|
||||||||||||||||||||||||||||
| 「フリーター」 に何を見るか | ||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||
| ◆コーディネーター： 皆さんお集まりいただきましてありがとうございます。
私のほうで、 このシンポジウムの柱を 3 つほど立てました。 1 つ目の柱は現状です。 特に、 大学生、 専門学校も含みますが、 高校生の就職の問題。 その現状がどうなっているのか。 労働市場がどうなっているのか。 これが状況です。 2 つ目の柱は高校生あるいは若者全体の就職意識がどうなっているのか、 ということを論じたいと思います。 そして 3 つ目の柱は 「ではどうするか」 という問題。 いわゆる指導方法、 どのような進路選択があり得るのか、 というところを討論の中で深めたいと思います。 たまたま今日来ていただきました 3 人のパネラーの方はこの 3 つの観点を知っていらっしゃる方々ばかりです。 まず最初に発題いただく小杉さんには、 意識の調査も改革の問題も考えていただきたいのですが、 特に全国状況変化について詳しく、 状況と変化を中心にお話しいただきたいと思います。 2 番目にお話しいただくのは髙田さんですが、 髙田さんは意識の調査を非常に詳しくやっておられます。 3 つ目の柱の 「改革」 についてももちろんお考えいただくわけですが、 特に報告の中で意識の問題をご説明いただきたいと思います。 3 番目は高校現場の小島さんです。 現状がどうなっているか、 小杉さん、 髙田さんの発言を踏まえて、 「現実はこういう問題があるんだ」 というような点をお話しいただきたいと思います。 では最初に小杉さんのほうから発題いただきます。 |
||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||
| こうした移行の変化に伴う若者の就業問題については、 90年代末から 「フリーター問題」
として社会的関心があつまり、 研究のうえでもフリーターの実態や問題点を明らかにする作業が進んできました。
フリーターの就業実態については、 「就業構造基本調査」 の再分析や日本労働研究機構等による調査から、
労働日数、 労働時間については｢半数弱の者は正規雇用者並みに毎日長時間働く｣
(上西,2002)という状況が明らかになっています。 また、 意識の上では、 日本労働研究機構
（2001） は、 3 年後には正社員や自営を望む者が大半であることを指摘し、
「国民生活白書」 （2003） は、 もともと正社員を希望していた者が7割を占めることを明らかにしています。
こうした実態分析を背景にして政策的対応が図られ、 フリーターは政府の 「若者自立・挑戦プラン」
のなかで、 増加に歯止めをかける対象として強く意識されるようにもなってきました。
ここで少し言葉の説明をします。 フリーターの定義は、 「年齢15～34歳、 卒業者であって、 女性については未婚の者とし、 さらに①現在就業している者については勤め先における呼称が 「アルバイト」 又は 「パート」 である雇用者で、 ②現在無業の者については家事も通学もしておらず 「アルバイト・パート」 の仕事を希望する者」 としておきます。 もともとフリーターは一律の定義がない言葉であり、 政府の白書の中でも 「国民生活白書」 では、 「15～34歳の若年 （ただし、 学生と主婦を除く） のうち、 パート・アルバイト （派遣等を含む） 及び働く意志のある無職の人」 として、 2002年段階で417万人と推計しています。 だれをフリーターとよぶかという定義づけの違いによって、 数も大きく変わります。
同時に、 若年労働力の位置づけも変わりました。 フリーターになる確率を属性別にとると、 年齢が若いほど、 また学歴が低いほど高く、 またその傾向は新しい世代ほど強くあらわれています。 同じことが、 失業率にも当てはまります。 すなわち、 若く、 学歴の低い者ほど失業しやすい傾向が強まっています。 また、 最近になって注目されているのが、 学校に通わず、 また就業もしていない無業の若者、 いわゆるニート （NEET） です。 堀さんと小杉で (2003)、 イギリスの政策研究を背景に、 日本において積極的な求職活動していない無業の若者が公的支援の対象としては見過ごされていることを指摘しました。 玄田さん (2004) は、 就職や進学への希望喪失の状態と捉えて、 その急増と格差の拡大を指摘しています。 『労働経済白書』(2004) も非在学で結婚していない若年無業者 （15－34歳層） について集計し、 52万人という数字と増加傾向を指摘しました。 ここでこのニートの話にも少し立ち入ってみます。
◆髙 田：OHPにまとめてありますので、 それでお話をさせていただきます。
第 2 点目。 社会性の確立度のＡ協調性、 Ｂ積極性、 Ｃ社交性は、 非常に高い肯定度です。 60％を超える。 特に多様な進路を取るＣ校群で肯定度が高い。 一番右端をご覧いただきますと、 「自分の役割を果たし、 居心地のよい対人関係を保持しよう」 という傾向で、 非常に優れた側面です。 ところがまずいことに、 先ほど指摘したＣの自信が低い。 Ｄの自立性、 Ｅの目標の設定はやや低いのですが、 自分らしさ、 自分の得意領域を見つけて、 ものごとに挑戦しようという傾向に欠けるところがあります。 社会に対する働きかけの気持ちは強いのだが、 自分らしさが見つからない、 自分自身に対する価値がよく分からない、 自分に対する信頼に根拠がない、 そういったところに第 2 の心理的葛藤があるように思われるのです。 第 3 点目です。 社会性の確立度のうちＡ協調性とか、 Ｂ積極性などは非常に高くなっています。 ところが下の方の 3 つ、 「保護者や社会に積極的に働きかける」 という傾向、 これはモチベーション （意欲） の根源とみてよいと思いますが、 これが低くなっています。 