神奈川県高等学校教育会館

キャリア教育研究・・・視聴覚機器を使ったキャリア情報の提供について


キャリア教育研究グループ
  1. はじめに
     研究を始めるにあたり、「キャリア教育」とは何かを学ぶこととし、リクルートワークス研究所と日本教育大学院大学の共催による「キャリア教育シンポジウム〜包括的なキャリア教育とチーム体制の推進を考える」に出席した。なお、このシンポジウム関連の資料は、Recruit『Career Guidance』No.8, No.19, No.20にまとめられており、示唆に富むものである。
  2. 「キャリア教育」とは何か。
     文科省の報告書『小学校・中学校・高等学校 キャリア教育推進の手引 −児童生徒一人一人の勤労観、職業観を育てるために−』(2006年11月)<以下、『報告書』と省略>によると、「キャリア発達」の中心は「社会の一員として自立的に自己の人生を方向付けること」である。さらに、『報告書』は、国立教育政策研究所生徒指導研究センターの開発による「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(例)」を紹介している。それによると、児童・生徒が将来自立した社会人・職業人として生きていくために必要な能力や態度資質には、「人間関係形成能力」、「情報活用能力」、「意志決定能力」、「将来設計能力」の「4つの能力」があり、それらが生徒の成長の各時期において身に付けることが期待されるとしている。さらにそれぞれの2つずつの下位能力として、「自他の理解能力」、「コミュニケーション能力」、「情報収集・探索能力」、「職業理解能力」、「役割把握・認識能力」、「計画実行能力」、「選択能力」、「課題解決能力」があげられている。
  3. 「キャリア教育」は、現在の教育にどのように組み込まれるのか。
     以上の定義は、あまりにも抽象的で、実際の学校教育の中にどのように位置づけられるのかがわかりにくい。「キャリア教育」と聞くと、それが「職業観」を養うこと、すなわち、職業調べやインターンシッププログラムの実施などに特化されがちだが、より広く「働くことで自分が何を実現したいか、社会的存在としてどのように生きてゆくのかという大きな視野で押さえることが重要だ」と藤田晃之は述べている。(Recruit『Career Guidance』No.8, January 2005, p.33)さらに、それぞれの学校ごとに生徒や地域の特性に合わせて独自にキャリアの定義づけをするのがよいと述べている。(同、p.32)
     教師一人一人が「キャリア教育」を意識し、これまでの教科教育、生徒指導の中に位置づけることで、今までの取り組みとの連動が図れるとも言える。パラダイムの組み替えこそが必要なのだと気づき、まさに目から鱗が落ちた思いがした。
  4. 生徒へのキャリア情報の提供について
     以上の定義を学び、勤務校の生徒の実態を考えた時、生徒のほとんどが進学するという勤務校の実態を考えると、忙しい教師の時間を削って情報収集、提供するよりも、生徒には、上記の「情報収集・探索方法」を身につけることに力を注ぐことこそ本道であると思うに至った。それは、教科指導・総合的な学習の指導などに組み込まれているし、普段の生徒のもろもろの活動にも組み込まれている。
     もちろん、時間とエネルギーに余裕があれば、進路指導室の充実を図り、各種の情報へのアクセスが便利になれば、これにこしたことはない。だが、実際に、番組の録画・DVDへの保存に取り組んでみたのだが、煩雑な仕事を継続することは予想外に困難であった。結果として、生徒には、生徒自身がアクセスできるウェッブサイト(例えば、『13歳のハローワーク』)、NHK番組(『プロフェッショナル 仕事の流儀』『トップランナー』)などの紹介を折りに触れてすることとした。予算の範囲内で既存のDVDを購入することも考えられたが、あまりにも安直な予算消化の方法であると判断し断念した。
     まさに、試行錯誤の結果、計画倒れになり慚愧に堪えないが、この失敗を生かしつつ、別の方途を探っていきたいと考えている。 
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