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特集 : シンポジウム「入試が変わった!高校はどう変わる?」 |
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奥村:次に2ページ目にございます、豊かな心をはぐくむ教育です。協議会の流れを報告させて頂きますと、私は逐一事務局で見ていまして、最初は個が生きる教育で柱が終わってしまうんじゃないかと思っておりました。これは中教審にも出ていますし、誰も否定できないところでしたが、議論が進む中で実は神戸のあの恐ろしい事件が起こった。あるいは黒磯でのキレた子どもの殺傷事件があった。そういう社会的な状況を見る中で、能力を開発して、実力をつける、そればかりじゃない。ここにもあります。豊かな心をはぐくむ教育、他の人への思いやりを育てて、豊かな心の育成を目指すことが大切になってくるという意見が出されました。神奈川では「ふれあい教育」を進めてきました。こういったゆとりのある教育活動を展開していく中で、人間性をはぐくむ教育も大事だろうという考えかと思います。
これも私なりに考えてみますと、生徒にしてみると、入試もそうなんですが、試練があるわけです。人間というのは死ぬまで試練が続くわけです。私もきょうこういう場面で試練を受けているんですけれども(笑)、その試練をさせてないで、例えばですけれども、ある小学校だったと思うんです。徒競走で同じ成績の人たちをそろえて同時にゴールをさせる。また、最近は川岸が全部コンクリートで固められて安全になっている。なぜならば、けがをしたら管理責任で国なり、県なりが痛い目を見るからということもありますが、親御さんが自分の子どもが少しでもけがをしちゃいけないと考えている。子どもの試練に対して、どうも後ろ向き、消極的になっているんじゃないか。それは、今の社会が一発勝負で終わり、失敗を認めていない社会だからじゃないのか。何度もトライができる、そういう風潮をどんどんつくっていけば、中学校の先生方だって進路指導がもっと楽になるんじゃないか。そのためには保護者の方々が、今までのようにどうしてもあそこにということではなく、2番煎じ、3番煎じでもいいんじゃないのと、ゆとりを持って考えることが大切ではないでしょうか。
私は好きなんですけれども、山田太一さんの「ふぞろいの林檎たち」という作品を持っています。あの人は松竹に入っているんですが、たしか教員志望だったんです。何を間違えたのか試験日を忘れちゃって受けられなかった。やむなく松竹に入って、あれだけの名作をつくる。そういう失敗、それを認めて、もう少し寛大になっていく。それが豊かな心をはぐくむ教育につながるんじゃないか。協議会の中でも福祉を担当している先生がいらっしゃいまして、こういうものも一つの柱にして欲しいというご意見を頂いています。
そして三つ目、望ましい社会性の育成です。学校というのは、勉強だけじゃない。ホームルーム活動、部活などを通じて、いろんな個性と触れ合っていく中で、譲るところもあれば、主張するところもある。そういった切磋琢磨の中で社会性を育成していこう。これもやはりこれからの高校教育の一つの大きな柱になるんじゃないかという意見、これも貴重でした。そして3番目の柱とさせていただいたわけです。 望ましい社会性と言うと、年上の人は尊敬しなきゃいけないといったモラルを大切にするという考えがあります。私みたいに尊敬できない人にも、「尊敬しなさい」と言ってくれる。そういうのもうれしいんですが、よくよく考えますと、今、国際化が進んでいます。グローバルスタンダードと言われています。今、我々の周辺で、例えば談合の問題、系列の問題とか、そういったものは我々の社会では十分通用するけれども、グローバルに見た場合にはそれはどうなのか。そういった疑問を自分の中で醸成していきながら、じゃどうするのか。それも社会性の育成の一つのポイントになってくる。これから国際化していく中で、やはり望ましい社会性の育成も大事じゃないか。こういったポイントをいただいております。
私の持ち時間も限られておりますので、こういった部分を含めて、じゃ具体的にどうするのか。それにつきましては、また皆様方のご質問を頂きながら、お話をしたいと思います。以上です。
