神奈川の04年度入試を考える 金 沢 信 之 |
|||||||||||||||||
はじめに 7 年間続いた複数志願制・総合的選考・推薦入試などを軸とする神奈川の高校入試が04年度入試 (移行期・05年度完全実施) より、 前後期選抜・自己推薦へと変更になった。 総合的選考のようにこれまでの仕組みを引き継いだ部分と複数志願制のように新入試には継承されなかったものとがある。 同一校志願の増加が複数志願の仕組みと矛盾し、 第二希望校への合格が不本意入学につながるといった弊害が指摘され続けたこの制度が廃止されたことは当然の成り行きであった。 本レポートでは04年度入試がどのように実施され、 何が問題であったのか。 さらに、 受検状況にはどのような特徴があるのかなどといった分析を行った。 概要はだいたい次の通りである。
1. 応募状況の分析・全日制を中心に 1) 倍率の推移・取消者 ここ数年、 公立高校の入試実質倍率は上昇を続けている。 1.15倍 (01年)、 1.19倍 (02年)、 1.24倍 (03年)、 1.32倍 (04年) といった具合である。 さらに、 推薦入試は2.15倍 (01年)、 2.35倍 (02年)、 2.66倍 (03年)、 2.73倍 (04年)とかなりの高倍率で推移してきている。 04年度入試からはこれまでの校長推薦が自己推薦型となり、 志願者数もかなり増加した。 このように高倍率が続く理由は最近の経済状況にあることは確かなことだ。 今後、 劇的に経済状況がよくならない限り、 公立の高倍率傾向は続くと考えられる。 また、 新制度への移行期でありながら倍率が微増したのは絶対評価の導入によって内申点が上昇したことによるのかもしれない。 (複数志願導入年度は制度への不安から私立受検が増加し公立高校の実質倍率が前年度を下回った。) さらに、 公立志向の強まりは志願変更後の欠席・取消率の下落にも示されている。 特に、 欠席・取消率の大きい横浜北部と川崎北部についてその変化を見ると、 前者は15% (01年度)、 16.7% (02年度)、 12.6% (03年度)、 8.9% (04年度) と減少傾向にあり、 後者も15.4% (01年度)、 16.3% (02年度)、 11.7% (03年度)、 8.2% (04年度) と減少傾向にある。 割合はピーク時の半分近くまで下がった。 実数ベースだと横浜北部は00年度が504名だったのに対して、 04年度は170名となり、 およそ三分の一まで下落した。 川崎北部は00年度が534名であったが、 04年度は123名とおよそ四分の一以下まで下落している。 2) 全日制普通科高倍率校・低倍率校 < >内はコース名、 ( )内は倍率 全日制普通科の前期高倍率校は上位校が多い。
全日制普通科前期低倍率校には専門コース制の学校が多く、 複数コース制の設置を行った前期再編該当校も含まれている。 課題集中校も含まれている。 また、 専門コースを設置している各校の一般コースは全て専門コースの倍率を上回っている。 例えば、 有馬 (3.38)、 磯子 (2.6)、 六ツ川 (2.58)となっている。
後期高倍率校も前期と同様な傾向を示しているが、 前期ほど顕著なものではない。 (倍率は志願変更前) 課題集中校も含まれている。
後期低倍率校も前期と同様な傾向を示しているが、 1 校を除いてその他は全て専門コース制である。 (倍率は志願変更前)
後期低倍率校でも前期と同様に当該校の普通科一般コースは上矢部 (1.52)、 六ツ川 (1.77)、 磯子 (1.74)、 生田 (1.62)などとかなりの高倍率となっており、 一般コース志向は強い。 中学 3 年の時期に、 あたかもその後の進路選択に直結するような印象を受けるコースの選択は子ども達にとって困難なのかもしれない。 もし、 コース選択が難しいのだとすれば、 専門コースと一般コースのハードルを低くして、 例えば募集はコースと一般をくくりで実施するとか、 入学後に科目選択の状況でコース選択者とみなすといった柔軟な取り組みも必要になっているのかもしれない。 あるいは、 専門コースを多様な選択の中に収斂しいくことを考える時期に来たのかもしれない。 3) 2次募集の倍率 (志願変更前) 全日制の 2 次募集の平均競争率は3.93倍であった。 前年度は2.85倍であったので極めて大きな上昇といえる。 最も競争率が高かったのは白山<国際教養>の13.8倍であった。 前後期で低倍率が際だっていた同校の専門コースが最高倍率になったのはなんとも皮肉な状況である。 なお、 全日制普通科に限ってみると、 県全体で90名の募集に対して342名が応募している。 342名は40人クラスおよそ 9 クラス分に相当し、 6 クラス規模校1.5校分に相当する。 3 月になっても行き場のない子ども達が高校1.5校分存在していたということは、 公立志向の強まりを示すと共に、 不安定な気持ちに苦しむ大量の子ども達と保護者、 進路指導に苦労する中学校教職員の存在を浮き彫りにしている。 