●特集 V● あらたな入試制度はじまる |
クリエイティブスクール田奈高校の入試 |
金澤 信之 |
■クリエイティブスクール 田奈高校は2009年から、 釜利谷高校、 大楠高校とともにクリエイティブスクールとなった。 中学校までに、 持っている力を必ずしも十分に発揮しきれなかった生徒を積極的に受け入れる全日制・普通科高校になったのである。 このような生徒を積極的に受け入れるために入試の方法も大きく変化することとなった。 具体的には、 学力試験が無くなり、 調査書の評定を使用せずに意欲・関心・態度に着目した入試となったのである【1】。 2009年と2008年の生徒像はかなり違ったものとなった。 それまでも様々な取組で、 生徒は学校に対する信頼感を強めており、 中退者数も減少してきていたのだが、 この2009年は239名が入学し、 卒業は231名であった。 200名以上の卒業生を送り出すことが難しかった本校では驚きの数字であった。 これは、 これまでの取組の成果に加えて生徒が学校生活に前向きになってきたことにも起因しているような気がしている。 例えば、 生徒の行事への参加率が飛躍的に増加したことや授業中の様子からそう感じることができた。 新たな入試方法の影響があったのかもしれない。 しかし、 この変化はいわゆる学力 (評定) とは比例していない。 クリエイティブスクールになってからは中学時の評定を選考には使用していないのだが、 入学後にこれまでの合格者との比較は行っている。 むしろ、 評定は下降傾向にあり、 低学力の生徒の層が確実に厚くなってきている。 また、 クリエイティブスクールになってから、 貧困、 障がい、 外国へのつながり、 その他様々な困難を有する生徒が増加した。 低学力と様々な困難は時に一体のものである。 その複数の困難を可視化する試みを通して、 重層的なキャリア支援の仕組み (出口保障) をこれまで以上に構築することが本校の喫緊の課題となっている。 ■クリエイティブスクール前後 神奈川は2005年の学区撤廃と同時に前後期入試が完全実施された。 (これ以前は複数志願制度) クリエイティブスクールに指定される前は後期に学力試験があったが、 2009年にクリエイティブスクールなってから、 前期には面接とスピーチ、 後期はグループ討論 (自己表現活動) と面接による選考となった。 さらに、 前期の定員が全体の 8 割という前期に比重を置いた定員配分となった。 これは、 事実上、 前後期一本化の先取りとも言えよう。 (他の高校の前期比率は 5 割〜 2 割であった。) 2013年からの新入試にもこのコンセプトは踏襲された。 「神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改善方針」 の中で、 「特別な設置趣旨の学校」 と位置づけられ、 「学力検査を行いません」、 「調査書の評定は使わず、 観点別学習状況を活用します」 と説明された。 また、 今回の入試から、 本校に限らず特別活動などを調査書から読み取らなくなり、 意欲・関心・態度の比重が更に増したとも言える。 この 「方針」 に基づいて本校でも今年度の入試方法を策定することとなった。 結局、 グループ討論は時間的に難しいので、 面接と 2 分程度のスピーチ (自己表現検査)、 そのスピーチに関する質問という選考方法になった。 スピーチのテーマは願書提出時に示され、 入試当日までに受験生が準備をしてくるのはこれまでの入試と大差ない。 ただ、 スピーチを聞いて、 その場で質問するのは、 面接官にとって、 緊張感を強いられるものではあった。 昨年までは、 スピーチと面接は切り離されていたので、 ここは大きな変更点であった。 さて、 入試との直接的な関係は証明できないが、 2005年を境に男女比が大きく変化した。 2004年までは男子が多かったのだが、 2005年で女子が逆転し、 2009年には始めて女子の比率が 6 割を超え、 その後も増加傾向である。 前述した生徒像の変化とともにこれも大きな変化である。 今年度入学生の男女比は概ね 3:7 であった。 女子の就職が厳しさを増している中で、 就職希望が在校生の半数以上の本校にとっては実は無視できない変化なのでもある。 【注】 【1】2014年度田奈高等学校 入学者選考方法 【選考方法】
次の式から算出した数値をS値とし、 S値の高い者から総合的に選考する。 S(128点満点)=K1+K2+M+T 【評価の観点】
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(かなざわ のぶゆき 教育研究所員) |
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