編集後記

◆『ねざす』もいよいよ30号を迎えた。しかし、30号の特集が「教師たちの現在」とは創刊にかかわった方の予測がついただろうか。教職員が主体になってさまざまな教育問題の解決のために活動しようというよりも、近年は教職員自体が問題の対象になってしまった。教員評価システムや研修権の問題に加え、ついには夏休みも「ずる休み」だとたたかれる始末。未来を語れず、現在を告発したい心情など、悲しい話ではある。「教えるとは、未来を共に語ること」(ルイ・アラゴン)などのレベルにないもどかしさが続く。
 何度でも書く。「教師の能力がもっともよく発揮できるのは、自由の雰囲気のなかにおいてだけである。行政官の任務は、この雰囲気を作り出すことであって、その逆ではない」(『米国教育使節団報告書』)。
◆今号も百ページをゆうに越えてしまった。テーマにそって所員もそれぞれの視点で書いた。中学校の吉崎秀喜氏に寄せていただいた「不安のなかでのスタート」は、中学の現場の大変さが滲み出ている。また、高校生の就職問題が話題になっていることもあり、進路指導協議会で就職部門を担当する劔持雅章氏にこの件を幅広い視点で論じてもらった。
 入試制度の変更が予定されている現在、中野渡強志氏の「神奈川の『ア・テスト』はこうしてなくなった」は重要論文である。また、手前みそになるが、所員の金沢信之氏の「2002年度入学者選抜の諸問題」では問題の所在が述べられている。これらの指摘をぜひとも押さえた上での今後の入試制度改革であってほしい。
 今回も「職場にねざす」「学校発『総合的な学習の時間』」などの連載は続いている。各職場の参考にしていただきたい。
◆今号は30号記念ということもあり、かつて教育研究所にかかわった幾人かの方から叱咤激励の文章を寄せていただいた。こんな時代だからこそ教育研究所がしっかりしていかなければならないと再認識した次第である。
◆杉山宏代表が3月までの任期を終え、この4月からは黒沢惟昭氏(山梨学院大学教授)を新代表にお迎えした。かつて所員だった池田弘氏には事務局長をお願いした。また、綿引光友氏(長後高校)が退所された関係で、新所員として阪本宏児氏(厚木南高校)、小野行雄氏(東金沢高校)に加わってもらった。情報担当ということで、嘉村均氏(永谷高校)のお力も借りることにし、外部の方として沖塩有希子氏(青山学院大学大学院)をお招きした。幅広い人材が集う研究所のメリットを活かしながら、さらに現場にねざした研究・調査をしていきたいと考える。
 手島 純
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