2. 定時制の混乱 1) 繰り返された定時制の混乱 02年度入試では県内初の昼夜間三部制・総合学科として開校した横浜高校の第 1 回選抜で約600名が不合格になるという事態が生じ、 県教委・横浜市教委・川崎市教委で緊急措置を実施したことは記憶に新しい。 この時、 横浜総合高校は全日制と同日程で入試を実施したのだが、 04年度入試からは全ての定時制高校が全日制高校と同日程で入試を行うこととなり、 定時制志願者の動向が大きく変化することが予想されていた。 懸念は現実の事態となり、 04年度定時制入試は予想を超えた混乱となった。 入試の混乱は定時制の生徒・教職員の日常を極めて困難なものにしている。 (これについては本誌所収の手島氏の論考を参考にされたい。) 2) 県内公立中学校卒業予定者の進路希望状況 03年10月20日実施 03年度中学 3 年生の内658人 (卒業予定者総数に対して1.0%) が定時制への進学を希望していた。 前年度 (現高校 1 年生) は429人 (卒業予定者総数に対して0.6%) であり、 この時点で、 04年度入試は定時制希望者が増加していることが明らかになっていた。 横浜総合高校で混乱を生じた02年度の新入生に対する01年度調査では、 定時制希望者が605人 (卒業予定者総数に対して0.9%) であり、 00年度の327人 (卒業予定者総数に対して0.5%) から大きく増加していた。 数値だけをみていると、 本年度の状況が02年の状況と似通っていたことが分かる。 3) 県内公立中学校卒業者の定時制高校入学状況 03年度は1635人であり、 02年度は1924人であった。 もちろん、 実際には他年度卒業者や県内公立中学校卒業者以外の子ども達・社会人も合格するので実際の入学者はこれより多い。 04年度入試では後期の合格発表が行われた時点で、 合格者は1780名、 不合格者は161名という状況であった。 合格者と不合格者を合計すると1941名となり、 不合格になった子ども達が 2 次募集で再度定時制を受検すると考えると、 既にこの時点で02年度の公立中学卒業者の定時制入学者と本年度定時制希望者がほぼ同数になっていたことが分かる。 さらに、 ここに全日制を不合格になった子ども達が受検をするのであるから、 02年度以上の混乱になることがはっきりした。 事実、 新学期 4 月に前例の無い 3 次募集まで実施する事態となった。 既に 2 次募集は募集締めきり時点で平均1.35倍の高倍率となっており、 県教委は横浜・川崎を中心に 7 校で115名の募集定員拡大を行ったが、 それでも行き場の無い中学生が存在したのである。 (定員を増員したものの、 志願変更後、 希望ヶ丘は2.86倍、 横浜翆嵐は1.19倍であった。) 結局、 2 次募集合格者が602名、 3 次募集合格者が25名、 前後期と合わせて2407名もの合格者数となった。 03年度合格者2128名を大きく超え、 あの02年度合格者2370名をも超えるものであった。 4) 全定同日程入試から見えること 前期の志願者は1046名、 3 次募集までの最終的合格者が2407名。 定時制への入学を当初より決めている人数が前期の志願者数と考えれば、 前期志願者と最終的合格者2407名の差となる1361名は定時制を当初希望していなかった可能性がある。 受検が前期から後期へ、 そして 2 次募集へと進行する中で希望を変更していった可能性を否定できない。 全日制の志願者は前期で不合格になった場合、 後期も受検すると考えるのが妥当であろう。 04年度は前期の不合格者は31087名であった。 後期の志願者は32102名であり、 3 %ほどの増加はあるものの、 不合格者とほとんど同数の子ども達が後期も受検したと考えられる。 これに対して、 定時制では前期の不合格者が768名であり、 後期の志願者が1046名となっている。 後期は前期不合格者に対して300名程度の増加になっており、 36%の増である。 増加の割合が全日制より大きい。 この増加分は、 前期で公立を全く受検しなかったか、 全日制の希望を定時制に変えたかのどちらかであろう。 しかし、 全日制では前期に相当する日程で私立 (第一希望や滑り止め) を受検し、 後期で公立を受検するケースが少数あったと聞くが、 高校進学を考えるのであれば、 定時制後期のみの受検にメリットは無い。 そう考えると、 さしあたって前期では全日制を受検し、 全日制が不合格の場合、 後期で定時制を受検しようとする層が存在するように思えるのである。 全定同一日程の入試は定時制を全日制の序列構造にしっかりと組み込んでしまったのかもしれない。 定時制の混乱を少しでも緩和するためには全日制の募集枠拡大しかないだろう。 3. 様々な混乱 1) ミスの続発 (日程と調査書の点数化) 合否判定ミスは横浜南陵高校で後期選抜に向けて選考資料を再確認した際に発見されたのが始まりだった。 美術コンクールの入賞歴が点数化されておらず、 2 回の点検でも見落とされたという。 (2/19 神奈川)県教委はこれを受けて全県立高校に合否判定の再点検を指示する。 その結果、 県立高 5 校 (各校 1 名) と市立高 ( 1 名) で合格とすべき受検生を不合格としていたことが判明した。 合否にかかわらないミスも17校43人にあった。 (2/21 神奈川) 県教委はその後、 教育長・教育部長・各校の校長ら270名に及ぶ大量処分を行う。 県教委は大量ミス発生の原因について 「日程的無理とマニュアルの具体性の欠落」 などをあげ、 マニュアルの改訂と合否判定にかける期間の長さを検討するとした。 ( 3/27 朝日) 今回の大量ミスの発生にはいくつかの原因が考えられる。 第一は、 自己推薦型となり校長推薦のハードルが消えたことで、 各校の志願者が増加したこと。 前年度の推薦入試では 1 校平均190名程度だった志願者が約300名まで増加した。 (2/21 朝日) 調査書提出から合格発表までの日数が二日延びたとは言え、 スケジュールの厳しさがミスを誘発したことは否定できないだろう。 さらに、 1 月は多くの学校で 3 学年の卒業試験やセンター試験・大学一般入試への対応、 次年度へ向けての準備など校務が多忙になる。 そして、 この時期に生活指導の問題が発生すれば、 身動きが取れない状況になるのは必至である。 指導上の難しい問題が発生すれば、 当該の生徒に対する面接、 様々な会議、 家庭訪問、 具体的な指導など多くの教職員が緊急の対応を迫られる。 教職員の仕事が多岐にわたる中、 入試業務に専念しなければならなくなると、 在校生への指導が行き届かなくなる可能性が否定できない。 大学のように入試事務局を設置しなければ円滑な業務遂行が難しくなってきているのではなかろうか。 第二は調査書を点数化する際に各校が作成した基準の複雑さと、 書式が同じであっても中学によって表記の仕方が異なる調査書を読み取る困難さである。 例えば、 部活動の大会成績を見落として合否判定ミスのあったある県立高校では、 様々な項目ごとに点数配当が決められており、 運動部の部活動実績だけでも次のような基準になっていた。 このような基準のあり方はこの高校に限ったことではない。
調査書を点数化する基準は全ての公立高等学校について約800ページにも及ぶ冊子で事前に公表されている。 (04年度入試については03年度10月には完成していた。) つまり、 前期入試については当日の面接・実技などの評価以外は事前に点数として確認が可能な仕組みなのである。 では、 何故このような基準が作成され、 複雑になっていったのか。 調査書を読み取るという作業は03年度まで続いた複数志願制度の総合的選考の中で始まった。 教育委員会はこの入試を開始する際、 基本的な視点を次のように説明した。 生徒一人ひとりの個性や能力、 適性を多面的にとらえ、 調査書の評定や学力検査などのいわゆる数値のみではなく、 生徒の特性や長所に着目した選抜制度とすること。 (波線 筆者) これを受けて、 具体的な選考方法の中には次のように記載された。 次に、 調査書の評定・学力検査の結果及び調査書の評定以外の記載事項を活用して総合的に選考し、 30%の合格者を決める。 (第 1 希望は志願者の80%の選考を行い、 その中で70%は調査書の評定と学力検査の結果によって決定する。 筆者注、 波線筆者) この仕組みは前期入選を中心に04年度入試にも踏襲された。 生徒の特性や長所を細かく見て基準を作成しようとすればするほど、 複雑なものになりやすいのである。 面接や評定で差がつきにくい状況があれば記載事項の点数化で判断をする以外になくなるのも現実ではなかろうか。 そもそも 「数値のみでなく」 と調査書の記載事項を活用する仕組みにしたのに、 結局は記載事項を数値化して選抜を行うというのは本来の趣旨からズレているとも思うのだが。 教育委員会も現場は数値化しなければ選抜が実施できないことを認めざるを得なかったのであろう。 そして、 一番問題なのは調査書の記載事項を点数化することにある。 この根本問題を問うことは緊急の課題である。 (ねざす26号所収の本間氏の論考 「推薦入試を考える〜内申書の問題を中心にして」 に詳しい。) 複雑化する調査書読み取りから発生するミスを防止するため、 教育委員会は次のような対応をとった。 (6/30 記者発表) @中学校においては、 調査書記載事項の内容確認の徹底を図る。 A高等学校においては、 選考基準の一層の明確化を図るともに、 選考の過程において調査書記載事項に明らかな疑義が生じた場合には統一した対応を図る。 B教育委員会としては、 調査書の記載が適切になされるよう、 様式の変更や記載内容例の周知などの改善を図る。 明確な選考基準と記載事項の内容がしっかり確認された調査書の読み取りとなれば、 現場の負担も軽減され、 ミスが減ることは期待できる。 しかし、 教育委員会は、 絶対評価が入試に利用されることに対する県民の不信感を解消するための方法の一つとして 「より一層総合的選考の趣旨を生かした選考を充実することとし、 調査書の評点のみで合否が決定されるような選考基準の見直しを行います。 (波線筆者)」 とした。 調査書の評点のみの合否判定とならない工夫が読み取り基準の複雑化を生じさせたのではないだろうか。 もちろん、 教育委員会としては適正な範囲での読み取りを各校に期待してのことだとは思うが。 また、 評点以外の記載事項に合否判定のウエイトが移行すれば、 教科外活動を含めた中学生の学校生活全てが入試の合否判定資料となる事態が一層進行し、 学校生活は息苦しさを増すのではないだろうか。 絶対評価問題も発生し、 現行入試制度の仕組みは実際の運用がますます困難の度合いを深めそうである。 2) 調査書と自己PR書 自己PR書は選抜 (面接) の参考資料であり、 実際の選考資料である調査書とは性格を異にする。 この自己PR書と調査書で記載に相違があったり、 部活実績などで記載もれがあったことが明らかになった。 あくまでも参考資料であり、 今回の入試では高校に照合義務は無かったものの、 県教委の調査によると21校で268名の食い違いが入試の際にみつかり、 各校が中学に確認作業を行った。 さらに、 後日教育委員会が県立高校全体に行った調査では56校622名の食い違いが判明した。 合わせて、 77校890名の食い違いであるが、 合否には影響しなかったと報告された。 (朝日 5/15) このような不備が生じた背景の一つは、 前期入試導入に伴い、 これまでも激務であった中学の現場がさらに多忙化したことにある。 自己PR書は本人が記述したものとなっているが、 実際は中学で添削指導が行われている場合が多い。 さらに、 前期で面接を受ける生徒が増加し、 面接指導も増加した。 また、 前述した高校側の複雑化した調査書読み取りの要求に中学側の調査書が応えきれない状況となり、 結果として不備を招いたとも考えられる。 (朝日 4/29) 今後、 自己PR書と調査書の照合が義務づけられると、 高校現場にとっては新たな作業となる。 限られた日程の中で照合し、 疑問点を中学に照会する作業が増える。 もし不備があれば、 正しい調査書と差し替える必要も生じるだろう。 様々な作業が増加する。 中学は激務のままである。 高校も仕事が増加する。 もし、 自己PR書の内容と調査書の内容が重複するのであれば、 自己PR書そのものを見直して仕事量の緩和を考える必要があるのではないか。 書式や記載責任者が違って同じ内容の書類が存在するのが無意味だからだ。 自己PR書を簡略なものにはできないだろうか。 さらにもう一歩進んで、 中学は入試前に調査書を生徒・保護者へ開示する仕組みがあっても良いのかもしれない。 記載内容が合否に大きく影響するのであるから、 その内容を本人が確認する必要があるし、 間違いがあれば訂正を要求する仕組みも必要なのかもしれない。 もっとも、 中学現場の多忙化はさらに進行することが容易に想像でき、 単純にこの方向を支持できないのも事実である。 3) 絶対評価問題 02年 9 月に公表された入学者選抜制度・学区検討協議会第 1 次報告 「入学者選抜制度の改善について」 によって新入試 (移行期も含めて) から絶対評価が記載された調査書が使用されることとなった。 (04年度入試では 3 年次のみが絶対評価) 報告には以下のような文面がある。 調査書の評定に絶対評価を活用するにあたっては、 より一層、 評価の公平性と信頼性を確保することが不可欠であり、 評価基準を事前に公表することや評価内容について中学生や保護者に充分な説明を行うなど、 評価基準と評価内容の明確化が図られることが重要である。 しかし、 「評価の公平性と信頼性」 の確保は充分には達成できなかった。 たとえ各中学校内では問題が無くても、 各中学校を比較した際に不自然な評定の分布があったとされ、 それが合否に大きな影響を及ぼしたと入試の最中から大きく報道され厳しく批判されたのであった。 合否判定公平性に疑問 評価基準に学校間格差 (一部略) 県立高の入試制度が今春から、 前、 後期に分けて実施されたが、 選抜資料の絶対評価は学校間で格差が大きく、 合否判定に公平性を欠いていることが二十三日、 神奈川新聞社の調べで分かった。 前期選抜 (一月二十六、 二十七日実施) で絶対評価を最大のよりどころとに選考した県立湘南校の場合、 中学によって合格者がゼロから十一人までばらつく不自然な現象が起きている。 教育現場からも 「入試の序列基準にはふさわしくないと」 疑問が噴出、 県教委に見直しを求める動きが強まりそうだ。 (湘南高の前期選抜) 一方、 十人が受検して合格者ゼロ、 五人中ゼロ、 十六人中一人、 十五人中一人など不振を極めた中学校もある。 こうした中には、 高学歴の住民が多い地域特性から学力の高い生徒が集まると定評のある中学校も含まれる。 前期で学区内の難関上位四校のすべてで合格者がいなかった中学も。 (2/24 神奈川新聞 波線筆者) 混乱を招く選抜への乱用 解説 (全文) 絶対評価を付ける、 当の中学校側がこぞって高校入試資料に絶対評価を活用するのは 「ふさわしくない」 と述べているのに対し、 県教委は 「中学が出した内申を信頼する。 