向の岡工業高等学校定時制は総合学科へ
 
萬木 克典

 この依頼を受けた小田原城北工業高校の萬木が、 向の岡工業高校の改変について総括することに いいのかな? という思いを抱いた。 しかし、 04年に後期再編計画が発表になり05年度から新校設置計画を作成、 06年度に新校準備委員、 07年度総合学科生徒第 1 期生を迎え、 その担任と総合学科の運営を担当、 08年度は担任を持ち上がり、 そして引き続き総合学科の運営を担当し、 当然09年度は担任として次年度総合学科完成に向けた運営を担当する予定でいたなど、 3 月まで向の岡工業高校に在籍し、 総合学科運営に携わっていたとのことで、 依頼を受けた次第である。 今年 (09年) 4 月より縁あって小田原城北工業定時制に転勤となった。
 また現在総合学科生徒は三年次生までが在籍、 工業高校生徒も在籍しているなど再編の途中での総括であることをご了承願いたい。

選択科目
方針:必履修科目は最低の単位数になるよう設定。 選択科目は学校設定科目や学校設定教科を基本に考えた。 また既存の教科・科目は選択科目として存続はする。 しかし資格を取得のための工業科目の履修は考えない。 例えは電気科を卒業して企業での実務経験が認められれば第三種電気主任技術者の資格を取得できる。 卒業で第二種電気工事士の学科試験を免除できる。 それらの資格を得るためのカリキュラムは考えない。
方針にいたる経緯:生徒にとって授業がわかる。 授業に参加して楽しい。 そうしたことを考えて、 本校生徒に適した学習内容を創意工夫し、 学校設定科目をできるだけ多く選択科目として設置してゆくことにした。 それで教員全員 2 科目以上の学校設定科目を考案することにした。
総括:一年次では必履修科目の履修がほとんどであったが、 始業前自由選択科目を 3 科目 (全て学校設定科目) のうち 2 科目 4 単位まで履修可能とした。 勉強をしたいと思えば始業前に来て学習をする。 そのような環境は学校での授業に対する意義を考えさせ、 学習意欲を喚起するものであったと思う。
 二年次の始業前自由選択科目 (全て学校設定科目) での最大履修可能科目数は 5 科目で10単位、 三年次も始業前自由選択科目 (全て学校設定科目) 最大履修可能科目数は 5 科目で10単位、 在籍中始業前自由選択科目での最大履修科目数は12科目24単位。 三年で卒業を考える生徒は優先して始業前授業を履修する必要があり、 また前年度またはそれ以前に修得できなかった単位数があっても、 この始業前自由選択科目を履修し修得することでそれを補うことが可能になった。 高校を卒業するためには、 個々それぞれの状況が存在し、 生徒自身が自分の卒業をどのように考え、 授業の履修をどのように計画するのか、 というよりむしろ考えざるを得ないというのが現状であり、 授業に参加する目的や意識が生徒自身の中に芽生えてくるようにも感じた。
 また既存の工業科目を必修選択の科目には置いてはいるが、 今までの授業内容、 展開を考えると学校設定科目での授業を希望するほうが大勢であった。 実際、 学校設定科目を生徒が選択し、 一生懸命作業している姿や、 作品を完成するために、 先生に質問してくる生徒の姿勢は、 教師が授業をしていての充実感を味わうものであった。
 問題点を上げるとするならば、 次のようなことがある。
  • 全日制生徒の終了時間のすぐ後に始業前自由選択授業が始まり、 全日の生徒が掃除をしていたり廊下を行き来したり、 騒がしい状況の中で授業を開始せざるを得ない。
  • 教員の持ち時間数が12時間から14、15時間に増えた。 また来年度は生徒すべてが総合学科となるため工業科の職員定数が総合学科の職員定数となるため減数。 今までと同じ選択授業や内容を展開するならば持ち時間がさらに増えることが予想される。

三年での卒業
方針:本校で展開する授業だけでも三年卒業を実現させよう。
方針にいたる経緯:色々な学校外学修等で単位を認めているが、 それには費用や情報を収集する能力が必要であったり、 それらを具現する知識、 行動力が必要である。 例えば高校卒程度認定試験でいえば 3 科目4,500円〜 9 科目8,500円。 受検会場へのアクセス等。 それらを考えると本校生徒は三年間での卒業が難しくなるのではないか。
総括:基本は始業前自由選択科目の履修である。 最大一年次 4 単位、 二年次10単位、 三年次10単位の履修が可能。 一年次に始業前自由選択科目を履修せず、 二年次になってから思い立ったとしても三年卒業が可能であるように考えた。 三年間で約18、19単位を多く修得すればいいのであるから…。 当然三年次迄で必履修科目の履修は可能。
 その他三年卒業をめざすための本校で展開する授業は定通併修、 実務代替である。
 通信制高校横浜修悠館高校との併修は昨年度から始まり、 単位を修得することができた。 しかし一例ではあるが日本語を母語としない生徒の単位修得は難しかったと感じる。 レポートの提出、 完成ができなかった。 在籍中に最大 3 科目 8 単位履修可能。 スクーリング、 レポート指導は始業前の時間帯で行なわれる。
 実務代替は、 条件整備が整い、 今年度から実施されている。 工業科目実習 4 単位を履修の条件とし在籍中に最大 4 単位修得できる。 昼間働きやすい環境であり、 働くことを奨励している定時制課程。 働くことが生きることであり、 生きる基本の一つが労働であることを感じてもらう教育として、 働くことが単位に認定されることは重要なことと感じる。
 今年度初めて総合学科三年での卒業生が出る。 三年で卒業をしたいと思ったとき、 その願いを叶えられるシステムがあればいいのである。 一年目が終わりに近づき二年目の履修申請が行われているとき私はある生徒にこのように問いかけた。
私  「あなただったら十分三年で卒業できるのではないですか」
生徒 「いいえ四年間かけてゆっくり卒業します」
私  「……あぁ、 そうですね」
そして 生徒さんは自分の人生をきちんと考えてるんだなぁー と思った私だった。

(よろき かつのり  県立小田原城北工業高校定時制教員)
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