特集T 公立高校入学者選抜制度
シンポジウムに参加して
 
鏑 木 義 永
 私は、 今回中学校の進路指導をしていく立場でこのシンポジウムに参加させていただきました。 今回の入試制度の変更にかかわる中で、 立場の違いからくるさまざまな考え方を知り、 とても参考になり有意義な会であったと思っています。 その中で自分なりにいくつか感じたことを述べさせていただければと思います。
 まず第一に、 シンポジウムでも意見として出させていただきましたが、 やはり進路指導は子どもたちに夢と希望を与えるものであるものだということです。 子どもたちが自分の将来に対し、 夢や希望を語り 「生きる力」 をはぐくんでいくことが進路指導の根本にあるのではないかと考えています。 中学校から高等学校への進学の中で、 高校に入ったらこんなことを頑張って勉強してみたい、 部活や行事に燃えたい、 友達を作り充実した三年間を送りたい……中学生の誰もが感じることでしょう。 そしてそれを実現するために中学校の普段の学習に努力し、 「自分にあった学校」 を選択するために、 高校見学や説明会に参加したりするのだと思います。 ですから現在の制度の中でも重視されている高校の個性化、 特色化は大切な取り組みと考えられます。 したがってそういう子どもたちの活動を、 周囲の大人たちがうまく応援してあげることがとても大切ではないでしょうか。
 第二は、 シンポジウムの中でもいろいろいわれていた面接の評価のことです。 高校の先生方から10分程度の面接では評価が難しいなどという意見が出されて、 面接評価を疑問視する考えも出されていましたが、 どうなのかなと思います。 数字では表現しにくい中学校生活での取り組み (生徒会・学級・行事・部活動など) や、 高校生活への意欲をぜひきめ細かく見ていってほしい、 面接でしか見えない人間性を少しでもとらえてほしいと思うのですがどうでしょうか?今までの選抜制度の中で、 ポイントという形で数字化したことの問題点を意識する時、 ぜひ面接という評価方法を活用してほしいと思うのです。 面接から子どもたちの持つ良さを引き出し、 中学校生活の生き生きした活動ぶり、 高校生活への意欲・取り組みをプラス面として評価することが大切ではないでしょうか。 面接は就活の中でも重要なポイントとなっている現在、 いろいろな活動への意欲などを知る重要な要素として考えられると思います。 結局 「わかりやすさ」 という名目で、 何でも数字化してしまったことへの問題を私たちは考えるべきではないのでしょうか。 人をはかるものさしはたくさんあっていいし、 別に決める必要のないことも多いはずなのです。 ただ数字はものさしとしてはっきりしやすいため、 つい頼ってしまっているのが現状のように思います。
 第三に進路保障の問題です。 入試選抜という形を取る以上、 当然不本意な結果が出ることもあるわけで、 そのことへの対処も大切です。 ひとつはあたりまえですが公立高校の定員枠の拡大を図ってほしいということで、 多くの方の要求でもあるでしょう。 あとひとつは私立高校の問題で、 経済上のことから受験できない家庭も多く見られます。 今、 家計の状況を踏まえての支給などの援助も拡大していますが、 奨学金の増額も含め、 公立高校授業料無償の堅持、 私学助成の拡大は是非必要であり、 強く要求していかなければいけないと思います。
 最後になりますが、 私たちは教育という人を育て、 人の成長を感じていく仕事に携わっています。 その中で人を評価することの難しさも多く感じており、 入試によって人の評価が決まらないこともわかっているはずです。 それならば 「長い眼・広い眼」 で進路について考え、 何が大切なのかを考えていくことが大切でしょう。 一人ひとりを大切にし、 個性を生かし 「生きる力」 を身につけさせていく……そんなことができれば素晴らしいなと今は考えて毎日頑張っています。

 (かぶらき よしなが 横浜市立洋光台第一中学校教員)

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