絶対評価の使用に全く問題ない」 (高校教育課) と言いきった。 絶対評価は、 各教科、 それぞれ観点別評価の目標が全国共通であり、 学校によって差が生じない。 確かに理屈がそうでも、 現実には目標の達成度に教師の主観が入りやすい。 中学校間で評価に著しい格差が生まれ、 教科によって 「 5 」 を付ける生徒の割合が六割を超える学校がある一方、 5 %程度にとどめた学校もある。 理屈通りにはいかない評価をそのまま入試に活用させること自体がむりであった。 今回の入試改革は 「個に応じた選抜機会」 として前期選抜は学力試験を伴わなかった。 学力を中心に選考したい湘南高は、 絶対評価の内申点が合否に直結した格好だ。 同校に限らず多くの高校が前、 後期選抜を通して絶対評価は合否判定に大きなウエートを占めている。 相対評価に比べ、 指導と評価がなじむ絶対評価にクレームをつける教師はほとんどいないが、 入試に活用されると、 本来の理念から逸脱し、 自校の生徒が不利にならぬよう、 教師の私情で誰にでも甘い インフレ評価 になりかねない。 来春から県立高の学区が撤廃される。 絶対評価はその地域の学校間だけでなく地域間でも格差が大きく、 このまま客観性のない絶対評価が用いられると、 混乱が大きくなるのは必至だ。 県教委は、 不利益を受けたと疑問を抱く受験生やその父母らにも説明責任を負っている。 今春の入試に使用された絶対評価の学校間格差の実態を示す資料を公表し、 公平な入試になるようただちに見直すべきだ。 (2/24 神奈川 波線筆者) 記事にあるように、 前期選抜では調査書の評定が合否に大きく影響する。 それが、 教科によっては各中学校ごとに大きなバラツキがあることが指摘された。 しかし、 中学校間でバラツキのある絶対評価を各校ごとの配分が近くなるように指導し是正したら、 相対評価に限りなく近くなる。 教育委員会も積極的に指導する考えはないようだ。 (5/31 神奈川) 県教委は評価のつけかたに学校間で大きな差があると指摘されたことを受けて各中学へ聞き取り調査を行った。 各中学は、 「生徒のやる気がでた」 「少人数学級の成果」 「二年次の評価が厳しいとの保護者の声」 などが反映して 「 5 」 が増えたと返答している。 (5/29 朝日) 各中学の評価基準は 「国立教育政策研究所教育課程研究センター」 の報告 (評価規準の作成, 評価方法の工夫改善のための参考資料―評価規準, 評価方法等の研究開発(報告) 02年 2 月) を参考に作成する場合が多いようなのだが (参考にしていない状況もありそうだ。 5/29 朝日)、 それを教育委員会が把握し、 実際の評価の状況を検証することはできるのだろうか。 もし各中学の評価を検証するのであれば、 学校ごとの基準を踏まえた上で日常の教育活動との関連にまで遡る必要があり、 現実的なこととは思えない。 結局は「 5 」が増えたことについての中学の見解を信じるしかないだろう。 さらに、 教育委員会は全県の評定平均分布から上下10ポイント以上の格差がある場合を 「特異な分布」 と認定し、 県内の各市町村教委にこうした評定をつけた中学を調査するよう通知を出した。 (5/30 朝日) 結局分布が問題になる以上、 評定の数の配分は各中学間で均等化の方向に向かう可能性もある。 絶対評価の配分率が決まっていくという奇妙な状況が予想される。 中学は絶対評価の教育活動へのメリットを肯定してはいるが、 入試への活用には反対している。 個々の生徒の指導には絶対評価は有効であろうが、 客観的な他者との比較の物差しが必要な入試には馴染まないのだろう。 (絶対評価は 「関心・意欲・態度」 「知識・理解」 などの観点で評価が決まるので、 各生徒それぞれの達成度を見る時には活用しやすいのは確かかもしれない。) 神奈川新聞社が県内37市町村に高校入試で絶対評価を活用することについてアンケート (指導事務主管課長・教育長などが回答) を行ったところ、 活用すべきと回答したのは川崎市・津久井町・藤野町のみであった。 (4/26 神奈川) また、 臨時に開催された市町村教委担当課長の会議でも絶対評価の入試利用に疑問が続出していた。 (3/25 朝日) さて、 今回の絶対評価問題は湘南高校への合否をめぐって公平性に疑問が投げかけられた事から始まった。 前掲した 2/24付け神奈川新聞は高学歴の保護者が多い地域特性から学力の高い子どもが集まる中学があり、 そこの中学から湘南高校への合格が異常に少ないと報じた。 その後、 ネット公開文書館 (http://homepage3.nifty.com/webnews/) が情報公開制度を利用して入手した絶対評価の分布をインターネット上で公開したが、 それは湘南高校と平塚江南高校についてであった。 (6/5 朝日) ともに県内有数の進学校である。 絶対評価問題が偶然浮き彫りにしたのは、 大都市圏に住む高学歴層の意向表明が強まっているということではないか。 