つまり長続きがしない、 ちょっとした困難にめげてしまう、 ということになります。 それはどうしてかと考えてみますと、 「他者に対する役立ち感」 といいますか、 Ｄの 「社会貢献」 が低くなっています。 さらに 1 番下のＦ 「役割遂行」、 社会の中で自分の役割を掴んでそれを遂行しようという気持ちも低いわけです。 これは日本の若者たちの非常にまずい点だろうと思います。 自分の役割を果たして積極的によりよい人間関係をつくりたいと思うのだが、 1 つは自分らしさがよく分からない、 もう 1 つは他者に対する役立ち感が感じられない、 そこにおそらく大きな矛盾を抱えているのではないかと思うわけです。 次に図 2 によって日本の高校生と韓国・中国の子どもたちを比べてみました。 「自我の確立度」 のクラスターが 5 つありまして、 「社会性」 のクラスターが 6 つあります。 一番左側が日本で、 真ん中が韓国、 右側が中国です。 昨年11月にそれぞれの国において、 標本数4,000～5,000件のレベルで調べたものです。
学力レベルでは同レベルで比較しております。 日本の子どもたちは、 韓国や中国の子どもたちと比較して自信が持てないという状況に置かれております。 今、 小杉先生からフリーターのお話がございましたが、 最も重要なポイントは、 いかにして子どもたちの自信を取り戻すか、 これが教育の最大の課題ではなかろうかと思います。 そういうことがこのデータから見えてきたわけです。 いい面もあるわけです。 下のほうのＥ対処性、 すなわち、 少々の困難があっても耐えてやり抜こうとする力ですが、 これは日本は韓国より高い。 中国とほぼ同レベルです。 同じ学力レベルで対処性が高い。 したがって、 少々の困難に耐えてやり抜く力はあるのですが、 長続きしないのです。 ちょっとした大きな壁にぶつかると、 すぐ避けてしまう。 回避するんです。 困難な壁を乗り越えようとしないんです。 どうしてかというと、 一番下の 「社会貢献」 を見てください。 中国と日本とでは、 同じ学力レベルなのに、 「社会や他者のために役立ちたい」 そういう気持ちが非常に低い。 私は自分のためだけに頑張る、 というのは長続きしないと思っています。 誰かのために役立つと思えるから頑張れる。 モチベーションコントロール （持続性） というのは、 おそらく、 他者に対する役立ち感、 役に立った喜び、 これがあって初めて、 少々困難があっても耐えていける力が現実に発揮できるのではないか、 と思います。 そこで 3 つ目の図をご覧いただきたいのですが、 このような子どもが現れてきたのはおそらく1996年頃から、 先ほどの小杉先生の話とぴったり一致します。 就職率が急減するという時期に相当しています。 「どうも最近の子どもたちはおかしくなったぞ」 と高校の先生方が言い始めた時期がちょうどその頃です。 私は1996年 6 月、 富山県の進学校の校内研修会にお邪魔しました。 研修会が済んだ後、 ある数学の先生が 「髙田さん、 ちょっと変わったぞ」 といいました。 「どうしたんですか」 と聞くと、 「今年の 1 年生が入学直後のことですが、 お昼休みに校門の側に集まって弁当を食べだしたんです」 というわけです。 その先生の言によれば、 「こんなところで食べてはいかんじゃないか、 というと、 子どもたちは、“どうして”、 と聞き返した。 校門といえば、 家では玄関に相当するところで、 どういうお客さんが来るか分からんでしょ。 そういうところで弁当を食べてはいけんよ」 といったそうです。 もちろん子どもはすぐ分かるんです。 これはどういうエピソードかというと、 私事と公、 フォーマルな場面とプライベートな場面、 この区別のできにくい子どもたちが生まれてきたな、 という感じがしたようです。
したがって、 単なる大学へのマッチング、 就職先へのマッチングが進路指導だった時代は過ぎたのだ、 とそのとき思いました。 そこで、 先生方と一緒に話をする過程で真っ先に出てきたのが図 3 の縦軸、 時間軸です。 未来を見ようとしない子どもたちに何とかして未来を見させてやりたい、 そこから始まったのが、 いわゆる進路学習の体系化です。 それに 2 ～ 3 年遅れて、 横軸＝空間軸の取り組みが広がります。 自分では自分や家族と友だちのことしか考えられない子どもたちに、 大学とか社会とか見させてやりたいな、 という先生方の願いから、 オープンキャンパスに積極的に参加させる、 職場体験をさせる、 職場訪問をさせる、 あるいは先輩の社会人から、 職業につくことの価値や働くことの意味を語ってもらう、 そういう取り組みが急速に広がったわけです。 縦軸と横軸を合わせます。 何を探らせようとしているのかというと、 それはおそらく公とか未来です。 それを文部科学省は少し遅れて、 総合的な学習の時間でそこをやりたいということで、 今の高校 2 年生から始まったわけですから、 高校現場のほうが遙かに進んでおったということで、 そういった取り組みで、 最も有名になったのが福岡の城南高校のドリカムプランです。 しかし、 ドリカムプランに似たような取り組みは各地の高校の先生方が一生懸命苦労してつくってきたと思います。 それは子どもたちに対する願いの眼差しです。 それを指導として体系化させたのだろうと思っています。 最後のシート、 (図 4 ) に移ります。 これは大学生と高校生につきまして、 将来展望に関する自己概念、 将来展望をどのように描いているかということを、 上の段が高校生、 下の段が大学生ですが、 生徒・学生を対象に調べたものです。
