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 「学校は今」 〜現場の実感〜
                                      
  新 井 孝 志

 この数年の間に生じた学校現場における様々な変化を思い返してみると、 激動といっていいほどの大きな変化を経験し、 未だその変化の渦中にあるというのが現場に働いてきた大方の現実認識ではないだろうか。 それは、 公的には教育改革、 学校改革といったポジティブな名称にくくられる動きとして語られるが、 現場にいる教員たちにとって、 この間の動きが決して内側からの変革意欲や変革理念を汲み上げて生じてきたものではなく、 長引く経済不況を背景とした政治的、 社会的な変化の中で上から降ってきたものであり、 中にはそのような社会状況下における公務員批判、 学校批判をかわすための対応策となって表れてきているものもある。 そういった改革 (怪革?) のなかで教育活動及び、 教員としての労働意識に大きな影響を及ぼした、 また今後及ぼすと思われるものを整理せずに思いつくままにあげながら、 個人的実感のレベルでコメントしてみたい。  
○国旗国歌法の成立とそれと連動した職員会議の校長の諮問機関化。 当時の政治目的としては国旗国歌の完全実施をバックアップすること、 さらに校長の権限を強化することによる学校運営や改革の促進がねらいだったわけだが、 このことが教員の労働意識に深いところで及ぼした影響は大きい。
○学校五日制導入と、 にもかかわらずと言うべき従来型の授業確保志向の延長上にある二期制の導入。 長期休業との連携を考慮しない二期制は、 小学校レベルまで蔓延しつつあると聞くが、 まるでサイズの合わない窮屈な服を無理矢理着させられているような想いを抱く。
○服務規定の改変と、 それに連動した様々な煩瑣な制度導入、 自己研修の実質困難化。 こういったものを考えると学校が教育現場というよりも役所の出先機関としての様相を強めていると感ずる。
○過去二回にわたる入試制度改革による入試業務の混乱と激化。 一回目の改革は生徒の意識実態の把握に失敗した制度であったことは明らかなのに、 それをきちんと分析批判しないまま新たな改変を行い、 まだ現在迷走中だ。 そこに学区撤廃がからんで状況はますます混乱してくる。
○新指導要領施行と文科省の学力低下批判に対して行った、 指導要領の位置づけの改変。 ゆとり教育を標榜して、 それを越えてはならないはずだった指導要領が世論の学力低下批判に晒されるや、 あれは最低基準だと言い換えられる官僚の保身術にはあきれかえるばかりだが、 あの時の旗振り役だったT氏はいまどこで何をやっているんでしょうね。 え、 映画評論?
○高校再編と教員採用の手控え。 やっと第二次案が出されるらしいが、 統合という聞こえの良い言葉の裏でどんな問題が噴出しているかちゃんと検証して出てくるのか。 総合学科に十分な継続的予算を保証できるんですかね。 教員の老齢化はシニアにはしんどい。 生徒に一番刺激を与えられる若い血が入らないのもホントに問題。 そうか、 オレが早く辞めればいいのか。

   
(あらい たかし 県立鶴嶺高等学校教員)