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自分が動けば社会は変わる

松林 美葉

 私は現在、 教育系NPOで学生ボランティアとして活動させてもらっている大学 4 年生です。 そこで様々な高校生にアンケートなどを取る中で、 先日興味深い話がありました。 「自分が動けば自分の未来は変えられると思う」 という問いに 「とてもそう思う」 「まあそう思う」 「あまりそう思わない」 「全くそう思わない」 の 4 択で答える質問があります。 この質問、 高校生は何と答えると思いますか?読み進める前に予想してみて下さい。 逆に、 読者のみなさんなら何と答えますか?
 答えは、 私が関わったことのある企画の中では、 「とてもそう思う」 「まあそう思う」 と答える高校生が非常に多く、 少なくとも半分以上がそうです。 多い高校では 8 割が 「そう思う」 の回答をしています。 ちなみに、 私は 「とてもそう思う」 と答えます。
 では、 現在、 社会で働いている大人にこの質問をすると何と答える人が多いでしょうか?これは実際にアンケートを取っていないのでどのような結果がでるかはわかりませんが、 「あまりそう思わない」 「全くそう思わない」 と答える人が多いのではないでしょうか。 社会人経験のあるこのNPOの職員さんも、 肌感覚ですがおそらくそのような結果になるのではないか、 と話していました。
 なぜでしょうか?、 学生のうちは 「自分の未来は自分が動けば変えられる」 と思い、 社会に出て大人になるにつれて 「自分の未来は自分が動いても変えられない」 と思う。 なんだかこの質問、 すごく重要な示唆を与えてくれているような気がします。
 私自身の話をもう少ししますと、 私は現在大学 4 年生で、 来年からは社会人になります。 現在はあいた時間を利用して教育系のNPOの活動に参加しています。 と言いましても、 私は今まで教育の勉強を全くしたことがありませんでした。 大学も経済学部ですし、 アルバイトで塾講師などもやろうとしたこともなく、 教育分野とは無縁の学生生活を送ってきました。
 では私が今までどんな勉強をしてきたかといいますと、 国際協力の分野の勉強をしてきました。 私が国際協力の分野に興味を持ったきっかけは、 私が小学生、 中学生のときの先生です。 今でもよく覚えています。 小学生の時、 なぜか音楽の授業で何度も当時放映されていた 『世界ウルルン滞在記』 で特集されていた、 ドイツにある戦争で傷ついた子供たちのリハビリ施設の特集を見ていました。 そのときは、 私が何かしたい、 というよりは、 こんな世界もあるんだということを初めて知った、 という程度でした。 中学生の時は、 社会の先生が何度も戦争のドキュメンタリーを見せてくれました。ルワンダの内戦や国連のPKOなど、 話自体は難しいですが映像はとても衝撃的で、 見終わった後に、 この世界をなんとかしたい、 と思ったのを今でも覚えています。 このように、 小学校、 中学校のときに先生が蒔いてくれた種が、 その後の興味関心とうまく絡み合って今の私があります。 大学も興味を持っていた国際協力の勉強ができる大学を選び、 大学のゼミでは実際にフィリピンで現地調査を行いました。 来年からは金融機関に就職し、 将来は金融の力で世界を変えたいと思っています。
 冒頭の話とも繋がりますが、 みなさんは 「社会を変える」 とはどのようなことだと思いますか。 私は今まで社会を変えたい、 とは思ってきましたが、 社会とは何か考えたことはあまりありませんでした。 でも最近このNPOに関わる中で、 素晴らしい答えを教えてもらいました。 「社会を変えることは、 人を変えること」 だということを。 人が変われば社会は変わる。 今では本当に、 その通りだなと思います。 社会学的には、 人が 3 人集まればそれは社会だそうです。 まずは自分が変わって、 自分がいるコミュニティがよくなったり、 自分が変わる姿を見て、 誰かが変わってくれたり、 そんな連鎖が続いて社会は変わっていく。
 なんだか 「社会を変える」 なんて大それた言葉すぎて、 上記の説明ではあまりピンとこないかもしれません。 しかし、 それでもいつでも当事者として、 自分が動けば社会が変わると思うことができる、 そんな社会であってほしいと思います。 来年から私も社会に出て働きますが、 そう思い続けていたいです。


 (まつばやし みは)

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