シリーズ 『教育現場の非正規雇用』 |
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第4回 再任用教職員 |
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金 沢 信 之 | ||||||||||||||||
はじめに 再任用教職員は正式に任用された職員なのだから、 このシリーズがテーマとしている教育現場の非正規雇用とはいえない。 しかし、 期限付き任用であり、 自動的に任用が延長される規定とはなっていない点などからは、 第 3 回で扱った臨時的任用教職員とともに教育現場の非正規雇用化を特徴づけるものと言えよう。 教職員の雇用を不安定なものにし、 職制の導入 (総括教諭) とともに雇用形態によって階層化された職場を作る一因となりうるものなのである。 さらに再任用の議論を分かりにくくしているのは、 教職員に限らず全ての労働者が直面している公的年金の支給開始引き上げにともなう高齢期雇用のあり方、 本格的な少子高齢化社会が到来する中、 団塊の世代の退職にともなう熟練労働者不足といった課題の存在である。 このような観点からの検討も再任用職員については不可欠なのである。 再任用の前提には定年制が当然あるわけだが、 公務員制度には定年制がかつては存在しなかった。 しかし、 主に地方公共団体の要請を受けて定年制が導入され、 画一的な定年を補完するものとして再任用制度も制定された経緯がある。 そのため、 現在のように年金問題と直結した再任用制度は新再任用制度と呼ばれ従前のものとは区別されている。 本レポートでは過去の経緯も紹介しながら、 この新再任用制度の概要や課題を整理したいと考えている。 (本レポートではこのように再任用制度を新旧に分けている。 また、 通常 「定年」 と表記するが、 資料によっては 「停年」 と表記する場合もある。)
今回でこのシリーズもひとまず終了となる。 シリーズでは全ての教育現場の非正規雇用について取り上げることはできなかった。 学校は教諭、 養護教諭、 事務職、 学校司書、 現業職、 学校警備員、 部活動インストラクター、 校医、 カウンセラーなどの非常勤・臨時的任用の方達によってかなりの部分を支えられている。 同じように仕事をしながら常勤職員とはほど遠い雇用条件で働いている多数の人たちがいることを忘れてはならない。 多分、 雇用システム全体を再構築しなければ非正規雇用の抜本的な解決は不可能なのかもしれない。 しかし、 職の違いを越えてともに働く者同士がお互いを支え合い、 認め合い、 雇用のあり方そのものを変えていく運動を構築しなければならないのは確かなことだと思う。 そして、 現実の小さな課題を見逃すことなく職場で共有し、 職場の中で解決できることは解決する努力も決して忘れてはならない。 今回取り上げた再任用教員についても現場の心ない声が指摘されている。 (注 10に掲げた 「共同時空」 参照) もちろん、 それは常勤職員も多忙化し辛い思いをしていることの裏返しであると思うが、 職場が階層化し疎外感を感じる職員が増加することは、 当然の事ながら教育に良い影響を与えはしないだろう。 新再任用制度が定年延長に吸収されるとしても課題は残る。 非正規雇用の課題が全労働者の課題であることを確認し、 働き方に左右されない安全で安心な暮らしが保障された社会の到来を期待したい。 参考文献 『地方公務員の定年制度詳解』 片山虎之助 ぎょうせい 1982年 『[要説] 地方公務員制度第三次改訂版』 鹿児島重治 学陽書房 1995年 『地方公務員法講義 (第二次改訂版)』 橋本勇 ぎょうせい 2002年 『逐条地方公務員法第六次改訂版』 鹿児島重治 学陽書房 1996年 『公務員の再任用制度詳解』 日本人事行政研究所編集 学陽書房 2000年 『国家公務員の新再任用制度詳解』 佐藤和寿他 ぎょうせい2000年 『地方公務員法の解説三訂版』 竹之内一幸他 一橋出版 2006年 |
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(かなざわ のぶゆき 教育研究所員) |
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