編 集 後 記

  • 教育基本法 「改正」 を最重要課題であるとして就任した安倍首相の私的諮問機関である 「教育再生会議」 が発足した。 ここでは 「教員免許更新制」 の導入や、 学校間の競争を促す学校評価制度の導入などが話されるようだ。 さらに、 安倍首相は自治体が配布するクーポン券で学校を選択することができる 「バウチャー制」 導入も主張している。 「教育の再生」 のために公立学校に市場原理を導入するということのようだ。
  • 特集 1 「教育の規制緩和がもたらしたもの」 は 「教育再生会議」 の発足を予想してたかのようなタイミングをとられたような内容になった。
      よりエリート校化する中高一貫校は各県で続々と設置されてきており、 神奈川でも2008年に 2 校が開校される。 首都圏ではそれほどめずらしくない中学受験が、 公立の中高一貫校が出現することによって地方でも一様に入り込んできた。 本間さんには出身県である秋田へ取材にいってもらった。
      金沢さんには教育バウチャーとはそもそもなんなのか?その出現の背景や検討状況、 そして学校を市場経済にさらすことによって何が変わるのか、 すでに株式会社によって設置された高等学校の状況を踏まえて論じてもらった。
  • 特集 2 は研究所の2006年の独自調査を掲載した。 県立定時制夜間高校18校にお願いした。 7 月の忙しい時期に 4 学年までの全生徒を対象でのアンケートであり、 結局14校で実施していただいた。 協力に感謝します。
      アンケート集計は専門業者に依頼したが、 集計の段階であいまいな回答は除外されるケースが多かった。 最終的には所員の大島さんがアンケート用紙を 1 枚ずつすべての項目をチェックといった作業をするということになった。 研究者の緻密な分析作業に脱帽した。
      折しも 7 月24日、 県教委は今年の 3 月に卒業した公立中学生の全日制高校の進学率は89.4%と発表した。 この全国でも最低水準といった異常事態に対して 9 月に入って、 来年度の募集計画にあたって、 公立高校の全日制枠を500人程度増やすことを私学側と合意したことを県教委は明らかにした。 当研究所がこの数年間、 問題提起してきたことがやっと微々たるものではあるが改善の方向に向かった。
  • 特集以外は前号からの引き続きの論文ですが、 島本篤エルネストさんから今年の 8 月に神奈川で開催された 「全国在日外国人研究集会」 について報告していただいた。 当研究所でも 「ねざす」 12 (1993.10) で 「外国人教育」 の特集をしたことがある。 「(外国人が) 直面している問題は、 実は私たちの社会の問題」 として引き続き神奈川の教育の課題として考えていきたい。
  • 所報 「ねざす」 などの編集は特別研究員として 1 年単位で学校現場の教員が交替で担ってきた。 今年度からそうしたことができなくなり、 これからは退職した所員が特別研究員になることになった。
(中野渡 強志  教育研究所特別研究員)
ねざす目次にもどる