神奈川県高等学校教育会館

進学者が多い高校での「朝の読書」の実践

厚木東高校読書教育研究会
 
 神奈川県の公立高校における「朝の読書」の実施率は、全国最下位である。実施校の数はわずか3校(152校中)にすぎない。広まらなかった原因の一つは、「朝の読書」は課題集中校における実践であると誤解されてきたことある。

 そもそも「朝の読書」は、千葉県の私立高校で誕生した。学習上・生徒指導上の課題をかかえる高校であったため、同様の悩みをかかえる高校の教師たちがその実践にとびついた。ところが、本県で最初に取り組んだ、課題集中校である大沢高校での実践は困難をきわめた。マスコミなどで取り上げられる機会もたびたびあったが、「実はうまくいっていない」ということも広まっていった。

 大沢高校は、「朝の読書」を「総合的な学習の時間」の一部に組み入れることによって困難を克服した。しかし、「朝の読書」を「総合」に組み入れることが公認されるにいたるまでは時間がかかった。
 「朝の読書」を「総合学習」の一部に組み込むことが公認されたのち、県立S高校が導入に踏み切った。つづいて、大学進学者の多い本校での実施となるのである。

 本校の「朝の読書」は、毎朝読書に親しむことをとおして、次の3つの力を育成することに目的をおいている。
  1. 「進路を実現する力」、
  2. 「自己学習力」、
  3. 「生涯を通しての学ぶ力・考える力・生きる力」である。
 進学者が多い高校での導入には、目的の明確化とともに、導入のタイミングも重要であった。本校の場合、2期制・7時間授業・新カリキュラムなどの導入の時期に、「朝の読書」も検討された。

 「朝の読書」の導入後の課題も多い。「朝の読書」を始めたから、上記の3つの力が自動的に形成されるわけではない。「朝の読書」は、あくまでも読書の習慣をつけるきっかけにすぎない。読書力をつけるうえで、「入口」に立ったに過ぎないのである。

 生徒たちの読書力をつけるには、教科との連携が重要である。とくに国語の授業の役割は大きい。また、国語にかぎらず、教師たちが授業・HRなどあらゆる機会に本について語ることが重要である。学校図書館や図書委員会の役割も大きい。

 また、「総合的な学習の時間」の一部となったので、単位認定に必要な履修条件を満たす必要がある。「読書の時間」に遅刻してくる生徒をどうするかという問題も大きい。

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