黒沢:どうもありがとうございました。ご用意頂きました資料に従いまして、3点にわたって、あるいは後半で問題になるかと思いますが、多様な入試の背景について、行政の担当者としてどう考えているかということを明確にお話しくださいました。
それでは次に順序に従いまして、平塚の中学校の河村先生にお願い致します。
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河村:中学校の現場から、新しい入試制度を経験して、そこで出てきた問題等を中心にお話をしたいと思います。
その前に、広い意味での進路指導に触れさせて頂きたいと思いますが、ここ10年ぐらいの間に、中学校の進路指導というものがかなり変わってきているのではないかと私は感じています。以前は「何になりたいか」という希望の職業につくまでを目標に置き、今は何をやるべきか、自分の個性は何なのかということを考えさせるような、単線的な指導が主だったように思うんですけれども、ここ10年ぐらいの間、少しずつ多様な価値観が生まれてきて、いろんな生き方が出てきた。そういう中で「もう少しいろんな生き方があるんだよ」ということを伝える指導が増えてきた。例えば働くことの意義なんかも職場体験学習を通して働くことの意味を考えたり、あるいは社会人の方から話を聞く中で、「どういう生き方があるんだ」「一つの職業でもいろんな進路があるんだな」といった感想が生まれてくる、そういう多様性を知らせ、いろんな可能性があることを知らせる。自分が何を本当に好きなのか、何をやりたいのかを考えさせ夢とか、希望を持っていこうということを伝えていくような指導に少しずつシフトをしてきたような気がしています。
今、実際に私の学校でも、三年間を見通した計画の中で、ただ単に職業につければいいということではなくて、生涯学習的な部分を視野に入れながら考えていこう、生き方を考えていこうという指導になってきています。ところが、3年の半ばになりますと、ここでいわゆる進路指導というのが始まりまして、言いかえると、進学指導ということで、それまでいろいろ希望を持とう、夢を持っていこう、いろんな生き方があるよと言ってきたのが、ここへくると、現実を見ろというような形で、可能性に気付かせる指導から、可能性をふさいでいく指導になってしまっていることを感じています。
そこに非常に大きなギャップを感じていまして、例えばA高校を希望したいんだと言ってきたときに、結局その可能性の部分で、「努力をしても非常に可能性は少ないよ」というような言い方をそこでしなければいけない場面というのが出てきます。そういうことが結局輪切り的な指導というふうに言われるのかなと思うんですけれども、それを本当に我々が望んでやっているのかというと、そうではなくて、できれば希望する進路にみんな進ませてあげたいし、そのまま夢を持っていってほしい。中学校でちょっと実力が出なかった子も、上でもっと伸びるんじゃないか、伸びてほしい。そういう道を保障してあげたいという気持ちはあるんですけれども、実際に学校間格差が厳然としてある中で、やはり輪切り的な指導をしていかざるを得ないという現状かあります。
ですから、新制度で学校間格差をなくそう、そういう指導をなくしていこうというような、その理念に対しては非常に賛成をするというか、結構だと思うんですけれども、では、その理念が実際に今2回の試験を経験した中でどうかと言いますと、一つは、複数志願制の部分について言いますと、定員の枠内を80%と20%に切るということで、第1希望の枠を逆に狭めて、不本意入学を結果的につくっているというようなことですとか、あるいは第1希望の学校、第2希望の学校ということで、逆に格差を生むようなことにつながっていたりとか、結局ふたをあけてみないとどうなるかわからないというところで、特に初年度などは、第1希望で不合格だった高校に欠員が出るような状況もあったと聞いております。そういう矛盾点を抱えているのではないかと思います。