最後に能力・適性に関して、 言い換えれば、 自分の潜在的な成長の可能性を認知できておるかどうか、 という問いかけをしてみたわけです。 高校生に比べてさすがに大学生は高い。 高校生は約 4 割しかいない。 自分自身の持つ可能性を踏まえて将来の進路選択ができると答えた子どもは約 4 割、 大学生も平均すると約 5 割です。 半分ぐらいしかいません。 「そうではない」 ＮＯ！と答えた子ども、 高校生は約 3 割、 大学生は約 2 割です。 したがって、 自分の可能性を踏まえた進路選択ができない、 あるいはできにくい子どもたちは高校生 3 割、 大学生 2 割います。 この高校生 3 割、 大学生 2 割というのは、 未来とか公の世界を見ようとしない、 あるいは見ようと思っていても見えにくい、 そういう子どもたちではないでしょうか。 「不透明な未来より今」 「不確実な社会より自分」 「何の保障もない未来にむけて努力するのは空しい」、 かれらはそういう心象風景を持っているのではないでしょうか。 したがって、 未来に対する意思決定はできにくい。 だから大人になりたくない。 大人になるということは、 社会の中で一定の責任を引き受けるということですから、 大人になりたくないモラトリアム、 「自立しようとしない、 親に依存する、 自由で気楽に生きたい」 そういう子どもたちはフリーターの方向に行かざるを得ない。 そういう子どもたちが高校で 3 割、 大学で 2 割おるとすれば、 学校現場はどういう手を打つことができるのか、 そういう話をおそらくこの後小島先生からしていただけるのではないかと密かに期待しているところです。 ありがとうございました。 ◆小 島 「これからどうしたらいいか」 という問を投げかけられてしまいましたが、 それが分かっていたらとっくにやっていただろうな、 と思います。 現場の先生方にとっては、 私の話すことも同じような学校にいれば、 「ああ、 そうだろうな」 と思うでしょう。 ただ、 現場の人でない方々には、 高校の現状を分かっていただいたほうがいいと思いますので、 若干その現状を話させていただきます。 私の勤務している学校は、 進路先多様校といっていいかと思います。 就職決定者が大体30名前後いる学校です。 この30という数のある学校というのは、 専門学校が60名から70名ぐらい、 進学のほうが40名ぐらいになるのではないかと思います。 未定者が50名から80名ありますので、 フリーター輩出校とも言えるかもしれません。 実際に進路指導として、 とくに就職希望者に指導していく場面では、 5 月に就職希望の子どもを集めると大体70名近くいます。 そのまま何もしないで推薦まで持っていけるかというと、 その前にそれなりのハードルを越えてもらわなければいけないということで、 例えば、 面接マナー講習会、 就職適性検査、 説明会、 といったものがあります。 すると、 その過程で大体20名弱の者が脱落します。 夏休みに入って、 複数見学ということで、 1 人 2 社以上の企業に見学に行けるわけですけれども、 実際に見学に行くのは30数名に絞り込まれてしまうという現実があります。 今年は求人数も若干増えていて、 10％から15％ぐらいの増という感じだと思いますが、 そういう状況にあっても生徒のニーズに合った求人票は来ていません。 生徒が喜んで選べる求人票というのは数に限りがあります。 それでも 9 月に入り実際に応募するわけですが、 その前の推薦会議において希望のところを受験できるとは限りません。 その時にどうしても学校推薦の 「推薦」 という言葉に釈然としないものを感じます。 企業側が学校に推薦してほしいと、 推薦枠１名が決まっている場合は、 どうしても受験者をしぼりこむことになります。 私は学校は斡旋すればそれでいいと、 もうずっと前から個人的には思っています。 その推薦というときに、 どうしても成績と欠席日数で決めなければならない。 適性で、 という話がいろんなところからあります。 就職慣行システムの見直しで、 学校推薦のあり方を考えろ、 いろいろなご指摘はありますけれども、 親御さんたちを一番納得させることができるのが、“より客観的に見えるもの”ということになるんです。 どうしてもそこにこだわらざるを得ない。 そういう状況では、 成績が悪くて欠席の多い子は 「これは無理かな」 ということで、 自動的に離脱していくことになります。 ですから、 統計上の内定率というのは、 文部科学省と厚生労働省が出している数字で、 一方は89.0％、 片方は92.1％と出るわけですけれども、 就職希望者に対する内定率ですから、 途中で脱落した子どもの数字は入っていないわけです。 最初の段階の希望者ということで行けば、 現実はもっと厳しい状況にあるというところです。 本校で2003年 3 月に卒業した185人が 1 年後にどうなっているかを調べてみました。 その結果を紹介します。 大学へ進学した子どもが19人いました。 その19人は、 1 年後、 そのまま卒業を目指すということで頑張っていました。 短大に進学した18名はそのまま頑張っているのが14名いました。 4 名はすでに退学していましたが、 退学したその 4 名は、 その後、 親にお金をかけさせたからということでアルバイトをやっているのが 3 名、 療養中というのが 1 名でした。 専門学校へ行った子どもは58名いました。 そのまま卒業を目指すというのが44名、 専修学校へ行った子どもですでに卒業しているというのが 2 人いまして、 専門学校で退学したのが11名います。 残りの一名は連絡が取れていません。 退学した11名中 7 名はバイト、 後の 4 名は無職・家事手伝い・契約社員・就職活動中各 1 名という状況となっています。 私は就職担当ですから、 次の項目が一番気の重いところなのです。 就職したのは34名おりました。 継続しているのが17名です。 17名中、 これからも続けるつもりが 8 名、 辞めるつもりが 4 名、 分からないが 5 名。 