特 集

アンケートの声から
中 野 渡 強 志

 今回の参加者は全体で50名、 その内アンケートに協力いただいたのは21名であった。 参加者が少なかったのは例年より 1 ヶ月遅い12月の時期であったことや他の集会と日程が重なったことも要因の一つであると思われるが、 この種のシンポジウムの参加者は毎年少なくなってきている。 学校多忙化の中で土・日に出かけて教育のことを考えるのが億劫になっているのだろうか。
 研究所としてもシンポジウムの形態および宣伝についてなどさらに改善していく必要があるのだろう。

◆参加者構成
 年齢では40代、 50代の参加者が多く、 テーマから中学校の教員の割合が高かった。

◆シンポジウムの感想
 アンケートに回答した方は今回のシンポジウムを概ね肯定的に評価していたようだ。 また、 参加者の声を読むと、 神奈川の教育問題とりわけ定時制の問題にはあまり関心がなかったが、 このシンポジウムに参加してわかったといった意見が多く寄せられた。

良かった理由の声をいくつか紹介したい。
・ 現状を知ることができた。 (女性 50代 高校教職員)  
・ 今後どのようにしたらよいか、 考えていく一つのきっかけになった。 (女性 50代 中学校教職員)  
・ 神奈川県全体の教育問題がよくわかった。 定時制の問題もそれほど関心なかったがよくわかった。 (女性 50代 会社員)
・ コーディネーターの金沢さんの進行とまとめがよかった。 (男性 50代 高校教職員)
・ 自分の問題意識を整理する上で役立った。 (男性 40代 高校教職員)
・ 中 3 の息子がいます。 今年はとても関心があります。 しかし、 省みると高校に勤務しながら入試に関して、 知っているようで知らないと感じました。 (女性 50代 高校教職員)
・ 定時制校へのシワ寄せの状況がよくわかった。 大マスコミは全くとりあげていないが。 (男性 50代 その他)
・ 定時制の現実が少しでも伝わったと思うから。 (男性 40代 高校教職員)
・ 立場がちがった人が一同に介して子どものことを考える。 これが方向性をうむと思いました。 (女性 50代 中学校教職員)
・ より事態の深刻化が認識できた。 (男性 50代 高校教職員)
・ 社会のひずみが子どもたちの進路に大きなかげをおとしていることを実感できました。 (女性 40代 中学校教職員)

◆入試問題
・ 神奈川の入試問題では、 多くの参加者から問題があるといった意見が寄せられた。
・ ほとんどの15才が不本意入学する制度だと思う。 (女性 40代 高校教職員)
・ 学区制がなくなったこと、 これはどのような意味を持つのか、 本当に子供たちにとって必要なのか。 (女性 50代 会社員)
・ 全・定同時入試をやめて定時制のみで実施。 (男性 50代 高校教職員)  
・ 今日の定時制の問題を含め高校が直面する多くの問題点を生み出したのは全県一学区の学区制を含めた新入試制度である。 これはあきらかに県教委の失策・失政である。 「15の春を泣かせるな」 で40年前、 高校増設運動が全県・全国規模でおきた。 この教訓に学び、 全県規模で今の入試制度についての検証と一大運動を展開すべきであろう。 そうでないと数年後には大変な事態になるのではないかと危惧している。 (男性 50代 高校教職員)
・ 行政も私学も保護者も経済原理に規定されていると思います。 市場原理に対する歯止めは政治の問題だと考えます。 (男性 40代 高校教職員)
・ 門戸を広げている様で、 実はせばめている。 行きたい高校へ ではなく 行きたくもない高校 へ行く生徒も増えている。 一部の高校、 一部のエリート獲得のための方法を美化しているだけだと思っています。 単純 が ベスト です。 (女性 50代 高校教職員)
・ 入試制度には様々な問題があるだろうが、 定時制や課題集中校といわれる学校の様子を聞くと、 15の春は泣いてもらっていいと思った。 今後はやる気のある者に開くべき。 高校は義務教育ではないのだから。 (男性)
・ 課題集中校が減り、 定時制にしわ寄せがいっている現状が問題。 人的な対応が必要と思います。 (男性 40代 高校教職員)
・ 今の中学生は 「入学できること」 を最優先し、 直接関係ないこと (ex. 試験外教科や評価の取組み) は遠ざけ気味の言わば成果主義をもつ。 勉強をしなくてもわからなくなった自分を責めず、 自分がわからない授業を批判する。 でも、 背景にはかつて生活体験の中から学んできたスタイルが様変わりし、 努力を訴えても自立が極めて困難になってしまった実状あり。 制度は変えられても、 当事者の子どもにとっては 1 回限りのこと。 早急に何とかしないともっと不幸になる。 制度改革提案者自身が責任をとらないことが、 本気で改善しきれぬ一因かも。 (男性 40代 中学校教職員)  
・ 問題だらけです。 全・定同一日程、 前・後期日程、 分裂するクラス、 1 月は全員そろう日がない。 (女性 40代 中学校教職員)
・ 当面できることは何?という一致点をつくって運動を一歩すすめていく。 (女性 50代 中学校教職員)
・ 本当に弱者切り捨てになっていると感じている。 低所得層を直撃している。 (男性 50代 高校教職員)
・ 声を広げて立場をこえたとりくみをしていかなければならないと思います。 ぜひ広告塔になって発信して下さい。 (女性 40代 中学校教職員)

◆ まとめ
 テーマは神奈川の高校入試全般に関わる内容であるが、 コーディネーターの金沢氏から教育研究所の独自調査 「定時制高校から見えるもの」 が紹介され、 問題が絞られたシンポジウムであったように思われる。 参加者からもそれに沿った意見が出され、 アンケートにも定時制問題についての意見が多く寄せられていた。
(なかのわたり つよし  教育研究所員)
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