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河村:総合的選考につきましても、確かにそれぞれの学校で重視する内容を出してきているわけですけれども、内実が非常に見えにくいというか、具体的に何を使って、どういうふうに決定をされているのかというのが、見えない中で決まってくるというあいまいさの部分。それから生徒会活動ですとか、部活動ですとか、ボランティアとか、そういった、いわば数値にできないような部分も数値化して、学校によってやり方は違うかと思いますけれども、選考の資料にする、そういうことが中学校の日常生活の中に及ぼしてくる弊害という部分も、聞いております。
調査書について言いますと、学級担任が自分の書いたものが評価されるというようなプレッシャーからたくさん書いてしまう。そういう事務的な部分での声もよく聞きます。
いろいろな問題があると思うんですけれども、具体的にどうしていったらいいのかという部分は非常に難しいと思うんです。課題を指摘するのは簡単ですけれども、じゃ、どうしようかということは難しいと思うんです。例えば総合的な選考で重視する内容の中に、地域性みたいなものを入れていくことで、地元の中学校を優遇するという部分も入れていくようなことはできないのかなとか考えています。
ただ、それを実際にやるとなると、高校そのものがもう少し変わっていかないと難しいんだろうなと思います。多様な子が少しずつ入ってくるようになると、やっぱり多様なニーズにこたえるような選択の幅の拡大ですとか、総合制あるいは単位制、そういったような形で変わっていかないと、なかなか難しいのかなとは思うんです。地域の子が自分の地域の学校へ進んで、自分で希望することが勉強できる。もしそんな形が実現できると、今現場で感じている1、2年までの進路指導と、3年での進学指導のギャップの部分も随分埋まってくるんじゃないかなと考えています。
ただ、学力偏重の価値観というのは、なかなか根強いものがありますので、実際に非常に難しい問題ではあると思いますけれども、ここでの話は以上にしまして、またありましたらお願いします。
黒沢:どうもありがとうございました。10分間という制約で、なかなか話しにくいところがあったと思いますけれども、進路の現場にいて、若干の変化が起こってきているということと、改革の理念的には賛成できるが、現実には今回の入試の色々な問題が出てきているというお話です。さらに中学校の立場から、高校のあり方についての提言も頂きました。
それでは生徒を送り出す側から、今度は受け入れる側の高校の立場からご意見をいただきたいと思います。県立平塚工業高校の石田先生、よろしくお願いします。
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石田:それでは時間が限られていますので、できるだけ単刀直入に、高校現場からの提起をさせていただきたいと思います。
まず、2年間の新入試制度を経験して、高校現場でどういうことが起こってきたのか、そして現場ではどういうことを考えているのかというところからお話をします。今、中学側から話がありましたように、ご存じのように、初年度県立高校では、59校641名という欠員を出したわけです。59校というと3分の1強です。それから641名というのは史上2番目だという話ですが、それほど大量の欠員を出しました。これは欠員を出しただけではなくて、例えば80%枠で不合格者をたくさん出していながら、結果的には第2希望枠が少なくて欠員になってしまう。それで再募集をしなければならない。これは高校の側にとってみれば大変なことなんですね。せっかく希望者がたくさん来てくれたのに落としてしまって、ふたを開いてみたら第2希望で人が来ないから欠員だ。そういう話ですね。これは逆に子どもの立場からしても大変ですね。結局落とされたんだけど、後で気がついてみたら、その学校は欠員だった。そういうことが起こっているわけです。
この欠員が生じてきた背景というのは、我々の考え方からすれば、数字を追っていくと極めてはっきりするわけでして、第1希望枠、第2希望枠という制度そのものにかかわっていると思われます。いわゆる第2希望が全然わからない。ふたを開いてみなければわからない。ある学校では第2希望枠だけで考えると5倍、6倍という倍率があって、欠員が出ているところもあるわけです。何倍あろうとも、その子どもたちが第1希望校で受かっていれば回ってこないわけですから、それは最後までわからないということなんですね。そういう中で欠員が起こったと思います。