すでに退職しているのが12名いて、 その内訳はアルバイトをやっているのが 6 名、 家事手伝いが 2 名、 正社員・契約社員・資格取得中・専門学校などがそれぞれ 1 名、 連絡のつかなかった者が 5 名となっています。 最初から未定で終わったのが56名いまして、 そのうち14名ほどの消息が分かりませんでした。 非正規雇用についている者が24名、 無職が 3 名で、 後は進学・浪人・就職活動中というような状況です。 卒業後の離職率が 「七五三」 という話があります。 本校では 1 年、 2 年経ったところでそれに近い状況にあるわけで、 就職してもそれを継続していくことができない。 状況を聞いてみると、 先ほども言われたことですが、 末端業務でサービス残業を強いられて、 身体がボロボロになって、 これ以上続けていられないよ、 そういう話を結構多く聞きます。 就職してもどこまで体力が保つか、 個人の忍耐力がないといってしまえばそれまでかもしれませんが、 現実問題としてそういったことも多々あるということです。 今の子どもたちがアルバイトに戻るときに、 元のアルバイトに戻っているケースが多くて、 交通費が出ないために、 自分の住んでいる地元のアルバイトに行くわけです。 それで、 高校時代のバイト先に戻っています。 みんな、 実はそういう状況があります。 本校の場合、 3 年の10月段階で、 アルバイトをしていたのが65％ぐらいいたとおもいます。 10月ですから、 ふつうならバイトを辞めて試験の準備をしていてもいいような時期ですが、 そういう状況にはなくて、 みんな週に 4 日から 5 日、 6 日とほぼ毎日アルバイトをしている状況です。 それが進学先やら就職先に 1 回移行して 1 年後にまた戻ってくる現実なのです。 学校というところはよく、 進学実績だとか、 進路実績というところで、 学校の評価が決められる部分があるのですが、 数値で、 就職は何名いました、 と実績だけを言っていても、 1 年後には元に戻っているケースが非常に多いということです。 そういう状況ですから、 学校のほうでどうしたらいいのか、 先ほど高校生の意識のほうを“これからどうするのか”と問われてしまいましたけれども、 学校というところは自分に自信を持って、“ポジティブになれ”みたいにいうところがあるんです。 ですが正直、 夢を追えるかな、 というのが実感としてあります。 実際に就職活動をして、 求人票を見たとき、 自分の夢を持っていけるような求人がなく、 現実とのせめぎ合いの中で、 希望を下げていって、 これなら我慢できるな、 というようなやり方をうちの子どもたちは一生懸命やっています。 よくやっているなと思います。 ファッション系の会社を 2 回受けて落ちて、 ボロボロになって、“どうしよう”と言って泣きついてきた子どもですが、 その子が立ち直って、 個人面接を何回もやっていって、 それで、 一昨日、 いや昨日だったかな、 やっと受かりました。 電話を掛けてきてくれたのですが、 ボロボロに泣いていました。 本人にしてみると、 ものすごく努力したという気持ちがあるのだと思います。 実はいま、 学校現場では色々なプログラムを考えていると思います。 総合的な学習の時間や、 ロングホームルーム、 総合学科でいえば 「産業社会と人間」 において進路学習をおこなったり、 インターンシップを実施してみたりということはいろんな学校で進んでいると思います。 ただ、 現実的に例えば 「自己理解」 というようなそういう場面に本当の意味で遭遇するのは、 もしかしたら出口指導の場面かな、 と最近思うようになりました。 模擬面接の場面が特にそうだと思います。 「入ってくるときは、 こう入ってきて、 こちら側から座って、 志望の動機を言ってください」 といった一通りのことだけをやって終わる模擬面接だと、 そうはならない。 そういう模擬面接ではあまり意味がないと私は思っていますが、 その場でいろいろ突っ込んであげて、 どんどん掘り下げていくと、 例えば、 自分の長所短所の言えない子どもが、 「これはどうなの、 ああなの」 と訳を聞いてあげることによって、 自己理解が深められて 「もしかしたら、 それ、 私の長所だったんですか」 というように気づく場面があります。 その子に 「じゃあ、 これ 2 年のときにやっていたらどうなの」 と聞くと、 「 2 年のときなら、 話を聞いていないで寝ているよ」 といってお仕舞い。 ですから、 せっぱ詰まって実際にそういう場面に遭遇したときに、 やっと分かることになります。 それを模擬面接で私はやっています。 そこでやるのは遅いな、 という感じはしますけれど、 先ほど、 将来が見えない、 未来が見えない、 という話がありましたが、 時間の流れが分からなくて、 確かにうちの子どもたちも 3 年後のことなんか考えていない。 せいぜい 1 週間ぐらいのレベルで考えているので、 「バイトのスケジュールを組んじゃった。 何で先生、 今日は 6 時間目まであるの。 早退させて」 と言ってきたりします。 そんなに長いスパンではものを考えていません。 そういう子どもたちにどう関わっていくか。 プログラム的にはいろいろやりますけれど、 実際に、 身に迫ったという印象がないと彼ら、 彼女らが動くのは難しいのかなと思います。 早くそういう状況に追い込むというのも変な話ですが、 なかなか厳しいかな、 という感じです。 このところ“インターンシップ、 インターンシップ”と喧しく言われています。 専門高校ではかなりやっていると思います。 今はそれを全日制普通科で、 という話になっていますが、 インターンシップを高校生の段階でやるといったときに、 何を目的として、 どういう効果を狙ってやるのか、 ということを考え出すと非常に難しいですね。 しかも、 受け入れ企業がいくつかの学校を受け入れているとすると、 学校ごとに目的が違っていたら、 それぞれにプログラムを変えなければいけませんから、 企業側も厳しいのではないかと思います。 県内の企業の78％ぐらいが10人未満の事業所だと思います。 