ベネッセ・朝日新聞が実施した共同保護者調査を受けて耳塚寛明氏 (お茶の水女子大教授:教育社会学) は、 「彼ら (大都市に住む高学歴の親ー調査対象の10%以下と推定) は学校への満足度が低く、 学校選択制やエリート教育、 学校間競争、 学校評価の導入などに肯定的だ。 いまの教育改革の方向性と一致する。 戦略は わが子の学歴達成に有利か否か に置かれ、 望ましい教育のあり方にまで及ばない。」 と言う。 (4/5 朝日 波線筆者) 新聞報道やインターネット上で絶対評価の分布が公開されたことで、 絶対評価には中学校間で格差があることが公になった。 特にインターネット上では県内の中学校全ての情報が公開されている。 例えば県内中学校が共通テストを行い、 その結果が公開されれば神奈川の全中学にランクをつけることになる。 しかし、 絶対評価は学校間の比較には不向きだから、 分布が公開されたとしても中学の学力格差構造を示すようなものにはならないだろう。 だが、 今後絶対評価の不平等感が高まれば、 学校間の比較に耐えうる評価が要求され、 それが公開されることによって中学校間の学力格差問題が浮上する可能性もある。 県内で進行している中学校選択の自由化と相俟って、 学校選択のためにさまざまな情報公開請求が出されるかもしれない。 (横須賀市は中学校選択が自由化され、 横浜市は04年度から検討に入った。) 絶対評価問題は高校に序列があり、 入試が競争試験の度合いを強めていないと発生しない。 序列が無ければもちろん競争もない。 どの高校へ入学しても同じだからだ。 あるいは、 中学時代に熱心に真面目にコツコツと学習をしたので近くの高校を選べた程度の入試であれば絶対評価でも何ら問題にはならないだろう。 4. 学区外受検から学区撤廃へ 03年2月、 「入学者選抜制度・学区検討協議会」 が 「今後の学区のあり方について」 (協議会第二次報告) の中で 「高校選択の量的拡大、 質的均等を図ることができるよう学区を撤廃する方向で検討することが望ましい」 と提言した。 これを受けて、 教育委員会は同年10月、 「神奈川県立の高等学校に関わる通学区域方針」 で05年度より学区を撤廃するとしたのである。 教育委員会が学区を撤廃できるようになったのは、 01年に 「地方行政の運営に関する法律」 第50条が削除されたことによる。 しかし、 第50条の削除は学区の撤廃を企図したものではない。 これは98年の中教審答申を経て99年の分権改革によって市町村立高等学校の通学区域の指定が市町村の自治事務として権限委譲されたことに始まる。 その後、 規制緩和を一層推進する立場から通学区域設定の規定そのものを削除し、 その設定を当該高等学校を所管する教育委員会の判断に委ねたのである。 つまり、 第50条の削除は学区を否定したのではなく、 学区設定を自治体に権限委譲したことを明らかにしたものであった。 文科省も第50条削除について以下のように通知した。 本改正は、 一律に通学区域をいわゆる全県一学区にすることや通学区域の拡大を意図するものではなく、 公立高等学校の通学区域の設定について、 これを設定するか否か、 またどのように設定するかについて、 これを教育委員会の判断に委ねようとする趣旨のものである。 (01年8/29 事務次官通知 波線筆者) 「今後の学区のあり方について」 (協議会第二次報告) は学区を撤廃した場合の課題として<受験競争激化の懸念への対応>、 <学校の序列化への懸念の対応>、 <近隣の高校の入学を希望する生徒に対する影響>、 <地域とのつながりの希薄化の懸念>、 <中学の進路指導への影響への対応>を挙げた。 この課題への対応は 「特色ある高校づくりの一層の進展」、 「入学者選抜制度の着実な実施」、 「中学の進路指導の一層の充実」、 「進路希望などに基づく募集定員策定上の配慮」 という点にまとめられると教育委員会は 「神奈川県立の高等学校に関わる通学区域方針」 の中で述べている。 しかし、 これらの課題を克服するものとして有効なのが学区の設定ではなかったか。 削除された第50条の中には 「高等学校の教育の普及及びその機会均等を図るため〜 (略) 〜高等学校を指定した通学区域を定める」 (波線筆者) とあった。 本レポートで指摘しているように、 受験競争の激化や高校の序列化は定時制を巻き込んで進行している。 また、 絶対評価問題・定時制入試の混乱に代表されるように新入試の先行きも困難な状況が予想される。 学区撤廃に対して懸念されるこれらの課題を年度ごとに検証していく必要があるだろう。 もし、 課題を克服することが困難であったら、 学区を設定し直すという方針を教育委員会は提示しても良いだろう。 通知にあるように学区の設定は各教育委員会に委ねられているのであるから。 では、 学区撤廃は保護者・中学生全員の要求なのだろうか。 04年度入試では学区外受検枠が25%に設定されていたが、 その充足状況は学校によってかなり違っている。 前期選抜で学区外受検者の少ない高等学校は以下の通りであり、 学区外受検者が 0 人の高校も 4 校ある。
