神奈川県高等学校教育会館

食生活管理能力の育成について

食教育研究グループ
  
  1. 目的
     近年、健康志向が強まる中で「食育」が注目され、大人・子どもを問わず「食生活の見直し」が求められている。高等学校では健康づくりと食生活とのかかわりについて家庭科や保健の授業等を通して学習するものの、日頃、生徒の行動や生活状況を見ていると、自分自身の健康や心身の成長と食生活とのかかわりを意識して過ごしているとは言い難い。そこで、2005年6月作成された「食事バランスガイド」に着目して、小、中、高等学校教科書および市販食品や外食産業における活用状況を調査するとともに、高等学校における教材化と作成した教材を使った授業実践を試み、学校教育等への活用について考察することを目的とした。
  2. 結果と考察
     小、中、高等学校の「家庭」「保健体育」の教科書の「食」に関する記述を調査したところ、「食事バランスガイド」は高等学校「家庭」のみで取り上げられていた。副読本(食品成分表や資料集等)では、多くの記述があることから、今後、小、中学校や「家庭」以外の教科においても記述が増えることが期待される。
     市販食品や外食産業等における活用状況調査は、神奈川県西部地域を中心に実施した。「食事バランスガイド」は、市販食品(レトルト食品等)や惣菜類、食材および1次加工品の包装袋、料理のレシピを記したチラシやポスター、レストランや弁当屋のメニュー表などで表示・活用されていることがわかった。「食事バランスガイド」についての説明不足などの課題はあるものの、食生活の大切さを啓蒙する効果は期待できると思われた。
     「食事バランスガイド」を高等学校の授業で使うために教材化を試み、「バランスのよい食事を構成する力の育成」を目的とした授業資料の作成と高等学校「家庭」食生活分野の授業実践を行った。その結果、食生活に関する意識に変容が見られたことから、自分の食生活についての気づきや食生活の改善に向けた動機付けに有効な教材になり得ると思われた。しかし、実際の食行動の変容に結びついたか否かの確認までは至らなかった。
     以上から、児童・生徒および一般の食生活管理能力を高めるための「食事バランスガイド」の活用方法として、学校教育においては児童・生徒の発達段階に応じた教材の作成や授業方法の検討が必要であり、社会的には更なる啓蒙活動を進める必要があると思われた。
<参考文献>
「『食事バランスガイド』を活用した栄養教育・食育実践マニュアル」
第一出版(2006) 武見ゆかり 吉池信男編


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