大半は中小企業で大手企業はほんのちょっと。 中小企業の受け入れのための人的配置は無理だと思います。 専門高校がもう受け入れ先を決めているという状況にあって、 普通高校がお願いしますといったときＯＫが出るかといえば、 正直、 厳しいかなと思います。 本校で考えているのは、 NPOとの連携で職業人を学校のほうに呼んでしまうということです。 これも今までにいろんなところでやっていると思うのですが、 本校の場合は、 生徒のマナー指導など、 事前指導をやって、 企業に行かせるのは多少厳しいかな、 というのが職員の雰囲気です。 ですから校外に出すというとなかなかＯＫが出ない。 そこで逆に学校に職業人を招く形を考えたのですが、 そういうときみんなを体育館に集めて 1 人の偉い先生が来て講演をするといっても、 誰も聞いていません。 講師の先生が怒って帰っちゃうだけです。 それではクラス単位でやったらどうかといっても、 本当に受け身ですから、 多分聞かないでしょう。 1 クラス40人で、 そこで話をしてもらうのは、 体育館でやるよりはいいと思いますが、 それでも聞かない。 1 年生は 8 クラスありますから 8 人呼んできて各クラスで実施というのも、 結構厳しいとおもいます。 そしてその 8 人を呼ぶというのも実はすごく大変で、 保護者を使って集めるという、 そういったやり方をするところも実際にありますが、 それで集まるかというと、 それもなかなか厳しい。 方法論として一番はじめに考えるのは、 専門学校の協会や進路関係業者にお願いするという安直な方法があります。 業者が職業人を呼ぶのは赤字企画ですから、 やればやるだけ損をします。 専門学校を呼んでなんぼ、 ですから、 その企画は多分無理だと思います。 あるところで、 「うちもやりましたよ」 というから聞いてみたら、 20人呼んでいる中で職業人は 3 人しかいない、 そういう状況でした。 だとすると、 専門学校の協会にしても同じような結果になるかと思います。 職業人をもっとも集めやすいのはNPOかと思い、 私の学校で11月29日、 職業人20人を呼びインタビューズ会を行います。 1 教室にブースを 4 つ造りまして、 そこに職業人を配置して、 生徒を 5 ～ 6 人ずつのグループにして、 インタビューに行かせるということをやろうと思っています。 結構、 準備は大変だったんですが、 メイクアップアーティストやモデルとか、 俳優とか、 いろいろな職業の人が来るというので、 もしかしたら面白いかな、 と思っています。 ただ、 まだやっていないので、 どうなるか、 全然見えません。 業者系の人も興味があるというので見に来たい、 と言い、 他のNPO団体も是非見てみたいというので、 結構外部の方が来るそうです。 ここにお集まりの皆さんも、 ご希望があればお出かけください。 そういう企画をやって、 なるべく異世代の人と話をさせてということを念頭に置いてやっています。 ですから、 あまり若い人でも困りますし、 また、 年を取った人だと説教されるだけで話になりませんから、 その辺り微妙なところがあるんですが、 外の人と話をするようなことを狙いにしたいと考えています。 もちろん、 それですぐいろんな効果が出てくるとは考えられません。 多分、 そうは簡単に行かないと思います。 いくつかそういったものを仕掛けていって、 1 人でも、 2 人でも、 何か気づく子どもがいればいい、 その繰り返しかな、 と思います。 ですから、 キャリア教育とはどういうものだろう、 望ましい職業観は何か、 というようなことは学者に任せておいて、 実践の場面でどれだけ生徒に考えさせる場面を与えることができるか、 が勝負だと考えています。 結果は何年後かに出るか、 出ないか、 それも分かりませんし、 すぐに出る子どももいるかもしれません。 しかし、 それをずっと続けるしかないのかなと思っています。 実は私の尊敬する人で、 現場の教員だった、 すでに退職した方がいるのですが、 「進路指導は賽の河原の石積み」 という方がいました。 ともかく積んでは壊され、 積んでは壊されだけれど、 その繰り返しをやっていくしかないよね、 というわけです。 私もその気持ちがありますが、 ともかく少しずつでも積み上げていくしかないのかな、 と思っています。 今のところでは言いたいことはたくさんあるのですが、 時間がありませんので、 ここで終わりにいたします。 ◆コーディネーターどうもありがとうございました。 現場の厳しい状況が具体的に出ているように思います。 ここまでのお三方のお話で分からないところがあれば、 簡単に答えていただきたいと思います。 フロアのほうでご質問のある方がおりますか。 ◆市民小杉先生へ、 現実の問題として、 大学院生など、 学歴があってもスキルがなければ就職はできないのではないか。 また、 離職率の 「七五三」 を少し具体的に説明してほしい。 フリーターとニート合わせて450万という数字だが、 文部科学省はこれにどう対処しようとしているか。 小島先生へ、 進路指導に際して親はどう関わっているか。 ◆小 杉高等教育に進学したからといって、 企業への就職の道が開けるわけではないと思います。 実は高等教育の中で学校間格差、 学部間格差はものすごく大きくなっています。 産業界の需要があるかないか、 はっきりしています。 今買い手市場ですから。 そこで、 何故、 買い手、 即ち企業側から要請され続けるかというと、 それが果たしてスキルのせいなのかどうか疑問です。 皆さんよくダブルスクールとか言いますね。 確かにそれがスキルに関わりを持ちます。 しかし、 スキルそのものが買われているかというと、 スキルを身に着けようとするその努力を買ったりします。 産業界では、 相変わらず 「やる気」 が重要視されています。 離職率 「七五三」 のことですが、 元々雇用保険のほうでつくっている統計です。 