編 集 後 記

  • 2006年度は日本の教育が大きく転換する年度でした。 昨年12月に教育基本法が改定されました。 第 2 条に 「国を愛する態度」 という 「教育の目標」 をおき、 生徒に 「愛国心」 を法律で強制するということ、 第16条で 「教育は…この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」 として、 時の政府の思いのままに教育を統制・支配することができるといったこと等々です。  
      さらに、 「教育再生会議」 は、 本年 1 月に第 1 次報告を発表し、 「ゆとり教育」 を見直し、 学力を向上するとして、 「授業時数の10%増加」 といったことを提起しました。
       「中教審」 や 「教育再生会議」 の答申を受けた政府は、 学校種ごとの目的、 目標に 「国を愛する態度」 などを入れ込んだ学校教育法、 免許更新制を導入する教育職員免許法、 教育委員会のあり方を変える地方教育行政の組織及び運営に関する法律 (地教行法) のそれぞれの 「改定」 を強行しようとしています。 教育・学校は大転換を迎えることとなりました。
      こうした状況を 「廉恥」 と題する 「ねざす談議 (30)」 で、 小山文雄さんは 「そのあやしさが私を捕らえて離さない。 それは 『民主主義』 がただ 『数』 に堕しつつある恐れを伴う。 『数』 に堕すると廉恥が失われる」 と述べています。
  • この転換期である2006年度に 「高校改革がもたらすものは?  格差社会の中で学校は  」 というテーマで教育討論集会を開催しました。 「教育改革」 の本質は何かという問題提起で、 この討論会でも、 今、 すすめられようとしている政府・文科省の教育政策が大きな話題になりました。 問題提起者である佐々木代表は 「教育心性操作」 という視点から教育基本法改定の本質を、 本間所員は経済格差の拡大の中で希望を失う若者、 教育の 「民営化」 がさらなる教育の格差を生み出すといった視点から提起しました。 そして教育現場がおかれている困難な状況など、 多くの参加者からの発言がありました。
      本号の 『ねざす』 はこの教育討論集会を特集しました。
  • 1998年の 「中教審答申」 は 「できる限り各学校の判断によって自主的・自律的に特色ある学校教育活動を展開できるようにする」 とし、 校長の資格要件の緩和を提起しました。
      神奈川県にも民間出身校長が採用されるようになり、 2003年に日産自動車 (株) より神奈川県教育庁に宮原紳氏が採用されました。 教育研究所は校長としての感想を聞く機会を得ました。 校長に就任して短い期間ではありましたが、 自主的・自立的な学校運営ができたのでしょうか? 「民間出身校長へのインタビュー」 と題して本号に掲載しました。
  • 教育研究所は所報 『ねざす』 の他に 『神奈川の高校 教育白書』 を2002年まで毎年刊行してきました。 それに掲載されていた教育研究所による 「独自調査」 は、 その後 『ねざす』 に掲載されるようになりました。 他に 「新聞報道ダイジェスト 『教育この 1 年』」 という記事がありましたが、 本号でその簡易版とも言える 「教育この 1 年 (2006.4〜2007.3)」 を新しく設けました。
  • 大学で教育実習を受ける学生を指導している沖塩所員の 「教員養成・免許制度はどう変わろうとしているのか?」 は、 ちょうど国会で論議されている 「改訂教員免許法」 を学習するために時機を得たレポートとなりました。
      「海外の教育情報」 「映画に観る教育と社会」 も 7 回を迎えました。 毎回期待しているという読者からの感想は励みになります。 杉山元代表の 「戦後教育史」 と綿引光友さんの寄稿はいずれも 「技術高校」 問題で 3 回目になります。 併せて読んでいただきたいと思います。
     今号は100ページを越えいつもより厚くなりました。 ご意見をお寄せ下さい。 あわせて寄稿もお願い致します。
(中野渡 強志  教育研究所特別研究員)
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