特集T 公立高校入学者選抜制度
シンポジウムに参加して
通信制高校から
 
秋 山 英 好
  「違いのある立場の人たちが集まって議論することが大切」。 閉会のことばでの教育研究所代表の中田さんの言葉が大切だと感じました。 今の入試制度についての議論 (高校の現場や組合) では、 一部の定時制高校や通信制高校にしわ寄せが多く、 生徒にとって不利益が生じていることが当然のように語られます。 高校からの意見を 「入試選抜制度検討協議会」 で反映してもらいたいという要望になります。 しかし、 今回のシンポジウムのように様々な立場の人たちが集まると自分たちの考えが当たり前ではなくなります。 会場からの意見で 「一部の定時制高校や通信制高校だけ分割選抜を設定するのは、 差別である」 という発言に対して 「保護者や中学校の立場からは定通分割選抜の設定はとても強い要望です」 というやり取りがありました。
 横浜修悠館高校から見ると、 公立全日制高校と私立高校の入学に関する比率、 6:4 の問題の解決が第一になります。 「各層」 で私立高校へ進学していければ、 この比率も上手くいくのですが、 現在のような経済状況では私立高校への進学は難しい現実があります。 その一方で、 この比率があることで、 公立全日制高校では定員割れが起こりにくくなります。 その結果、 各学校で選抜が成り立ちます。 特色ある高校を作り、 特色ある入試を実施する。 それに向けて中学校も進路指導を充実させる。 生徒も努力をする。 理屈としては今の世の中の流れに沿っています。
 現実として、 最終的に横浜修悠館高校に入学せざるを得ない生徒が数多く存在してしまいます。 通信制高校は柔軟でゆるやかな学習形態です。 前期選抜で入学してきた生徒は自ら 「選択」 をして来たので、 通信制高校の特徴をある程度理解して学習を進めています。 また、 全日制高校ではなじめず、 通信制高校に転入してくる生徒もこの学習形態で元気になってくることもあります。 その一方で、 高校では部活動を中心に、 学校生活を頑張っていこうと考える生徒がいます。 前期、 後期選抜、 二次募集で不合格となり、 本校に入学して来る生徒にとって、 本校の学習形態では目標が定まらず、 欲求不満な状態になります。 入学してから、 友だちを作り楽しく過ごす生徒がいます。 とても楽しそうですが、 自主性が求められる本校では学習が進みません。
 今の入試制度によって、 上記のような現実に横浜修悠館高校はとりまかれています。 「どこの高校でも問題はあるので、 先生方の努力で解決して下さい」 と言われそうですが、 一学年1,250名の定員、 教員は55名では無理があります。 全ての中学生に、 自分に合った進路を保障することが大切です。 様々な立場の意見を総合して、 より良い入試制度を作っていってほしいと思います。 その時に、 是非、 少数の意見を大切にしてほしいと思います。

(あきやま ひでよし 横浜修悠館高校教員)

ねざす目次にもどる