それでずっと昔に遡ることができますが、 たとえば 4 割が 5 割になったという程度のことで、 増えていることは増えていますけれど、 大きな違いではないと思います。 たまたま 4 年生大学卒の男子だけが辞めなかった。 つまり、 雇用条件を良くして企業が 4 大卒男子を確保していた、 ということだったのです。 離職率 7･5･3、 一般に失業が増えているところは問題だと思いますが、 (中略) 辞めること自体はそんなに大きな問題だとは思っていません。 問題は辞めた後にあります。 たとえば卒業後アルバイト、 アルバイトしかやっていなかった人が中途採用の試験に応募しようとすると、“アルバイト経験しかない”ということが評価されないということのほうが問題だと思います。 辞めることそのものの問題よりも、 転職市場が整備されていない、 職業経験を評価する軸がないということのほうが問題だと思います。 ◆小 島就職に関する親の関わりについてですが、 高校によっては、 保護者対象の 「保護者進路説明会」 というのを実施しているところもあります。 正直言って、 1 つ上のレベルの学校だと思います。 私の勤務している学校では、 去年こんなことがありました。 渋谷にヤングハローワークという施設がありまして、 月に 1 回 「オープンスクールデイ」 といった高校生向けの施設を開放がありましたが、 それと並行して一般の人向けに講演もやっていました。 そのときはたまたま玄田有史さんがそこへ来て話をするということだったので、 聞きに行きました。 そのときは何名か生徒も連れて行きました。 その参加を学校で呼びかけた折りに、 PTAが委員会をやっておりましたので、 「こういう人が来てこういう話をしますが、 行きませんか」 と声を掛けました。 そのときはみんなにこやかに 「いいですね」 「いい企画ですね」 と言っていながら 1 人も来ませんでした。 それなりの意識はあるのでしょうが、 なかなか来てくれないんです。 簡単な話、 大学の入学願書がありますね。 親御さんが、 お子さんの入学願書の書き方や何やらを見て、 チェックしているかというと、 ほとんどしていないのが現実です。 まっさらなまま持ってきて 「どう書くのですか」 という感じが多いので、 親御さんもそういう細かいところまでは関わっていないんじゃないかと思います。 生徒の進路先について親御さんが関わってきたケースで考えさせられたのは、 短大に行くといって、 ずっと面接やら何やら一生懸命やってきて、 段取りができたときに 「悪いけれど、 お金がないから止めなさい」 というものでした。 そういう厳しい現状はあります。 ですから、 親御さんの意識も変えていかないと、 うちに来ている子どもたちなんかはなかなか厳しいのかなと思います。 悲しいのは、 受験間際になって、 「彼氏をつくって遊んでいるから、 お前は進学させない」 という状況も起こってくることで、 親御さんが自分の子どもの将来をどう見ているのかというところにも不安はあります。 それから、 文部科学省の関連で言うと、 たとえば 「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み」 などといって私どもにも示されたりして、 文部科学省も関わってやってくれていると思います。 先ほど話のあった 「若者自立・挑戦プラン」 という 4 府省連携プランで、 文部科学省は最初この連携プランの予算を分捕ったように言っていたんです、 かなりの金額を。 ただ見ていると、 縦割りの部分があって、 ある研究会で話をしたときに、 厚生労働省系の研究会であれば、 文部科学省に関わる予算にはあまり触れないでほしいというニュアンスが出てきます。 縦割り的予算配分になっていて、 中学や高校は文部科学省の枠の中にありますから、 ここに厚生労働省の予算が入ってきて何かやるというのは、 難しいという部分があると、 という気がします。 それを言うのは何故かというと、 今回、 NPOと一緒に企画を実践しようという時に、 NPOはボランティア団体というわけではないので、 その辺り世間が誤解しているところがあるように思いますが、 「NPOは安くやってくれる」 というイメージがあるわけです。 でも、 NPOだって、 ある程度の稼ぎがなければやっていけないわけですから、 それなりの予算立てを一回示してもらうことになります。 しかし、 その予算立てを示してもらうと、 学校の予算では普通できません。 そういう金額になります。 それを交渉の中で、 うちはここまでしか出せないから何とかして、 という交渉をして、 何とかやってもらう話になりました。 かなり無理があります。 1 人の方に来ていただくのに、 東京から来ていただいて、 払えるのは 1 回 2 千円もありません。 それぐらいの金額です。 3 時間メニューでやりますが、 1 時間目に約10人来ます。 次の時間に 8 人来ます。 3 時間目に職業人を20人ほど呼ぶわけです。 スタッフも来ますので、 延べで約40人来てもらうことになります。 そういう状況で 1 人 2 千円払えないということで、 NPOには本当に申し訳ないと思っています。 そういうところで、 NPOにもう少し出せる予算にしてくれるといいと思います。 大学のほうのキャリア教育にはもう少し予算が出ているようですが、 中高のほうでもそういうところを改善してくれたらと思っています。 ◇コーディネーターありがとうございました。 ここでまたフロアの方に渡したいと思います。 ◇県立高校教員タイトルに惹かれて参加した。 「フリーターに何を見るか」 ということだが今までのところ、 現状の報告、 問題提起に終始している。 「何を見るか」 のほうに入ってもらいたい。 高校 3 年の担任だが、 29人の生徒のうち14人が進学・就職希望で、 残りはフリーターという状況にある。 お話のあったインターンシップの実施、 自己理解の推進、 キャリア教育の推進をやってフリーターは減少するだろうか。 