反対に多い学校は以下の通りである。
これを県内予備校が市販している受験雑誌の高等学校偏差値との相関で見てみると、 中堅校は学区内志向であり、 上位校は学区外志向となる。 学区撤廃は上位校を希望する保護者・生徒に支持され、 中堅校の生徒・保護者には支持されない状況がありそうだ。 学区撤廃に代表される競争を重視する教育改革には保護者の中に反対・賛成の意見が併存している可能性がある。 つまり、 05年度の学区撤廃は上位校志向の保護者・生徒の意向に沿ったものと言えるかもしれない。 (先に紹介したベネッセ・朝日新聞の共同調査とも重なる。) 今後、 地元志向の強い中堅校志向の保護者・生徒の意向を汲む方針を教育委員会が策定する必要もあるだろう。 もちろん、 学区が無くても中堅校志向の強い保護者・生徒は地元の高校への入学を希望する可能性も大きい。 該当する中堅校では地元の中学に対して情報を発信し結びつきを強くすることで地元からの入学者を維持する努力が必要になるだろう。 その努力は保護者・生徒の願いに応えるものでもある。 さらにこれは 「今後の学区のあり方について」 (協議会第二次報告) が懸念した課題に対応することともなる。 5. 変化する高校入試 高校入試の変化はここ数年のことではない。 それは主に70年代から打ち出された改革の方向性がここにきて急速に実現しているのである。 主なものは以下の通り。 63年 学校教育法施行規則を改正し、 選抜試験の完全実施 71年 中教審46答申 中高一貫の多様なコース別、 能力別教育 84年 学校教育法施行規則第59条 4 項の削除。 ここには学力検査の同一問題・同一時期の一斉実施が定められていた。 同年 7 月20日の通達で、 特色ある高校の学区拡大・受験機会の複数化・面接など入試の多様化が奨励された。 85年 臨教審第一次答申 6 年制中学、 単位制高校の設置など。 87年 臨教審第三次答申 受験機会の複数化、 学区制度の見直し。 93年 2 月20日文部事務次官通知で選抜方法の多様化 (多段階選抜、 調査書の記載事項の利用、 面接、 学区拡大など) が再度求められた。 特に93年の通知以後、 複数受験・推薦入試の拡大・総合選抜の見直しといった入試制度の改革に多くの自治体が取り組み始め、 神奈川もその流れの渦に巻き込まれたのであった。 高校の多様化と入試の多様化・競争を維持する仕組みは表裏一体の改革として推進されてきたのである。 様々な議論があったとしてもア・テストに代表される神奈川方式と呼ばれた入試制度は独自色があった。 現在進行中の入試改革・高校多様化路線はむしろ通知に従って各自治体の様々な取り組みが画一化されていく方向性に見える。 総合選抜も03年度には山梨・京都・兵庫の一部で実施されたのみで、 今後の存続は流動的と言われている。 (03 12/23 朝日) 分権路線・権限委譲を進めるのであれば、 各自治体がその責任において入試の検討を行うべきではないだろうか。 保護者の意識も市場主義・競争主義の中で揺れている。 競争を前提とした高校入試を考える保護者もいるだろうが、 地元の高校に安心して入学できる仕組みを求めている保護者もいる。 双方の要求を完全に実現することは無理だろう。 しかし、 どこで折り合いをつけるかだと思う。 そういう神奈川らしい柔軟な制度改革を目指すことも一つの方向性であると思う。 6. 希望を実現する募集計画を 04年度高校入学者の中学 3 年次における県内公立高等学校への進路希望調査によると、 普通科進学希望者が46907人、 専門学科進学希望者が5926人、 総合学科進学希望者が2681人となっている。 その内、 普通科では45799人、 専門学科では5850人、 総合学科では2671人が調査時に希望校まで決定している。 これに対して、 04年度募集定員は普通科が約33000人、 専門学科が約5700人、 総合学科が約2200人となっている。 つまり、 県内公立高等学校の定員は進学希望に対して普通科で約14000人、 専門学科で約250人、 総合学科で約480人、 合計約14730人が不足しているのである。 この、 約14730人の中学生は県内外の私立への進学を指導されていくわけだが、 もしその指導に納得しなければ本人の決断で公立高校を受検することとなる。 (当初より私学を希望していたのは、 県内が4845人、 県外が2552人である。 県外国公立には372人が希望していた。 また、 県内私学の定員は約17000人程度を予定していた。) 不幸にして入学先が決定しなければ進学率が低下することとなる。 事実、 ここのところ実績高校進学率は計画進学率を下回っている。 ここ数年、 県内私立高校が計画募集定員を埋められない状況が問題になっている。 例えば、 03年度入試では計画16700人に対して実績は14653人、 県内私立高校は2047人ほど定員を充足できなかった。 しかし、 同年の公立全日制高校は募集計画42491人に対して実績42581人であり、 計画値を実績値が上回っていた。 