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生徒たちと一緒に勇往邁進していきたい

篠 崎 優 美

 養護教諭として勤務し始めて 5 年目になりました。 また、 部活の主顧問を務めて 4 年目になります。 部活は、 技術指導からマネジメントや会計まで、 すべてをやってみた年もありました。 養護教諭でありながら部活動主顧問としてあることは、 仕事をする上での大きな悩みでもあり、 やりがいでもあり、 自分のアイデンティティにもなっていました。
  「先生が保健室の先生じゃなかったら、 保健室に行ったのに」 と言って、 部活の生徒が授業をさぼってトイレに隠れていたこと。 主顧問になって 1 年目のことでした。 その生徒は、 部活を無断欠席は当たり前で、 提出物を出さない、 頭髪も何度も染めるなどの基本的な規律ある生活が出来ない子でした。 何回も話をし、 その度にこれからは頑張ると言うのですが、 生活態度は変わらないというようなことが続いていました。 そうこうしている中、 部として大会に出場してみようと提案し、 エントリーするにあたって、 生徒たちの意思を改めて確認したときのことでした。 その生徒も出たいと言い、 これからは頑張ると言いましたが、 何回も同じことを繰り返しているので、 今回は頑張るチャンスを与えるのではなく、 まず、 自分の今までしてきたことをしっかり反省する機会にしてほしいと考え、 その生徒の大会へのエントリーを認めませんでした。 そのことを伝えた後に、 その生徒は、 他の 2 人の部員と一緒にトイレで授業をさぼりました。 そして、 私に 「先生が保健室の先生じゃなかったら、 保健室に行ったのに」 と吐き捨てました。 私自身が養護教諭を目指したのは、 学校生活の中ではみ出してしまった子の一時的な居場所にしてあげられるような空間にしていきたいと思っていたので、 その生徒の言葉は、 まだ新採用 2 年目だった私の胸に刺さりました。 養護教諭になりたくて教員になったのに、 自分自身が一番したい仕事を出来ない状況を作っていることに葛藤しました。 しかし、 学年の先生が 「保健室がだめなら職員室でいいの」 と言ってくださり、 フォローしてくださいました。 そこで、 私は、 気づくことが出来ました。 それは、 はみ出した生徒を受けられるのは保健室であり、 養護教諭が一手に引き受けるべきだと勘違いしていたことに。 学校全体で生徒を見るのだということを、 この件で教えてもらいました。
 ただ、 学校全体で生徒を見る中でも、 特に養護教諭は、 客観的な立場であるべきだと感じています。 私の場合、 部活の生徒との関わりはとても主観的であったため、 その関係の中で客観性を保つことがとても難しかったです。 大学時代の恩師に、 「いくつもの視点を常に持ちなさい」 と教えをいただいたことを覚えています。 物事を多様に捉えることで、 視野も広がり、 客観性を保つ方法になると感じています。 近くにいるからこそ、 あらゆる視点から生徒を見られるようにすることで養護教諭ならではの部活顧問を務めることが、 私のやりがいにつながっています。 また、 ここにたどり着くまでに、 生徒の協力があったことは大きいです。 甘えるところは甘えて、 指導してもらうところはしてもらうというメリハリをつけることが出来る生徒だから、 私が養護教諭でありながら、 主顧問を全うできたように感じています。 今年度の残された時間を、 生徒たちと一緒に勇往邁進していきたいです。

 (しのざき ゆみ 海老名高校教員)
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