青少年の問題を心の問題と関連づけて説明、 解説する風潮にあるが、 個々人の心がけでフリーター問題が解決すると考えるのは幻想ではないか。 ◇市民今の意見に同感。 背景に産業構造の変化があるとの指摘がされたが、 教育のほうを改善しても、 構造が変わらなければ問題は解決しないのではないか。 ますます減少する正社員をめがけて多数が殺到する図を是とするのではなく、 第 3 の道ともいうべき道を社会が用意するのが先決なのではないか。 ◇県立高校退職教員インターンシップの話があったが、 本県で先駆的にこれをはじめたのは私の学校だと自負している。 自分たち自身、 今、 働くことに価値観を見出せていないのではないか。 生徒が高校を卒業するまで、 あるいはもっと長いスパンで、 労働者としての権利、 労働の意味や喜びについて教えることが必要ではないか。 教職員組合がもっと社会的な力を発揮し、 人材の確保・紹介・斡旋などで社会貢献すべきではないか。 ◇コーディネーター 3 人の質問意見をお聞きしました。 ここでまたパネラーにマイクを戻しますが、 3 人に共通しているのは、 「フリーターに何を見るか」 ということを明確にしてほしいということ、 さらに、 正社員に就職することが目標となるかということ、 だと思います。 小杉さんのお話では、 正社員の枠は 7 分の 1 に減っている、 その減っているところに押し込めるのがわれわれの目的であるか、 もう少し別の道、 就職する、 就職しないとは別の第 3 の道を探る時期に来ているのではないか、 それを明確にすること、 そして、 フリーターがわれわれに何をもたらしているのか、 われわれの存在そのものと関わる問題ではなかろうか、 という問でございます。 ◆小 杉これからのキャリア教育のありかたを考えていかなければならないでしょう。 若者に対して提供するサービスとしては、 就職斡旋や教育訓練機会への接続、 さらにキャリア形成をサポートするガイダンス・カウンセリング、 情報提供や就業体験などの機会の提供が考えられます。 また職業・労働の範囲を超えた文化活動などの体験をとおしてソーシャル・ネットワークを拡大するプログラムや、 とくに雇用機会のかぎられた地域では雇用にかわるオータナティブとしての社会参加が必要になります。 「就職する、 しないとは別の道を探る」 といういまのお話とも、 あるていどつながると思います。 さらに学校教育の充実と同時に学校以外の社会化装置による補完的支援も必要になるでしょう。 不登校や中途退学といった学校への適応の失敗は、 あとあとまで個人のキャリア展開の障壁になります。 家庭もまた十分に機能をはたすことができない時代になっています。 学校以外の組織が、 学校生活への適応をサポートしたり、 ソーシャル・ネットワークを広げる機会を提供して、 逸脱を引きとめ、 職業準備をすすめる援助をしたりすることは、 有効であると思いますし、 また必要だと思います。 いずれにせよ、 学校だけでキャリア教育をすすめて就職というかたちで卒業生を社会に送り出せばいい、 そんな枠組みではすまなくなっていることは確かだと思います。 学校や家庭をサポートするシステムを作っていくことが重要になってきていると思います。 そのためには公的資金を投入していくことも必要になっていくと思います。 ◆髙 田今、 学校の先生たちが遭遇している非常な苦しみといいますか、 社会構造そのものに根ざす問題点というのは確かにあると思います。 それを否定するつもりはまったくありません。 しかし、 1990年代以前の企業の状態を思い起こしていただきますと、 教育システムはおそらく家族と会社連合の教育システムだっただろうと思います。 わが子の教育は親の責任だ、 したがって子どもをしっかり育てよう、 そういう家族主義です。 それから、 日本の企業の特質で、 中小企業が特にそうですが、 仕事・仕事場に優れた教育があったと思います。 学校をドロップアウトした子どもが実際に就職してみて、 いい仕事を見つけて、 生き生き成長していったという例がたくさんあったと思います。 今の大人の世界がそういう時代だったのかな、 という気がしています。 ところが、 90年代の後半から、 小杉先生のお話にもありましたように、 失業率が非常に増えるとか、 求人倍率が落ちてくるとか、 そういう事態が起こってきて、 どうも成功モデルが見えにくい状態になってきました。 子どもに教育投資をしても、 親父より豊かになる保障がない。 私は企業人ですけれど、 企業は長期的経営戦略を立てにくい時代になっています。 短期的な経営目標は、 当然立てていますが、 10年のレンジで経営戦略を立てなさいと言いますが、 とても今は無理な状態です。 したがって、 企業内教育システムが解体しているわけです。 象徴的なのは、 リストラをすれば株価が上がるという現象です。 要するに、 首を切れば株が上がるという、 これは象徴的だと思います。 そういう厳しい状態に置かれている。 したがって、 家族と企業の連合体による教育システムというのはもう崩壊したと見ていいでしょう。 それでは、 新しい動きはどこに出てきているか、 というと、 例えば、 東京の足立区です。 これはPTAではなく、 PTCです。 Ｃというのはコミュニティです。 学校と保護者と地域連合の教育システムを創ろう、 ということです。 このとき、 コアになるのは、 やはり地方自治体だと思います。 地方自治体がおそらくその 3 者連合の要に相当する、 ということでしょう。 そういった成功モデルを先生方と一緒に創らなければ、 子どもたちをフリーターから取り返すことはできないと思います。 社会構造的に就職が厳しい、 夢を持てといっても持てない、 壁を乗り越えたって何があるというんだ、 という疑問や不満はあるでしょう。 しかし、 その原因を他者に帰属させたら、 学校教育はますます厳しい状態になるでしょう。 