03年度は結果として計画進学率を実績進学率が下回った。 進学率の低下は公立高等学校の募集定員が少ないことにあるのは明白な事実である。 さらに、 普通科の定員の低さは際だっており、 これが神奈川の入試の混乱要素となっているのである。 定時制の混乱も本レポートで分析したとおり公立高校の募集定員と深く関係している。 こう考えると、 全日制の枠を中学生の希望と合致させることで定時制の混乱などを解消することができそうだ。 いたずらに定時制の枠を広げても、 中学生の希望は公立全日制普通科が多く、 そもそもその募集定員が希望をはるかに下回っている以上、 混乱を回避する方策にはなり得ない。 「今後の学区のあり方について」 (協議会第二次報告) は学区撤廃後<近隣の高校の入学を希望する生徒に対する影響>という課題への対応として 「募集定員を策定するにあたっても、 生徒たちの希望を生かすことができるようこれまで以上配慮していく必要がある。」 とした。 教育委員会もそれを受けて 「神奈川県立の高等学校に関わる通学区域方針」 の中でこの課題への対応として 「進路希望などに基づく募集定員策定上の配慮」 をあげ、 「これまでの取り組みを継続しながら、 一層の充実を図ることとします。」 とした。 今後の教育委員会の努力に期待したい。 7. おわりに 04年度中学卒業者 (05年度入試対象) は前年度に比較して約4000人ほど減少する。 既に何年も前から高校は数の上では全中学生を無試験で入学させることが可能になっている。 しかし、 受験競争は収まるどころか厳しさを増しているようだ。 ここ20年以上、 生徒急減期にあっても競争を維持するための政策が実施されてきた。 高校多様化と表裏一体の入試の多様化、 学区拡大・撤廃など。 そして、 市場原理を追求する競争社会になりつつある現在、 保護者の中には受験競争もやむを得ないとする層が存在しそうだ。 だが、 以前のように地元の高校へ進学を希望する層も存在する。 生徒・保護者が分断された状態の中で入試の制度や学区について考えなければならない時期にあるのだろう。 両者から批判されるとしても、 片方に偏らない制度改革はできないものだろうか。 次年度入試から制度が完全実施される。 だが、 絶対評価問題への対応から実施の前に前後期の定員の割合が変更された。 前期選抜の募集定員の割合が30%〜50%だったものが20%〜50%に変更になった。 (もともとの変更案は20%〜70%であった。 6/9 神奈川) 上位校は絶対評価問題の影響が少ない学力試験重視の後期選抜に定員を多く確保する方向を採用した。 (なお、 後期選抜は学力試験と調査書の比率を4:6、 5:5、 6:4の中から各校が独自に選択でき、 上位校のほとんどは学力試験重視の6:4を選んでいる。) もし、 絶対評価を信頼しないのであれば上位校以外の高校も後期選抜の定員を増やすことになるはずだったが、 実際は多くの学校が限度いっぱいの50%を選択した。 この中には40%から50%に引き上げた高校もかなりある。 70%であればそれを採用したかったという高校もあったと聞く。 つまり、 絶対評価問題は今のところは上位校を中心に発生しているのである。 中堅校では中学校での努力によって決まる絶対評価を使用して入試を行うことにあまり抵抗感はないのかもしれない。 しかし、 現状のようにきわめて不自然な評価分布 (例えば保健体育で中学校間での 「 5 」 の割合差最大80倍 6/3朝日) が放置されると評価に対して保護者・生徒の不信感は増幅し、 学校教育そのものへの不信感へと拡大する可能性もある。 絶対評価の格差是正で教育委員会は観点別評価から評定への換算基準の統一を中学に通知したが、 それは中学側の反発を受け本年度は不徹底に終わった。 (7/26 神奈川) 05年度入試も本年度同様絶対評価問題などの混乱を生じる可能性がある。 だが、 いたずらにその混乱をあおり立てるような風潮には賛成できない。 この風潮は各高等学校が学力試験を重視する方向に作用し、 今よりも競争を激化させる可能性が大きいからだ。 中学校が評価に対する保護者・生徒の信頼を回復し、 大多数の生徒が中学の成績と面接で地元の高校へ合格できれば、 自分の成績を見て合否の可能性を各自がある程度判断することもできよう。 前期選抜は運用によっては受験競争を緩和する可能性もあるように思える。 調査書や面接の持っている問題も大きいものがあるが、 一回の学力試験で合否が決まる入試よりは中学の学習成果・努力を重視する入試に対するニーズもあるように思えるのだが。 【参考文献・ホームページなど】 解説教育小六法 三省堂 (2002) 高校入試制度の改革 国民教育研究所・木下春男 労働旬報社 (1988) 中萬学院 http://www.chuman.co.jp/ 本文中の数値データは新聞報道、 教育委員会発表、 塾・予備校発表のものを利用した。 |
|||||||||||||||||
(かなざわ のぶゆき 教育研究所員) |