神奈川県高等学校教育会館

エデュテーメント・ゲームの開発に関する研究

かながわエデュテーメント研究グループ
  
 本研究の目的は「娯楽」と「教育」の中間領域をめざす高校生の年代を対象としたゲーム開発である。昨年度は既存研究と教育、福祉の現場への見学や聞取りから議論を行ない、その結果、試作品を制作しながら、多人数同時参加型オンラインゲームの新しい「学びあい」の可能性、あるいは「物語性」を重視した人生と向き合う「シリアスゲーム」の開発といった目標をみつけることができた。今年は実際にMicrosoft社のExcel VBA及びAdobe systems社のflashを用いたゲームソフトの開発をめざした。その結果、未熟ながら教育用コンピュータゲームのベイシックモデルとも言うべき「すごろく」ゲームをVBAによって完成し、さらにflashによるアニメーションムービーに取り組むことができた。ただしサーバー上での公開、オンラインゲーム化については到達できず、また「シリアスゲーム」と呼べる内容にも至らなかった。

 このうちVBAを利用したすごろくゲーム『すごろく侍』の制作は2つの点で教員によるゲーム開発を念頭においている。一つはExcelの利用は表現力には制約があるものの、統合ソフトに付属する描画ソフトやフリーウエアの作曲ソフトの利用もあわせれば開発に新たな費用が必要なく、制作したプログラムは多くのPC上で容易に起動させることができることである。第二点は「物語」のコンピュータゲーム上での表現手法としては、商業的にはアニメーションなど動画が重要になるが、ここでは最も開発時間の少ない簡易な表現として「すごろく」に注目したことである。『すごろく侍』はExcelシート上に作成した40コマのすごろく上をボタン操作によって主人公「すごろく侍」を一周させるものである。今後、このプログラムを援用してさまざまなテーマのすごろくをつくることが可能である。

 続いて行ったアニメーションムービーの開発はflash8professionalを用いた。flashによって製作しサーバー上に公開されたゲームは利用者がプログラムをインストールすることなくブラウザー上で操作することができるようになるため、本研究の目標を実現するものである。作品は東アジアの内陸の農村に育った若い主人公が長い旅の末に大都会に着き、さまざまな経験を重ねた後、農村に還って行く物語である。このあらすじに開発と成長、環境問題そして人間としての成長を重ねてゆく予定であるが製作を継続中である。

 最後に、コンピュータゲーム開発はプログラミングの技能と高い表現力が要求され、また長い製作時間と多額の費用が必要であり、一般の教員が片手間にできるようなものではない。しかし、実験的な作品を制作する少人数の集団へ教員が関わってゆくこと、あるいはゲーム産業と教育界が対話をする機会をつくってゆくことは、追求する価値があることを提言し、まとめとしたい。


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