神奈川県高等学校教育会館 | ||||||
日本語非母語話者のための 学習語彙5000語の教材化に関する研究 |
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特定非営利活動法人 中学・高校生の日本語支援を考える会 |
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グローバル化の波に押され、多様な文化や言語を持つ外国人が増えているが、その国境を越え移動する子どもたちの学習権を保障していくことは、私たちにとって重要な責務である。しかし、中学・高校における日本語教育プログラムはまだ不十分であり、専門性を兼ね備えた教師も少ない。今、年少者の日本語教育では、日常会話には不自由しないが教科学習を理解できるまでの日本語能力を習得できない生徒が多いことが問題となっている。 教科学習に不可欠な読解力は語彙力と相関が高いという研究報告があることから、私たちは母語を利用した語彙教材作成の研究を始めた。まず、日本語指導者20数名に、どのような語彙を定着させるべきか、これまでの経験や国研などの研究の成果を踏まえて選んでもらい、それらを集計し統計的処理を行い、約5000語を選び<学習語彙>とした。(選定過程の詳細は、ホームページhttp://home.e07.itscom.net/maki) 単語だけ覚えても長期記憶につながらず運用能力が育たないので、文脈や場面の中で語彙の意味が覚えられるよう、用例文作成にかなりの時間と労力を費やした。自然な日本語文の中での使われ方を学ぶことによって統語能力を高め、母語訳との関係からその語の意味を理解し、かつポルトガル語の保持にも役立てようとしたのである。また、例文にルビを振り、指導者が不在であっても、自学自習できるようしたのである。例えば、「明るい」という一語でも、文脈によってポルトガル語では3語になる。(カッコ内の数字は文番号) 例:あかるい
学習語彙として選定した5166語の日本語の語彙に7404文の用例文を作り全て翻訳し、『用例付学習語彙5000語 日ポルトガル語対訳』として教材化した。 子どもたちに内在化しているはずの母語、しかしそれは努力しなければ弱まっていく。その母語を保持/伸張させていく必要がある。マジョリティーの言語の押し付けではなく、マイノリティーの人々の継承語で公教育に繋げていく教材を作って学習環境を整えることが、それぞれの文化や経験が認められるような多様で豊かな日本社会が実現するための第一歩であると考える。 |
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