特集T 公立高校入学者選抜制度
入学者選抜制度の改善方針案について
 
田 中 時 義
 私から、 7 月 4 日にお示ししました 「入学者選抜制度の改善方針案」 について説明させていただきたいと思います。
 昨年 7 月に学識経験者の方々、 学校教育の関係者の方々、 県民代表の方々にも入っていただき、 入学者選抜制度検討協議会を立ち上げ、 選抜制度の改善についての協議をお願いし、 今年 3 月にその協議会から報告をいただいたところでございます。
  1. 検討協議会の報告について

    (1) 基本的視点
     1 点目は、 これまでの本県の入学者選抜制度の理念を踏まえた改善、 基本的には、 生徒の個性や長所に着目をした選抜制度ということを念頭に置こうということです。
     2 点目は県立高校の改革推進計画、 この計画期間は終わっていますが、 今後の高校教育がめざすべきもの、 そういった今後の高校教育のあり方の方向性も見据えて考えていこうということです。
     3 点目は、 新しい学習指導要領が求めている新たな学力の育成、 これを中・高の接続の視点から捉えて改善を進めていくということでした。 ここで示された学力は、 基礎的・基本的な知識および技能、 さらにそれらを活用して問題解決にあたるための思考力、 判断力、 表現力といった力、 さらには主体的に学習に取り組む態度、 いわゆる学習意欲等です。
     以上のような視点を踏まえていこうということで、 協議がスタートしました。

    (2) 現行の選抜制度の課題
     また入学者選抜制度の現状と課題を捉えながら、 特に課題として、 選抜期間の長期化、 前期の不合格者が出て非常に精神的にも負担がある、 そういう中で中学校での指導に大きな影響が出ている、 さらに、 選考基準が複雑化してわかりにくい、 そういった声にもしっかりと対応していくこと。 このような課題の解決も図る方向で検討していこうという話し合いがなされました。

    (3) 提言の具体的方向性
     1 点目には、 新しい学習指導要領が求めるものと中・高の接続の考え方を活かすということで、 全ての生徒に求められる、 共通の基盤となる新たな学力をしっかりと見ていくことが必要であるという視点を据えました。
     2 点目には、 各校の特色に応じた主体性を確保するとともに、 自らの希望に基づく志願を確かなものとする改善を図っていこうという方向性です。
     3 点目としては、 生徒の特性や長所を総合的に評価できる改善を進めることが示されました。 このような入学者選抜制度検討協議会からの報告、 提言を踏まえて、 具体的な方針の検討を進め、 7 月に 「改善方針案」 として示しました。
  2. 改善方針案

    (1) 選抜の機会
     選抜の機会については、 これまでの前期選抜・後期選抜の特性を活かして一体化をしていく形でお示ししました。
     そのため、 全・定・通、 すべての課程で共通選抜の機会を設定する形で整理しております。 また、 定時制、 通信制の課程は、 公立高校における学びを幅広く提供するという観点から、 定時制、 通信制の一部については、 分割の選抜の機会も併せて設定していくことでまとめております。

    (2) 検査のあり方
     新たな学力要素である三つの学力の要素を的確に把握するため共通の検査を設定し、 共通の検査として学力検査と面接を行うこととしております。 共通の検査として行う学力検査は、 これまで以上に思考力、 判断力、 表現力などを測る内容を充実させていくこと、 また、 それに伴い、 独自問題による学力検査については実施しないこととしています。
     また、 面接では、 総合的な学習の意欲といった観点から面接を行うとともに、 生徒一人ひとりの特性や長所を捉えられるような面接を実施します。 その上で、 共通の検査に加え、 各校の特色に応じて総合的な能力や特性を見る検査も設定できることとしております。

    (3) 資料の扱い
     調査書の評定の扱い方については、 これまでどおり中学校 2 年、 3 年生の評定を活用していくこと、 また、 実施した検査の結果をすべて用いて選考をしていくという形でまとめております。 その際に、 各校ごとの取り扱いとして、 学力検査、 面接、 調査書の評定、 必要に応じて実施する特色検査が資料になりますが、 資料ごとに扱う割合を設定することができるようになっています。
     定時制、 通信制については、 それぞれの特性に配慮した検査内容としていくことや、 クリエイティブスクールなど特別な設置趣旨を持つ高校については、 その設置趣旨を活かした選抜を行っていくこと、 こういったことをお示しました。

    (4) 実施の時期
     新しい選抜制度は、 平成25年度の入学者選抜、 現在の中学校 2 年生から実施するという形でまとめております。

    (5) 全日制の選抜の流れ
     共通選抜で募集定員全てを募集していくという考え方で、 検査では、 共通の検査 (学力検査と面接) を実施し、 この学力検査については 5 教科で行っていくことを原則とするという形で整理しています。
     加えて、 各校が必要に応じて実技検査、 自己表現検査といった特色検査を実施できるとしております。 これまでは、 作文等も学校が必要とする検査として実施していましたが、 自己表現検査の一つとして捉えて、 今回は二つにまとめてあります。
     具体的な選考は、 調査書の評定と実施した検査結果、 これらを基に定められた算出の方式を設定して選考するということを考え、 10ページの資料の一番下に数値算出の方法を示しています。 調査書の評定 (中学校 2 年生と 3 年生で、 3 年生については 2 倍した数値を用いる)、 そして学力検査の得点、 さらに実施する面接の結果、 これらをそれぞれを100点に換算した数値を基に、 各学校が定めた比率で合計の数値を算出するという形で示しています。
     選考に当たりましては、 1 次選考は合計数値を基に選考することとし、 2 次選考では、 資料の一部が整わない受検生への配慮を明確化するために、 調査書の評定を用いずに選考できる場面も設定しています。

    (6) 定時制の選抜の流れ
     定時制につきましては、 共通の選抜の機会と分割の機会を設けさせていただいております。 共通選抜の機会では募集定員の 8 割について募集をし、 検査では 3 教科の学力検査と面接という形で示してございます。 それ以外の点については、 全日制の場合と同じような方法で選抜を考えていくことに整理させていただきました。
     その後の分割の選抜につきましては、 共通選抜の募集人員を差し引いた人員を募集する。 共通選抜で募集人員にもし満たない場合があれば、 その人員を加えて募集をするという形で整理をしてございます。 検査については共通の検査として、 共通選抜と同じように学力検査 3 教科と面接を行っていくと整理しています。

    (7) 通信制の選抜の流れ
     それぞれの特性に配慮して検査の方法等についても考えるということですので、 通信制については、 これまで通り面接または作文での選考、 また、 定時制と同様に分割選抜の機会を設けていく形となっています。
     なお、 二次募集につきましては、 これも現行の選抜と同様な考え方で、 それぞれの機会において欠員があり、 必要がある場合には、 それぞれ実施していくと考えています。
 以上のように、 改善の方針案の骨組みを示させていただきました。 現在、 この方針案につきまして意見募集を行っています。 8 月15日までとお示ししてあり、 それらの意見をいただいた上で、 それらも参考にしながら検討を加えて、 この秋に改善の方針という形で改めて示させていただくという予定になっております。
 私からは、 このたびお示しさせていただきました方針案についての説明ということで、 お話をさせていただきました。
  
  (たなか ときよし 神奈川県教育委員会 高校教育企画課長)

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