編 集 後 記


■ 今号の特集は二つある。 そのひとつは、 昨年の11月に開いた教育討論会の報告である。
 そのテーマは 「現行奨学金制度は支援になっているのか   教育の機会均等の内実を問う   」 というものであった。 日本の大学の授業料は高い。 私立ばかりか、 国立と言ってもそれは名ばかりである。 奨学金を借りることなく、 大学に子どもを進学させることができる家庭は半数以下だろう。 だが、 現在の奨学金は利子付きのローンである。 奨学金を借りた若者は数百万の借金を抱えて社会に出て行く結果になる。 そして厳しい雇用情勢が若者を待ち構えている。 こうした社会の暗い現実に切り込んでいく討論会であった。 この問題の根本的解決はかんたんではない。 だが、 少しでも状況は改善していかなければならない。 そうでなければ若者は救われない。 これからどうこの問題に取り組んでいくか、 重い課題を残した討論会であり、 その報告である。

■ この討論会の報告に関連した論考を二本寄せてもらうことができた。 小林雅之さん 「大学授業料と奨学金の現状と課題」 と湯澤直美さんの 「子どもの貧困への視座」 である。 討論会では高校の教員、 奨学金問題にかかわる弁護士、 組織の中で問題を考えている日本学生支援機構の職員と、 それぞれ現場で奨学金の問題に取り組んでいる方々がパネリストであった。 やはり、 現場とはちがった視点で問題を捉え直すことも必要である。 そういう意味で研究者から寄せていただいた貴重な論考である。 ぜひ討論会報告と併せて読んでいただきたい。

■ 二つ目の特集のテーマは 「大震災・原発災害の中で子どもたちは」 である。 2011年 3 月11日の大震災から 3 年の歳月が流れた。 失われた人の命はもどらない。 破壊された生活はもとにはもどらない。 そして壊れた原発と廃棄物が残った。 それでも人は生活し、 子どもたちは育っていく。 いまそこにどんな現実があるのか。 つねに現実をとらえなおし、 記憶をよみがえらせ、 思いをあらたにしていかなければならない。 この社会が抱えている多様な問題の縮図がそこにあるとも思う。 それを教えてくれる論考をそろえることができた。

■ 海外の教育情報は、 五つの印象深い記事とその解説である。 いま日本の社会が抱える深刻な問題は、 他の国々が抱える問題と重なっている。 教育問題はすでに一国内の問題ではなく、 それこそグローバルな問題である。 そう思わざるを得ない。

■ 今回の 「学校から学校へ」 は、 デートDVの問題について、 学校現場に入って活動している方からの活動紹介をいただいた。 いま教育現場では様々な課題がある。 それを現場の教員だけがかかえこむやり方はもはや通用しない。 学校の外から力をかりなければやっていけない。 それを考える機会になればと思う。

■ 読者のページは今回お一人だけになってしまったが、 幅広く様々な人の声を聞くためには、 このコーナーをもっと拡大していく必要がある。 読者の皆様のご協力を、 編者の力不足を棚に上げてお願いするしだいである。
                                

(本間正吾)



ねざす No53 2014年5月30日発行

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