子どもの参加をしっかり位置づけようとしている「土佐の教育改革」、特に高校生の声・意識はどうであろうか。今集会の資料集の中から「高知県生活指導研究会」が実施したアンケート(2000年2月〜3月実施、県立高校14校1,120名回答、下表参照)を参考にふれてみたい。
(1)「推進委員会」について
はじめに高校生は「推進委員会」をどの程度知っているのかの質問に対して、回答は「知っている」は14.8%、「知らない」85%である。(認知度の高い学校で45.2%、低い学校で3.0%)
また次に「知っている」と答えた生徒の中で「『推進委員会』に参加したことがある」と答えた生徒は28.3%、「参加したいか」の質問に対してはわずか7.8%である。反対に87%が「いいえ」と答えている。
全県下に設置されているはずの「推進委員会」は生徒にとってはこれからなのか。
さらに参加した生徒が「自分の意見を述べることができたか」についての質問に対しては「十分および少しできた」を合わせて48.9%となり少し前向きな回答が出ているが「述べることができなかった」生徒も同数である。その理由を見ると「関心のある課題ではない」「大人中心に運営された」が29.6%と同数を示し、「生徒の参加者が少なかったから」が25.9%と続いている。この結果を見ると生徒が主体的に参加している状態は余り見えてはこない。
(2)「生徒会活動」について
次に生徒会活動はどういう状態であるのかを見てみよう。まず「生徒会活動は活発か」の質問に対しては「わからない」が50.4%、「活発・どちらかといえば活発」を合わせると21.5%、「余り活発でない・不活発」が27.2%となっている。「わからない」の答えが半数以上あることから、まず生徒会活動そのもののあり方が問われている現実も見える。しかし「生徒会の役割として何が大切だと思うか」(図表)の結果を見ると、「学校行事の運営」に対して「とても大切・どちらかといえば大切」が76%、「生徒の意見をまとめ学校に伝える」70.2%、「校則の見直し」69.3%、「学校生活の充実・見直しを図る」62%の順に高い数字を示している。また「委員会活動の推進」55.4%、「生徒総会を行うこと」52.8%、「他の学校との交流」48.8%、「ボランティア活動の呼びかけ」46.8%、「平和・人権・環境問題」44.8%と続いている。
「学校行事の運営」、「生徒の意見をまとめて学校に伝える」、「校則」や「学校生活」などの数値の高さは「生徒会」が学校の中で自立性と主体的な活動をする場であることを意識していることがうかがえる。しかし身近な「HR活動を活発にする」に対しては「大切・どちらかといえば大切」は32.6%である。反対に「どちらともいえない・あまり大切でない・全く大切でない」は65.9%を示し、前問の「生徒会活動は活発か」について「わからない・あまり活発でない・不活発」の答えが77.6%であったことを考え合わせると、生徒会活動の第一歩目「自分・クラスの声を出す場HR」と自分たちの「学校・生徒会は自分の足下から」の意識と機能を持ち合わせていない状態がうかがえる。これはまさしく私たち大人社会そのまま、議会制民主主義の形骸化の数字とも受け取れる。
(3)学校や教員に何を期待しているのか
野村さんの報告にも一部あったように、高知県では生徒による「授業評価システム」がすでに全県下に導入されている。高校生はこの「授業評価」をどう捉えているのか、また学校や教員に何を期待しているのだろうか。
質問「『授業評価』を行うことについてどう思うか」では「必要なことだ、やった方がいい」が50.6%、「あまり期待しない、全く期待しない」は40.9%、「わからない」19.5%となっている。「『授業評価』」の結果が授業に反映されたか」については「大いに・少し反映された」は13.6%、「あまり・全く反映されなかった」が38.4%、「わからない」の答えが47.6%となっている。上記2つの設問からは「評価」は必要だとする回答が半数を超えるが「評価」をしてみても変わらない、期待は持てないというところなのか。
しかし次の質問を見ると生徒が学校や教員に対し何を求めているかがよく分かってくる。
「学校や先生に求めることは何か」(図3)。高い数値から取り出してみると、「教科の成績だけでなく生徒のいろいろな長所を見てほしい」は「そう思う」66.3%、「どちらかというとそう思う」16.8%、合わせて83.1%、次の「授業の内容をもっとわかりやすく」についてが「そう思う、どちらかといえばそう思う」が77.6%と高い。「学校の施設・設備」に対しても77.1%が「良くしてほしい」と願っていて、「服装・髪型・学校の規則」には70%以上の生徒が「自由に、ゆるめてほしい」と答えている。また「自由時間がほしい」69.2%、「生徒のいうことをもっと聞いてほしい」69.6%、「えこひいきをやめてほしい」62.7%、「生徒との人間的なつながりをもっと深めてほしい」53.1%、「体罰をやめてほしい」46.1%とあり、生徒自身が今置かれている学校での思いや状況がそれとなく伝わってくる。
以上アンケートの結果から見えてきた高校生の意識は「成績だけで見ないでほしい。一人の人間としてみてほしい」という教員に対しての訴えを持ち、それと同時に「先生!わかりやすい授業やってよ」ということである。当然の結果が出されている。
生徒は教員に向かっての訴えを持っているがそれを十分表現する場所が無かった。否ゆとりが無くてHR活動や生徒会活動などを教員も生徒もつくってくることができなかったと言うべきか。その現実を直視しなければならない。その現実から教育改革「開かれた学校づくり推進委員会」の言う「子どもたちが主人公の学校づくり」へと道は開かれていくのではないか。また同時に子どもたちからの「評価」の対象としての教員ではなく、教員は教員たち自らの手によって生徒と共に学校改革を進めていってほしい。テストによる評価・入試という評価の対象としか見られてこなかった子どもたちの立場をしっかりと受けとめていきたいものである。