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格差社会における大学進学の問題について
湘南高校定時制教員 山崎  豊

 1980年代前半は地方出身者が首都圏 (東京) の私立大学に進学する場合、 文系や学費の安い理系の大学ならば、 経済的に厳しくても、 仕送りなしでアルバイトや奨学金でなんとかやっていけた。 しかし、 今はほとんどそれは不可能な状況になっている。 この問題について自分の経験もまじえながら考えていきたい。
 私が仕送りをほとんど受けずに 4 年間でなんとか卒業できたのは次の理由による。 1, 学費がなんとか払える額だった。 2, アルバイトをやっていた。 3, 奨学金を受けていた。 4, 捜せばなんとか 1 万円ちょっとの下宿やアパートもあった。
 1 については、 当時は私立大学といえども、 今と比べれば学費はまだ安かった。 初年度納入額は60万ちょっとだったと思う。 入学時最少納入額については、 経済的に厳しい状況のなかで親に出してもらった。 半期の授業料は17万で、 年間授業料と施設費の合計は42万5100円だったのははっきり覚えている。 2, については、 飲食店の店員のアルバイトをしていたが、 時給は600円〜650円くらいで、 食事もついていた。 3, については、 日本育英会と大学独自の奨学金を受けていた。 そのうえ、 いざとなれば 4 年間仕送りなしで卒業し就職したばかりの兄にお金を借りることもできた。 ただ、 借りた記憶は一度しかないので、 なんとかやれていたのである。 (余談だが、 「出世払い」 ということで借りたのだがその額は忘れてしまったし、 兄からの請求も全くないのでそのままになっている)
 それでは現在の状況を見てみたい。 次のことが大きく変わった。 1, 学費が倍以上に上がった。 出身大学の例で見ると、 初年度納入額の60万ちょっとは2008年度にはなんと125万7900円なっている。 授業料と施設費の合計は42万5100円から91万9000円と倍以上だ。 2 , 親の年収やアルバイトの給料は学費の上昇ほどは明らかに上がっていない。 むしろ、 格差社会のなかで年収200万〜300万の家庭も珍しくなくなっている。 3, 1 万円ちょっとなどという安い下宿やアパートは物件そのものがほとんど皆無に近いだろう。 4, 2008年度の例で見ると国立大学でさえも初年度納入額が81万7800円もかかる。 私が受験生の頃は、 国立の学費は私立とは比較にならないくらい安かったのを覚えている。 こんなに高いのでは地方出身者どころか、 自宅から通える生徒であっても、 国立大学でさえ通う経済的余裕のない家庭は少なくないだろう。 5, 本当に経済的に厳しい生徒は 2 部 (夜間部) に進学するという方法がかつてはあった。 学費は 1 部 (昼間部) の半額程度だった。 しかし、 今は、 2 部を併設している大学は多くなく、 特に私立大学は 「希望者が少ない」 という名目でどんどん廃止させられているという。
 改善策を考えてみた。 1, 学費を下げる 
2, 年収の少ない人の給料を上げるなどの格差社会の是正  3, 奨学金制度の更なる拡充  4, 大学独自の授業料免除軽減制度等が考えられる。
 今回、 私が言いたいことは次のひとことにつきる。
 「生徒本人が優秀であるにもかかわらず、 経済的理由によって、 大学進学を断念しなければならないというのは、 教育の機会均等という意味でも問題である」


  (やまざき ゆたか)
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