前期再編と後期再編を経験して
  平塚中等学校の移行期生徒への対応
 
田中 祥雅
 
移行期を巡って両校全職員で議論
 藤沢北と長後

 藤沢北と長後との前期再編で、 大きな問題の 1 つだったのは移行期である。 これまで別々の学校で過ごしてきた生徒をどうやって 1 つの学校に受け入れるかは大きな課題だった。 両校でさまざまな分野のプロジェクトチームを作り、 教育課程だけでなく、 学校行事のあり方や、 クラスの編成、 部活のあり方などを全職員で分担して検討した。 そして検討した後は、 両校の新校企画委員会で確認し、 その後両校の職員会議に図った。 時間はかかったが、 決まったことは両校の職員の合意事項となり、 それを前提に次の課題に取りかかった。 こういう作業は、 新校の準備と同じくらいの手間暇をかけた。 移行期の生徒に負担をかけず、 それまでと同じ教育を施したいという思いは、 両校の教員にとって同じ思いであったと思う。 平成11年に、 前期再編計画が発表されてから、 移行期に入るまでに 2 年半、 その後、 学校が統合して移行期生が卒業するまでに 4 年間あったが、 その間は大きくぶれずに順調にいった。 統合する前の両校の交流もうまくいったし、 統合して初めての体育祭も、 とても和気あいあいとしたものだったし、 文化祭、 球技大会も上手くいった。 その結果、 最初の移行期生には 「藤沢総合高校 1 期生」 という思いが芽生えたと思う。 端から見れば、 制服も旧藤沢北・旧長後だし、 2 年間は全く別の校舎で学んできた、 何とも言えない中途半端な高校生活に見えるかも知れないが、 彼らなりに満足して卒業していったのである。 それは両校の職員が移行期をどうするのかということを絶えず議論してきたことが大きいと思う。

2校が別の学校として存在する移行期
 大原高校と平塚中等教育学校

 半年前に大原高校内に平塚中等学校が開校したが、 私は前に経験した藤沢総合高校の開校とはいろいろな面で違った感じがした。 それは、 2 校統合型ではなく、 単独改編ということや、 県内初の中等教育学校というためであろう。 特に移行期ということが私には余り感じられない。 大原から平塚中等教育学校の移行期は 5 年間もあるのだが、 その間、 大原高校がどういうふうになっていくかまだ私にはイメージできていない。 減少する生徒に対して、 部活はどうやって存続させるのか、 学校行事はどうやって維持していくのかなどは、 現在進行形の課題として目の前に迫っている。 2 〜 3 年の科目選択にしても、 これから職員が減少していく中でどの程度開講できるのだろうか。
 大原高校では、 再編計画について、 「別の学校を作る」 という考え方で来ているそうである。 大原高校と中等教育学校は別の学校であり、 統合ということではない。 だから、 今は校内では 「大原をどう終わらせるか」 ということをそれぞれの分掌で考えながら動いている。 分掌毎に、 大原がだんだん縮小していくことを念頭に仕事を進めると私は理解している。
 しかし、 移行期を分掌毎に考えてもそれを具現化するのは容易ではない。 他の分掌と絡むこともあるし、 分掌毎の考え方に温度差もあるだろう。 ここ 2 年だけでも、 毎年10名以上の職員が転勤しているのであるから、 どのように考えるのか戸惑うことも多い。 また、 分掌毎に考えたことを企画会議ですり合わせるとしても、 企画会議のメンバーもここ 1 〜 2 年に転勤してきた職員が多く、 これまでの流れを理解した上で移行期を考えるというのは負担が大きすぎないだろうか。
 すでに平塚中等学校は開校しており、 これからしだいに生徒数が増えていく。 2 年後には、 生徒数では大原と並ぶ。 2 校が 1 つの敷地で存在していくためには、 いろいろな面で両校の合意が必要になるだろう。 また、 その後、 大原の生徒数が減少していくが、 大原はどのようにその存在をアピールしていくのか。 最後の大原生は、 平塚中等生に押し出されるように卒業していくことになる。 果たして別学校という考え方でやりきれるのか、 私にはまだ見えてこない。

 移行期間における大原・平塚中等との交流もないわけではない。 しかし、 「両校は別」 という考え方が基本にあるため、 今のところ交流は限られたものになっている。
 再編計画が高校改革の一環なのだとしたら、 現状をベースに変えていくという理念が必要ではないか。 だから、 前期再編を経験してきた私には、 大原と平塚中等が別の学校という考え方には違和感を覚える。 前期再編の際に、 神奈川は東京のような廃校形式にはせず、 あくまでも今までの高校を発展的に統合するスタイルにこだわったはずだ。 それは単独改編でも同じではないかと私は思う。
(たなか よしまさ 県立大原高校教員)
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