提でのS.C.の導入 (勤務日の増加) 賛成と考えたい。

(やまざき たかえ 研究所員)
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