編 集 後 記
■今回は昨年12月に行われた教育討論会2008 「貧困の連鎖と学校」 の記録を中心に特集を組んだ。 「もやい」 の稲葉さんのお話と定時制の現状報告が主な内容だが、 石臥所員の 「貧困の連鎖」 が、 学校という場でこの問題がどのようにあらわれているかを明らかにしてくれている。 さらに福祉の現場からも大渕さんに寄稿して頂いた。 若年層に対する福祉政策が問題になっており、 今後、 福祉分野との連携が必要になるのではないだろうか。 大渕さんの文章で触れられているスクールソーシャルワーカーは文部科学省が予算をつけており、 今後の検討課題である。

■独自調査の報告を前号に引き続いて掲載した。 前回が総論で今回は各論にあたる。 あわせてご覧頂ければ幸いである。 私費に関する調査はいささか荷が重かった。 資料の集め方から、 十分な準備なしに始めてしまった、 というのが正直なところだ。 各学校からいただいた資料は貴重で、 利用し尽くしたという感じがしない。 今回の武田所員の論文に引き続いて今後も分析を継続できないか検討したい。 私費に関しては、 学校の関係者以外はわかりにくいので余り注目されないが、 重大な問題をはらんでいると思う。 42,43号掲載の報告から読み取って頂ければ、 と思う。

■日本史必修化問題では、 上杉さんと引地さんの論考に関する意見という形で 5 人の方から文章を寄せて頂いた。 この問題は現在進行形なので引き続きご意見を寄せて頂きたいと思う。

■高校の学習指導要領が 3 月告示された。 さまざまな角度からの論議が必要だと思うが、 まずは学習指導要領の総則だけでも読むことが必要だろう。 見解はいろいろだが、 学習指導要領が、 教育課程の 「基準」 としての役割を担っているのが現実である。 次号以降いろいろなご意見をお寄せ頂ければありがたい。

■映画評の 「青い鳥」 に登場する村内先生には感銘を受けた。 映画も観ないのに感銘はおかしいかも知れないが、 彼が吃音であること、 にもかかわらず (だからこそ) 生徒に届く言葉をもったという点にである。 明晰な声と語り口は教師の資質であるとさえ言われる。
 その対極にいる村内先生の言葉が子どもに届いたとすれば、 教師の資質とは何だろうか。

■ 「教育この一年」 を振り返って、 1 年分の新聞記事を見ていると、 大きな問題がありながら教育現場からの声は聞こえてこないように感じる。 みんな声を潜めて、 発言するとしても内向きである。 小さな場では議論されているのだろうが、 仲間内の議論にとどまっているのではないだろうか。 外に出て意見を言わないと往々にして情緒的な見解にとどまりがちになるような気がする。

■ 「海外の教育事情」 は掲載をとりやめた。 著作権上の問題について指摘を受けたためである。 今後の掲載の方法については、 検討したい。

■成田所員が昨年度限りでお辞めになり、 今年度から養護教諭である山崎隆恵さんに研究所に入って頂くことになった。 保健室からの新たな視点に期待したい。
(永田裕之)

教育研究所員名簿

代   表 佐々木 賢 (社会臨床学会運営委員・元都立高等学校教諭)
研 究 所 員 石臥 薫子 (テレビディレクター・ライター)
井上 恭宏 (神奈川県立修悠館高等学校教諭)
大島 真夫 (東京大学社会科学研究所研究員)
沖塩 有希子 (青山学院大学講師)
金沢 信之 (神奈川県立田奈高等学校教諭)
佐藤  香 (東京大学社会科学研究所准教授)
宗田 千絵 (神奈川県立市が尾高等学校教諭)
武田 麻佐子 (神奈川県立藤沢工科高等学校教諭)
手島  純 (神奈川県立大和西高等学校教諭)
藤原  晃 (神奈川県立茅ヶ崎高等学校教諭)
本間 正吾 (神奈川県立有馬高等学校教諭)
山崎 隆恵 (神奈川県立綾瀬西高等学校教諭)
特別研究員 永田 裕之 (元神奈川県立高等学校教諭)
事 務 局 員 布施 俊子 (神奈川県高等学校教育会館 県民図書室司書)
共同研究員 神田  修 (九州大学名誉教授)
黒沢 惟昭 (長野大学社会福祉学部教授・前教育研究所代表)
小山 文雄 (作家・近代史家・元教育研究所代表)
杉山  宏 (元神奈川県立日野高等学校校長・元教育研究所代表)

(2009年4月1日現在)

ねざす目次にもどる