当時の新聞の表現ですと、教育庁の指導部長は、子どもたちが行きたい学校を選んだ結果、こういうことになったんだというふうに書いてあるんです。もしもそうだとするならば、子どもたちが行きたい学校にそれぞれ自由に希望を出せば、当然欠員は出てくるんだということになるわけです。641名というのは、そういう結果偏りが生じて欠員が出たんだと考えざるを得ないのです。そうしますと、「行ける学校から行きたい学校へ」というスローガンに基づいて「子どもたちが選んだ結果、そうなったんですよ」ということであるならば、そのような制度改革というのはどうだったんだろうか。賛成できるのかどうなのか。端的に言ってしまえばそういうことなんです。
冒頭に黒沢さんの方から話があったように、第14期中教審の方法論的な格差解消の手だてをそのまま神奈川県はやっているわけです。それは各学校に特色をつくって、子どもたちが自分の興味関心に基づいて、その特色を選んで学校に行きなさいと、それが「行きたい学校」ということです。そういう説明なのです。もしそういうことがこれから進められていくとなると、高校の方が、それに対応する人数を考慮しながら、子どもたちの興味関心にぴったり合う特色を出さない限り、これは不本意入学になるか、欠員になるかという話になるわけです。最初に話した第1回の641名というまれに見るたくさんの欠員を出したことですでに証明できたのではないでしょうか。一言で言ってしまえば、そんなにうまくいかないということですよ。
私の学校は工業高校ですから、工業高校としての特色はあります。私のところに新入生が入ってくると必ず聞いてみます。私は化学科なんで、「君は化学が好きだったか」と聞くわけです。あるいは授業のときに化学が好きだったかどうだったか手を挙げてもらう。3分の1好きだという子かいたらもう万歳ですね。どちらかと言うと、きらいだったという方が圧倒的なんです。化学科ですよ。こんなにはっきりとした特色はないじゃないですか。それが現実だということです。
中には推薦で来た子どももそうなんです。1年間もたないで、自分が思っていたことと全然内容が違っていた。だから辞めるというので、4月に入ってきて、12月ぐらいでやめていく子が推薦入学者でいるわけです。面接をすると、「僕は化学が大好きです」と言うんです。「この学校を出て化学関係の会社に行きたい」と立派なことを言うんです。だけど、やっぱり手を挙げるときには、化学はどちらかと言うと嫌いだった。私のクラスですけれど、その子は挙げていました。「何が好き」と言ったら、「英語が大好きなんですけれども」と、英語の先生に聞いたら、本当に英語の点はいいし、非常に前向きであったと、そういうふうに言っていました。でも化学はきらいだったんですね。
化学科ですから、どうしても化学に関係する授業が多くなります。これは仕方がないですね。中学3年生を卒業して、自分が行きたい方向が定まって、普通科高校に行くんだ、工業高校に行くんだ、総合学科に行くんだと、さっきお話がありましたけれども、そういうふうにうまくいっているのかどうかというのは、中学校の先生、あるいは中学生を持っている親、あるいは子ども自身、この辺をよく調べてみるとわかるんじゃないかと私は思います。
そういう子がいないと言っているわけではありません。そういうふうにうまくいくはずだという前提で物事を考えていったら、現場では全く違うことが起こっているということを説明しているわけです。これは事実なんです。恐らくほかの学校でも、似たような状況が起こっているでしょう。
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石田:現在の高校教育改革、文部省が主導で進めている柱には幾つかあります。神奈川も、それにのっとってやっているわけですが、一つは、入試の多様化です。それから特色づくり。もう一つが、学校制度そのものをいろいろいといじる。例えば第3の学科だと言われた総合学科とか、あるいは単位制高校、こういったものを文部省が打ち出しました。あるいは中・高一貫校、この辺をよく見てみますと、総合学科というのは、一つの学校に特別な特色をつくるというのではないんです。中に入ってから子どもたちのニーズに合わせて、いろんなものが選べるようにしなさいよというのが総合学科の理念です。単位制高校もそうですね。いろんな単位が取れますよ。片側でもってA校はA校なりの特色を出せということを指導するわけです。随分おかしな話なんですね。
