●学校の現場から●

現業職員から見た学校
 
具志堅 進

 私たち学校現業職員は、 主に施設・設備の修繕業務や樹木の剪定、 除草、 清掃など、 学校の環境整備を仕事としています。 現業組合はその中でも環境問題として、 ゴミの分別・リサイクルの取り組みを重視しています。 組合としてその状況について情報交換をよく行いますが、 現場での苦情で一番に話題となるのが、 分別の仕方や清掃のいい加減さです。 多くの学校の現業職員に共通している感想は、 生徒の掃除のいい加減さと職員室における分別の仕方のいい加減さです。
 それとともに、 学校行事等における準備・段取りと後片付けは、 何かを企画する上での基本であるはずです。 でも、 ほとんど出来ていない、 というのが多くの学校における現業職員の感想です。
  1. 今、 学校では
    生徒の現状
      「容器包装プラスチックは、 再資源になるのだから、 不燃ゴミと容器包装はちゃんと分別をするように」 と注意すると、 生徒から 「すいません。 分別し直します」 とか、 「だって先生が分別はこれでいい、 と言ったよ」 とか、 「分別、 面倒くせえなあ」 といった反応があります。
     これは、 大掃除や放課後のゴミ集積所における生徒との会話です。 注意を受けた生徒の反応の特徴は、 上記のように、(1) 素直に注意を受け入れて自ら分別する者、 (2) 注意を無視して無言で反発する者、 (3) 悪態をついて開き直る者、 などに分けることができます。
     学校には、 生徒が主体で清掃をしている箇所がありますが、 此の部分は一般的には多くの場所で、 汚れが目立つ場所です。 監督する教員がいないと清掃もいい加減にやっているわけです。
     この状況を見て、 「今の生徒はだらしがない」 等と思うことがしばしばありますが、 掃除や分別でも、 多くの生徒は注意されればちゃんとやる子ども達がいるのも事実です。 また、 私たちが忙しく動き回っていると、 「たいへんですね」 「お疲れ様です」 と声をかけていく生徒や、 気を利かして手伝っていく生徒もいます。
     その他、 文化祭や合唱コンクールなど学校行事への取り組みの真剣さには、 目を見張るものがあります。 正門に飾るデコレーションのテーマや展開、 ステージ上でのプログラム、 出し物の内容など、 若者らしい発想や奇抜なアイデアなどは、 観るものを惹きつけます。
     特に、 担任や顧問など教員とのコミュニケーションが上手くいっている場合は、 意外性も含め、 大人の常識では考えられない、 面白い企画が出てきます。
     今の若い人に関して、 「言われたことしかやらない」 とか 「創意性がない」 とかの評価があります。 確かに、 大掃除などで外掃除を担当している生徒の中には、 不燃ゴミや可燃ゴミを一緒にして一つのゴミ袋に入れてくる場合があり、 区分をするようにと言っても、 どう分けるか分からず、 じっとしている者もいますが、 多くの生徒は、 分別の目的や方法を説明すると、 次回からはきちっと分別してくるようになります。
     学校行事など興味を持ったものについては、 驚くほどの積極性を発揮することからも言えることですが、 生徒に積極性を発揮させるためには、 「物事について、 いかにして興味を持たせるか」 が、 重要ではないでしょうか。
    教職員の現状
     一方、 教員の現状をみると、 「後から後から 『書類を作れ』 『検討するための会議が多い』 など、 調査研究のための打ち合わせが頻発し、 生徒と話をする時間がない」 「何のためにやるのか、 誰のためにやるのか、 はっきりしない仕事が多い」 などといった意見にみられるように、 今学校ではアンケートや教科実践の報告など、 県への事務的な提出物が後を絶たず、 教員への過剰な負担が多く見受けられます。 その結果、 生徒との関わりが部活動以外は希薄となり、 授業以外で日常的に生徒と関わり、 指導するという時間が持てなくなっている状況が見られます。
     教職員に 「ゆとりを持たせなくしている」 教育政策に、 多くの問題点があるように感じます。
  2. 学校のあり方とは
     学校は、 子どもたちの成長を促し、 心身の発達に寄与するための教育を中心に運営されなければならないはずだと思いますが、 現状は、 管理職による評価偏重の傾向が目立ち、 教職員への管理強化のための運営が中心になっているのでは、 と見受けられる状況を目にします。 そのため教職員の中で管理職に対する不信感が大きくなり、 また、 教職員の間でも会話や行動がどこかぎこちなく、 教職員が一丸となって、 協力協同して問題解決にあたるという状況が少なくなっているのでは、 と思います。
     放課後、 教員が子ども達とのコミュニケーションの時間がとれ、 少しでも多く子ども達と関わりを持つ。 そんな機会が保障されれば、 学校は活性化することは間違いありません。 行政も 「難しい教育政策を考える」 よりも、 教育現場の現状を変えることこそ第一にやるべきことではないか。 私はそう思います。
(ぐしけん すすむ 追浜高校現業職員)
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