『教育白書2001』独自調査
 中途退学者の声を高校改革へ
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now 神奈川の全日制県立高校の中途退学状況

2.神奈川の全日制県立高校の中途退学状況
 まずは、学区・学校ごとの資料を整理して、中退の大まかな状況を把握し、いくつか特徴的なことを述べていこう。

 ◆中退は課題集中校に集中
 一口に3,000人の中退者といっても、学校別にみると、中退率の高い学校とそうでない学校とに明らかに区別 される。中退者が1997年度から1999年度までの3年間で5人以下の学校が14校あるが、逆に150人を越える学校が 16校ある(これらの数値は、県立高校のみのものであり、教育研究所調べによる)。学校規模などを考えると人数の多少は一概にはいえないが、学校差があることは明白である。  
 一般的に中退率が低いのはいわゆる「進学校」の場合であり、「中堅校」は、低いとはいえないものの、県平均の中退率を下回ることが多い。多少の例外はあるが、「課題集中校」「専門高校」では、中退率が高い傾向にあり、10%を超えている学校も少なくない。ある学区の中退率の状況を示した下の図を見てほしい。  

 中退者のいない学校がある反面、実に中退者が2校(課題集中校)に集中し、約2/3に及ぶ。他の学区もほぼ同じような状況を示すことが多い。中退率上位 2校で学区全体の中退者の2/3から1/2程度を占めている学区が多いのである。 中退者は学校間格差との相関関係が非常に深い。また、ある課題集中校において、第1学年の入学者数とその学年の3年後の卒業者数とを比較してみると、6割以下になっていたという現実もあった。

 ◆専門学科も高い中退率 
 また、表2に見るように、きわめて専門性の高い職業学科を持つ専門高校においても、中退率は高い。個々の学校の状況や、設置されている学科によっても差はあり看護学科・外国語学科ではきわめて低いが、一般 的に工業系の高校は、県立高校全体の中退率より高い数値を示す傾向がみられる。その中でもいくつかの学校の中退率は、課題集中校といわれる学校の中退率にかなり近い。  
 特色が顕著で、入学に当たって生徒は目的を持って選択しているはずのこれらの学校において、相当数の中退があるということは、中学校段階での進路選択が難しいことや、入学後の柔軟な進路変更のシステムも必要だということを示していよう。

 ◆中退率は横浜・川崎地域で高い傾向
 次に、学区ごとの中退率を見てみる。表3には学区内の公立高校数と、3年間の学区ごとの中退率を示した。専門高校は、全県一区であるが一応所在地の学区に分類している。 中退率が高い傾向を示している地域は、横浜や川崎などに多い。横浜や川崎地域であっても、様々な要因(立地条件、地域性、専門高校や定時制・通 信制高校などの多少、学校間格差の大きさや度合いなど)が影響し、例外もあるが、概して、中退率が高いといえる。

 ◆学区が小さいほど中退率も低い
 最後に、学区の中の学校数と中退率の関係をみてみよう。
 神奈川においては、学区内の校数が5校程度の地域と、公立高校全体で10校以上を超える学校をかかえる地域がある。
 表3からは、学区内の校数が多い場合には、中退率が高い傾向がみられる。また、3年間とも県の平均値を下回っている学区が5つあるが、その中の茅ヶ崎学区や秦野伊勢原学区は学校数が少ない。校数が少ない地域は全体の中退率が低い。
 また、茅ヶ崎や秦野伊勢原学区の中で、中退者が集中している学校もあるが、他学区の中退者が集中している学校に比べ、率としてはかなり低い。学区が小さいこれらの地域では、入学した生徒の多くが卒業まで在籍でき、一つの学校に中退者が人数的にも大量 に集中するような現象はみられない。
 以上のことは、今後の神奈川の高校の学区編成を考える上で、大いに参考になろう。学区縮小によって学校数が少なくなることで、学校間格差が緩和され、同時に中退者を少なくする(卒業までの生徒の学習を保障する)効果 も生むと考えられる。
 

 
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