神奈川県高等学校教育会館

スローアグリカルチャー研究会の活動について


スローアグリカルチャー研究会
  
 スローアグリカルチャー研究会の活動の目的は、現在問題となっている食品の安全性について、自らが安全な食品作りに関わることによって、「安全な食品」「安全な食料」とは何なのかを実践を通して考えることを第1の目的とする。また、現在栽培されている野菜のほとんどは、「F1」と呼ばれる「アグリビジネス」が作り出した一代交配種で、農民はこの品種を作り続ける限り「アグリビジネス」の支配を受け続けるというものである。このような食糧支配構造から自立した農業とするためには、かつてのような農民が自分で育てる作物の種を、自分で採取する「再生産」農業としなければならない。私たちの会は、そのような再生産農業を作り上げること、安全な作物を生産すること、を実践を通して実現し広めようという考えに基づいてつくられた研究会である。

 今年に入って中国産の食品、とりわけ野菜への残留農薬の危険性が大きく取り上げられている。日本の人々もようやく野菜とりわけ輸入野菜の安全性に対する関心が高まってきた。しかし、中国産のみが危険なのか、中国産のずべてが危険なのかという観点では見られていないようだ。アメリカ産の牛肉の「狂牛病騒ぎ」も、何の根本的解決策を提示しないまま、始めに輸入再開ありき、という政治的決着となってしまったことは記憶に新しい。単に、ヒステリックに中国産食糧・野菜の危険性を騒ぎ立てるだけでは、「喉元過ぎれば」有耶無耶となってしまうのではなかろうか。公的機関が「安全宣言」を出してそれでおしまいとならぬよう、野菜を含めた食糧問題の追求と国民への問題提起がおこなわれなければならないであろう。

 私たちは、「農薬を使わない」ことの意味、「有機肥料」とは何か、「遺伝子組み換え作物」は安全なのか、多国籍企業である「アグリビジネス」による食糧支配の真の意味は何なのか、食糧支配によって私たちの食の安全は守られるのか、などについて研究をしてきた。また、「食糧」をアグリビジネスから個々の農民が取り戻すことによって、真に安全で平和な世界を構築する「道」が開けると考えるのである。

 スローアグリカルチャー研究会の活動の目的は、それぞれの会員が「食の安全」を考え、可能な者は「安全な農業」実践を目指し活動する、ことにある。そのために、各自の農業実践に加えて、各地で安全な食作りに関わっている人々との交流、実践交流を行ってきた。具体的には、無農薬(除草剤も含む)・有機肥料で米作りを行っている、御殿場の辻川公子さんの水田で除草作業協力や、山北で完全無農薬ミカン栽培を行っている府川農園での収穫協力などを行った。また、辻川さんの水田が、9月の台風で被害を受けたため、その補修作業も行った。また、1940年代中国で日本軍が行った細菌戦の一翼を担わされた研究者(医師)の娘さんによる聞き取り証言座談会(御殿場・オクラギャラリー)を実施し、12月の総会時にアグリビジネスによる農業支配と闘い、在来種の種を守る活動を続けている埼玉県飯能市の野口種苗研究所の野口勲氏による「種を守る」講演会を実施した。また、神奈川県独自の在来大豆の「津久井在来」を守り広める活動を行っている、農業・石井好一氏との実践交流を行い、さらに、川崎独自の品種である「ノラボウ菜」の栽培採種を行って種を広める活動などにも取り組んできた。ちなみに「津久井在来」は、元神奈川高教組組合員で津久井高校校長で退職された故高木治平氏が守り育成してきた品種である。

 これらの活動を通して、私たちと同様の考えで農業実践している人々が各地に点在していることが判った。それらの人々は、これまで苦労を重ねながら安全でおいしい、そして「農業・食を守る」活動を重ねながらも、横の連携がとれずに個としての活動に止まってきた。今後、これらの人々との連帯を深めながら、真剣に「農業」「食の安全」を考えている人々との交流活動を進めていきたい。

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