現在、「神奈川新聞」がこう書いたじゃなくて、近い将来統廃合も出てくるんじゃないか。工業高校というのは、先ほど話したように、子どもたちにあまり人気がないから、統廃合の対象になるんではないか、ということでもって戦々恐々とした先生方が、自分の学校をもう少し魅力のあるものにしようと、いろいろ検討が進んでいます。
どの学校も、総合技術高校という名前をつけるかどうかは別として、基本的にはそういう方向で検討が進んでいます。子どもたちが、入学してから選べるようないろんなメニューを用意して、そこで子どもたちの興味関心に合ったものが選べるような学校づくりの方向で、神奈川県の工業高校の検討は進められています。私はそれは正しい方向だと思っています。
先ほど言ったように、化学科だから化学の授業が多いに決まっているところに、その化学が嫌いな子が来るわけですから辛い。そうではなくて、化学の嫌いな子どもでも、自分の好きなことができれば一番いいわけです。あの子だってやめていかなくて済んだのです。英語が得意だったわけですから。子どもたちは入学してきて、どんどん変わります。その変わることに期待をしますし、また、それに対応できる学校づくりということを本格的に考えていく必要があるのではないか、そんなふうに思います。
とすると、果して現在神奈川県で進められている高校教育改革の流れは、本当に正しい方向にあるのかどうか。私は高校現場からだけですが、そこから見ている限り、軌道修正は迫られるんではないかとそんなふうに思います。
今期の新聞を見ますと、文部省は特別な事情があれば入試はしなくてもいい。筆記試験はやらなくてもいいというような記事が出ていました。文部省は、戦後間もなく入試はやらなきゃいけないとしていたのを、やっとここにきて軌道修正をし始めたと思いますが、神奈川県の教育行政の方もぜひ軌道修正をお願いしたいとお願いして、発言を終わりにしたいと思います。(拍手)
黒沢:どうもありがとうございました。拍手を頂きましたけれども、高校の立場から大量の欠員が出ている事実をご指摘されて、総合的選考の問題点、複数志願制の問題点を出されました。それと関連しまして、総合学科や単位制の問題も、今後神奈川県の高校改革の進行の中で、かなり具体化されてくるだろうと思います。そういうことについての先生のご意見も明らかにされたと思います。
以上で一応予定されました最初の4人のシンポジストの方のご報告が終わりました。
それでは、予めタイムスケジュールの説明で皆さんに申しましたように、私の方から簡単な質問を4人の方に致しますので、先ほど10分ではとてもしゃべり切れなかったことも含めて1人5分間ぐらいで再論をお願いしたいと思います。
最初の鈴木さんに対しましては、アンケートをもとにご報告なさって、結論的には県民にご理解を頂いているという結論だったと思います。私は、そのアンケートは存じ上げませんが、尊重したいと思います。私が最初に申しましたように、まだ2年目でございますから、そんなに詳しくは分からないと思いますけれども、端的に多様化によって格差是正というものはなくなる方向にあると考えてよろしいのでしょうか。厳しい質問かもしれませんけれども、私は、その点をまず質問したいと思います。
それからもう一つは、中学の問題ですね。河村先生の方からも出ましたが、地域にねざしたということをおっしゃいました。私もその点は非常に大事な点だと思いまして、15期中教審も、地域の教育の再生について相当のスペースをつかって提言しているわけです。それと今回の入試選抜の改革というものが、かなり整合性があるのでしょうか。具体的に言えば、地域の再生という形で、これはかなり成果があった、あるいはこれからもあるだろうというお考えに立っていらっしゃるのか。そういうことを質問させていただきたいと思います。これが鈴木さんに対する質問です。