先生方がお忙しいということは重々承知の上で、 申し上げるわけですけれど、 元気のいい子どもたちを育てるために一緒に考えていくべきじゃないでしょうか。 そのときのコアになるのは、 PTAではなくてPTCではないだろうか、 というのが私の 1 つの仮説でございます。 ◆小 島一番言いたかったところにやっと触れてくれたな、 という気持ちです。 今回、 フリーター問題でシンポジウムを持つというのは、 ちょっと遅いな、 という気持ちがあって、 玄田さんがニートを出してきたから言うわけではありませんが、 今日のテーマが 「ニートに何を見るか」 というのならよく分かるという印象でした。 フリーターに問題はないかといえば、 確かに、 問題はあるけれど、 例えば、 うちの生徒を見たとき、 正社員希望で就職指導を受けて、 試験を受けると落ちてしまうんです。 学校にいる間、 ずっとアルバイトをやって、 遅刻が多くて、 欠席が多くて、 当然成績が上がりません。 しかも、 人間関係のもつれで 1 年のときに学校に来られなくなったという経験があったなどという場合、 3 年をどんなに一生懸命やっても、 採ってくれません。 どれだけ面接を一生懸命やっても採ってくれない。 そういう状況があるわけで、 そういう子どもたちに、 「何が何でも正社員になれ」 と言い続けられるか、 というのが現実だと思います。 最終的にその子どもたちが決まらなくて、 アルバイトになっちゃったというときに、 まさか、 「アルバイトはいけない」 とは言えないでしょ。 「フリーターは悪い」 とは言えないですよ。 ただ、 フリーターが一番弱い立場にあるということは分かってほしいと思います。 それは現実として、 そういう状況があるということを本人たちに伝えてあげなければいけないんだろう、 それがわれわれの義務でもあるから、 と思います。 その後に 1 つ思うのは、 アルバイトから正社員化というのが非常に難しい、 というお話があるので、 それもそうかなとは思いますが、 「どうせアルバイトをやるのなら、 核になるアルバイトをやってほしいな」 ということで、 それが私の願いです。 パートさんでも核になるパートさんと、 核にならないパートさんがいる、 という現状がありますね。 それと同じで、 アルバイトだって、 核になるアルバイトをやってある程度責任を任せられるアルバイトだったら、 自己実現できるのではないか、 という気がどこかでするんです。 せめてそれを求めるしかないかな、 というのが正直なところです。 いろんな企画は練ります。 しかし、 それでフリーターがなくなるとは思いません。 これだけ働き方が多様化している現状にあって、 もうできてしまっているのですから、 一気にフリーターもアルバイトもなくなるなんていうことはあり得ないと思います。 以前、 厚生労働委員会に呼び出されて、 「高校現場として、 こういうような多様な働き方をどう思いますか。 先生はどう思いますか」 と聞かれたことがあります。 「これはもう戻らないでしょう。 だから、 この雇用形態に対して条件整備を整えて、 働きやすくすることが重要で、 これは高校現場の話ではなくて、 もっと上のほうの話だと思います。」 と答えました。 ですから、 よくあることですが、 経済界の人たちが集まってフリーター問題をやると、 高校現場の責任になります。 高校生の資質の問題、 能力の問題、 先ほどのエンプロイアビリティの問題とか、 そういう話で終始してしまいます。 それで、 高校の教員が集まると、 経済界のほうの産業構造が変わっているからだ、 という話になります。 両方が噛み合ったことがありません。 まあ、 それはそれで噛み合わなくてもいいけれど、 お互いにやっていかざるを得ないのですから、 あるのは仕方がないという前提で、 それをどういうふうにいい方向に持っていくか、 それぞれの分担の責任でやるしかないかな、 と思っています。 ◆コーディネーターありがとうございました。 ちょうど時間です。 しかし、 聞き残したところがまだ多々あるように思います。 論じられていない点がたくさんございます。 最後にここだけは聞きたい、 これは重要だ、 というご意見がありましたら、 ご発言いただきます。 ◇県立高校教員昨日と一昨日、 内閣府の男女共同参画エコ会議に参加してきた。 分科会で、 学校でのキャリア教育も問題になったが、 「学校の教員にそんなことはできない」 という意見が圧倒的だった。 教員には転職の経験がないからだ、 という。 転職やパート・アルバイトの経験のある人を学校へ呼ぶ場合、 どんなところに注意が必要か。 ◆髙 田私は高校の教員から民間企業へ転職しましたが、 転職の経験がないからキャリア教育ができないというのは、 キャリア教育への誤解があるのではないかと思います。 キャリア教育というのはアメリカで始まったわけですけれど、 日本的に理解すれば、 自分自身の能力とか、 適性とか、 資質を引き出し、 それを開発する、 というプログラムのことです。 従来から先生方が高等学校で行ってきた進路指導の延長線上にあると私は思います。 したがって、 いろいろな経験をした人を呼んで、 子どもたちに話を聞かせたり、 あるいは子どもたちに実際体験させるといった取り組みはとても大切だと思います。 しかし、 それは、 学ぶことの意味とか、 働くことの価値とか、 そういう価値観をしっかり身に着けさせることが重要なキーワードなる、 ということだと思っています。 ◇コーディネーター：ありがとうございました。 もう時間が過ぎております。 私はコーディネーター役でしたが、 本当は意見を言いたかったのです。 それを抑えに抑えてきましたので、 最後に 2 、 3 分時間をいただいて、 感想をさせていただき、 それで終わりにしたいと思います。 （以下略、 内容は次の 「シンポジウムを終えて」 に譲ります） |
||||||||||||||||||||||||||||
