神奈川県高等学校教育会館

高校におけるインクルーシブ教育の取り組み


神奈川「障害児」の高校入学を実現する会
  
(1)「障害」のある受験生に対する選抜制度の問題点の解明と対策

 神奈川県では96年に「障害」のある受験生に関する基本方針を策定し、「障害のある生徒を現行の入学者選抜制度の弾力的運用によって、可能な限り受け入れるようにするということが基本的考え方である」として、選抜に際して様々な配慮を行っている。08年度の前期選抜では、「障害」のある受験生が1.92倍の全日制高校に合格した。これは、20年以上に及ぶ当事者側の運動による積み重ねの成果でもある。これまで「障害児」を受け入れてきた高校では、教師の中に「障害児」と付き合う自信も見られるようになってきた。 
しかし、選抜制度の中心になっている内申点・学力検査・面接は、ハンディある「障害児」にとって不利益そのものであり、多くの「障害児」は、高校に行きたくても諦めさせられているのが現状である。中学校の進路指導ではほとんどが養護学校への道筋しか示されない。高校においては、各高校で作成される選考基準は「能力」に重点が置かれ、「障害」のある受験生への視点はほとんどない。
 求められているものは、送り出す中学校と受け入れる高校、そして教育行政が、神奈川県の基本理念である「共に学び育つ教育」の確立に向けて、教育の再構築をしていくことである。

(2)「障害」のある在校生の条件整備等問題の改善に向けての対策
 
 97年度から介助員制度を導入し、本人の希望で介助員をつけることができる(週30時間)。現在問題になっているのは車イスを使用している生徒の垂直移動である。県は「条例違反であることは承知している」と言いつつ、「耐震強度優先のため予算がない」とエレベーターの設置を進めていない。往々にして教員の不安と不満が当事者に向けられることが多いが、それは絶対あってはならないことである。多くの教職員と高校生がいる学校で、自然に「手を貸す」という現場での人間関係を創っていくことが望まれる。

(3)全国における「障害児」の高校問題の取り組みに関する情報収集及び各地との交流

 「障害児」の高校入学の動きは全国に広がっている。しかし、定員内不合格を出さないところは神奈川と東京だけで、「知的障害」の受験生が定員オーバーの全日制に合格しているのは神奈川のみである。神奈川への評価は高く、各地から多くの問い合わせがきている。

(4)「障害」のある生徒の卒業後の進路開拓

 00年3月「障害」のある生徒の卒業に当たり、当時の高校教育課長から「将来に向けての実習」の提案があり、同年4月から実施され、現在に至っている。福祉関係中心である養護学校の進路先の踏襲ではなく、「地域で当たり前に生きたい」という生徒の思いに寄り添いながら、行政や学校が知恵を出し合い、幅広い進路を柔軟な視点に立って考えていく必要がある。





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