それから奥山さんに対してましては、おっしゃる3点は私も十分分かるつもりで、その点については反対は全くないんでございますけれども、これはやっぱり河村先生がおっしゃったこととも重なりますが、確かに「哲学」を持って入らなきゃいけない。もうちょっと易しく言いますと、選択があらかじめあって学校を選んで欲しいとおっしゃいましたけれども、私の関わった限りでは、今の中学の現状ではなかなかそこまで望むのは無理ではないだろうかと思うのです。もちろん若干そういう動きは出てきているとは思いますけれども、入試という壁がありますので、差し当たってはとにかく高校に入らなきゃいけない、それにはつぶしがきくという言い方は悪いですけれども、入ってからもある程度選択幅がある普通高校へ、それからせいぜい総合学科だったら多少は何とかなりそうだとか、そういう形で入ってくる子どもが全国を回ってみますと、非常に多いように思うのです。
ですから、おっしゃることは非常によくわかるし、今後そういう方向への努力は続けてもらいたいと思いますけれども、少くてもここ数年はなかなかそうはいかないのかなと思いますので、その点についてより具体的なお考えがあったらお話して頂きたいと思います。
それから河村先生に対しましては、現場で大変ご苦労なさっていることはよく理解できました。また進路指導の場において、10年ぐらいかかわってきたご経験を踏まえたご意見も大変興味深く拝聴しました。そこで一つだけ、先程言われたことは保護者の考えを含めたお話なのか、あるいは生徒自身の考えなのか、あるいは両方のことを踏まえておっしゃっているのかということをお伺いします。もっと幾つか聞きたいんですが、時間の制約もありますのでこれに限定します。
それから最後の高校の石田先生のご意見は、私の不安ともかなり重なるところがございます。石田先生は工業高校の先生でございますので、工業高校自体が特色があるわけですから、そんなにご苦労はないかもしれませんけれども、「特色づくり」ということについて、どんなふうにお考えになって現場で努力をなさっていられるのかということを、もうちょっとお話して頂きたいと思います。それから「推薦」はかなり問題が出ています。これからも多様化の選抜の手段として拡大されていくと思いますので、もし時間がありましたら、今でもこういう問題点があるということも含めてお話頂ければありがたいと思います。
鈴木彰:2点ご質問ということですけれども、まず第1点の多様化により格差が是正されたかという件でございますけれども、これについては、先程申しましたアンケートの結果には、そういった項目で調べてございませんので、当然出てきておりません。ただ、検討の過程で、教育関係者の方からいろいろお話を伺っております。
その中で、例えばこういうのがございました。「特色ある生徒の入学により、学校が活性化してきた」と。今まで委員会活動とか、部活動のリーダー的な生徒が入ってきていなかった学校につきまして、最近入学してきたということで、部活動なり、委員会活動が活発化してきたというご指摘もありました。それは具体的に是正が進んでいるかという直接の答えになっていないかと思いますけれども、そういったことでございます。
それから地域にねざした特色づくりということで、入試改革との整合性ということでございますけれども、これも先程申しました入試の総合的選考という部分でございます。これにつきましては、各学校が入試する内容につきまして、募集案内を各中学の3年生全員に夏にお配りするわけでございます。その中で、それぞれの学校が教科活動と教科外活動につきまして、挙げてございます。教科活動につきまして、十分に地域にねざした特色が出るかどうかというのは、なかなか難しいことでございますけれども、教科外活動につきまして、地域のニーズに即したものを学校で取り入れているという状況があれば、当然その部分で入試との整合性が出てくるものではないかということで考えております。
黒沢:どうもありがとうございました。では、奥山さん。
奥山:ただ今の黒沢先生のお話ですけれど、中学の現在の状況の中では、差し当たって明確な志望を持っていない子どもたちは、普通科高校はどうだろうかと、そんなお話を頂きまして、これにつきまして協議会の中でも、やはり同様なお話が出ています。
協議会のある委員さんの意見でも、お子様たちの意見を聞いて、中学校で進路指導をしていく中で、明確に「私はこういうことをやりたい」という子どもたちは実際にどのぐらいいるのかというと、10人に1人じゃないのかと、そういう意見も頂きました。その10人のうちの1人は、その希望に従って、例えば自分にマッチした専門学科があれば、そこに入っていくという方向がとれると思います。
まだ明確じゃないという子どもたちに対しては、例えば総合学科、先ほど高校の先生からもお話を頂きましたけれども、入って1年目に「産業社会と人間」という科目をとり、自分がどういう生き方をしていったらいいのか、将来の職業に照らし合わせながら授業を受けていく中で、自分がやりたいことを見つけていく。こういう新しい取り組み、これは大師高校で実際に行っているわけです。1年間そういう勉強をした後、2年、3年で自分の進路をだんだん定めていく、こういうやり方もありますし、普通科で進学一本やり、これも結構かと思うんです。要は、今まで普通科に偏っていた高校、選択する幅が余りなかった高校を多様化させていくことです。
子どもたちにしてみれば、自分たちの個性を尊重するときのバックボーンには、一つは、自分がどういう人間なのかを見極めたいということがあります。ですから、例えばよく話題になっている指導要録の開示請求、これもよくわかります。自分は何なのかを見極める。学校でどう見られているかを知りたい。これが一つあります。もう一つは、選択権を自分に確保したいということがあります。
ですから、多様で柔軟な高校教育、このページで申し上げますと、2ページ目、「これからの県立高校のあり方」の方に出ていますが、多様な教育を展開していく。総合学科でまず1年間自分探しをして、2年、3年に進んでいく。普通科もいいし、普通科の中で専門コースもその多様な選択肢の一つになります。いきなり専門学科でもいい。こういうふうな多様性を確保していくやり方の中に、今の黒沢先生の質問の答えがあるような気がします。
黒沢:どうもありがとうございました。それでは、河村先生、お願いいたします。
河村:保護者の考え、生徒の考えを含めてのことかということですけれども、我々は、前の入試制度も経験しておりますし、毎年やって比較ができますけれども、保護者、生徒にとっては、そこが初めてという場合が非常に多いので、そんなものかなという感じで新制度については受け止めていると思うんです。前に上の子で経験をされたお母さんは、戸惑いと言いますか、前と違うという部分で、先生は余りはっきり言ってくれないという感じはあるんじゃないかと思います。
また、そういう中で私学併願という部分が増えてきている。開けてみないと分からないという部分が非常に多いので、そこは非常に多くなっているという実態はあると思います。
それから先ほど申し上げた、地元の生徒を優遇するというような部分について言えば、これはいろんな方がいらっしゃいますから、いろんな考え方があると思うんです。保護者、あるいは地域の方にとっては、一概に賛成してもらえない部分も随分含んでいるのではないかと思います。学力偏重の価値観が根付いている中で、学力的に上位の学校と、課題集中校と言いますか、そういう学校の地域とでは非常に温度差が出てくるでしょうし、そういう中で基本的に教師も含めてですけれども、価値観みたいなものの転換を図っていかないと、なかなか難しいと思います。
そうした上で話は少し大きくなりますが、教育改革が今進められていて教育の枠組が大きく変わろうとしています。これは、制度も価値観も何か転換を図っていく一つのきっかけになるんじゃないかなと思っています。私もあの子はできる子とか、できない子とか、そういう言い方を職員室でしている状況があって、そのできる、できないというのは何かと言うと、英語、数学、国語ができるか、できないかという部分で言ってしまっている。「あの子はできるけど、リーダー性はないよね」とかいう言い方、教科ができることが何でも優秀なことにつながっていくような、そういう価値観みたいなところをやはり見直していかないといけないと思い始めています。なかなか実際には難しいのかなという気はしていますが…。
黒沢:どうもありがとうございました。それでは最後になりましたが、石田先生。
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