特集 : シンポジウム「減るの?変わるの?どうなるの?」
 

第8回 教育研究所 シンポジウム

減るの? 変わるの? どうなるの?

〜神奈川の高校の行方を探る

 


◆期 日 1999年11月20日(土) 14:00〜17:00
◆会 場 Lプラザ(神奈川労働プラザ)3F
◆コーディネーター
      中野渡 強志(県立相模台工業高校教諭;教育研究所員)
◆シンポジスト
      梅本 霊邦(県立寛政高校教諭)
      高村 史朗(県立川崎南高校教諭)
      本間 正吾(県立田奈高校教諭;教育研究所員)

 

開会:第8回教育研究所シンポジウム「減るの?変わるの?どうなるの?神奈川の行方を探る」を始めたいと思います。よろしくお願いいたいます。
 最初に教育研究所代表の杉山から挨拶いたします。

杉山:ただいまご紹介を受けました高校教育会館・教育研究所の杉山でございます。
 この8月、県教委から「高校改革推進計画」案が発表になりました。しかし多様化した生徒の特性、関心・興味・学習に対する希望、進路に対する希望等々、それをどれだけ押さえて、計画案がでてきたのかな、という点で多少疑問を感じました。
 あの計画案に対応して、話し合いを持っていければ、と考えております。生徒の立場、あるいは父母の方々の立場、あるいは教員の立場、学校を支える地域の方々の立場、それぞれの立場から、いろんな意見を出して頂いて、新しい高校像を探っていきたいと思っております。
 本日は、コーディネーター、シンポジストのいずれも、この人ならば、という人を選んだつもりでおります、後で積極的な発言があると思います。そこで、大変短い時間ではございますが、会場の方からも積極的なご意見がいただければ、と願っております。

 

シンポジウムの趣旨

中野渡:それでは早速シンポジウムに入らせて頂きます。私は、教育研究所の所員ということで参加しておりますが、今回たまたま再編計画の対象になった相模台工業高校定時制に現在勤めております。
 このシンポジウムの趣旨とシンポジストの紹介を致します。
 皆さんもご存知のように、今年の夏、8月15日、「朝日新聞」に再編計画が載り、具体的な学校名が出ておりました。他の新聞には載っておらず、どうなっているのか、という気持ちになりました。
 そこに出ていたのは、学校を減らし、新しい学校として、単位制高校を4校作る、フレキシブルスクールを3校作る、あるいは総合学科高校を6校作る。また、今まで聞いたこともない学校、専門高校でいえば、「総合技術高校」とか「総合産業高校」を、両方が合併して、あるいは片方を募集停止にして、生まれ変わるんだと発表されたわけです。
 該当の高校にしてみれば、「え、なぜうちの学校が?」とか、「何であそこの学校と一緒になるの?」という感想があったかと思います。夏休み中に臨時の職員会議を開き、校長から説明を受けたとか、新学期に入って、という学校があったかと思います。
 この間、1973年から県立高校百校計画により、約14年間に100校、平均すれば1年間に10校程度の学校がどんどん出来てきました。増え続ける中学卒業生に対して過大校12クラス規模・過大学級47〜8人という形で引き受けてきました。しかしここに来て生徒がどんどん減っていく。最高で12万人いた中学卒業生に対して、将来的には6万人になる。その間、高校が抱えるさまざまな課題が出てきました。その中で大きな問題は、過大校・過大学級と同時に、学校間格差が現れました。いわゆる課題集中校に現れているさまざまな課題を何とか解消していかなければなりません。子どもたちが生き生きとした、自らの個性が生かせる学校を作り上げていこうじゃないかと、多くの取り組みがされてきました。
 しかし、具体的な解決に至らないまま、今日に来て、県教委がこうした課題も解決するとして出してきたのが、今回の新しいタイプの高校を作っていくという提案です。果たしてそうした学校が、高校のさまざまな課題に答えうるかどうか、現場ではこの改革をどう受け止めているのか、これから私たちはどういう方向に、どういう学校を作り上げていけばいいのか、具体的に各学校で取り組んでいる方にお話をいただき、皆さんと会わせて、この問題を考えていこう、と思います。私たちが本来こういった学校がいいんじゃないかと思ってきたことが今回の発表と一致しているのか、乖離しているのかということも、今日は明らかにできれば、とも思っています。
 今回、総合学科高校として生まれ変わろうとする県立寛政・平安高校の、その寛政高校の梅本先生に来ていただいております。それから、県立川崎高校・同定時制と一緒になってフレキシブル高校に生まれ変わろうとする県立川崎南高校の高村史朗さん。今回は、残念だったのかよかったのか分かりませんが、対象にならなかった県立田奈高校で、教育研究所の所員としてこの間、この問題にずっと取り組んできた本間さん。本間さんは、県の発表前から予想を立てて、相当当たったんじゃないか、その辺りのこともお話いただけるのじゃないかと思っています。この3人の方をお招きいたしました。
 それから、フロアから発言していただきます。後ほど発言の際にご紹介いたしますが、浜高教・私学・中学校関係・父母、の4人の方のご発言を頂いてから、皆さんと一緒に考えていきたい、限られた時間ですがそういう形で進めていきたいと思ってます。
 まず、この計画が発表されたとき、各学校でどう受け止めたの、またどういう議論になっているのか、5分くらいお話いただき、その上で、もう1回議論を深めていきたいと思っております。本間さん、梅本さん、高村さんという順でお願いします。
 

計画をどう受け止めたか

本間:田奈高校の本間と申します。今お話がありましたように、今回田奈高校は対象にはなっていないんですけれども、県で出しているタイトルは「県立高校改革維新計画」なんです。本当は、県立高校すべてが対象になり、その改革を進めるという計画として出されているのです。
 ところが今「再編」に焦点が当てられて、「再編該当校」というのが挙げられて、そこが議論になるということで進んでいると思います。ここに元々の問題があったと思います。本来県立校の改革ならば、例えば、私の田奈高校。いわゆる課題集中校として、生徒の実態に合わせた柔軟なカリキュラムを追及する等の取り組みをやってきました。おそらく多くの学校もやってきたと思います。ですから、「県立高校改革推進計画」であるならば、さまざまな学校で取り組んできた改革の取り組みに対しての県行政からの対応があって、その上で進んでいくのが改革推進計画であるはずです。ところが実際に出されたもの、報道されたものは、何校なくなる、どことどこを一緒にして何を作る、というところに焦点が当てられ、実際そういうふうに進んでしまっている、そこに一番大きな問題があると思っております。改革推進計画というものが出るということで、予想を立ててみました。的中率は、ほぼ五分五分だったと思っています。というのは、いくつか私が予想もしていなかったことがありました。例えば、フレキシブルスクール。これはやるとなると難しい問題を含んでいるだろう。定時制と全日制の関係をどうするんだとか、その辺がきちんとクリアされなければ、後期計画まわしだろうな、と思っていました。
 それから、総合産業高校。一体なんなのか、専門学科なのか。そうならば、それを単位制にするというけれども、どういうふうになるんだろうか。というところで、はたして前期計画で出てくるのか、きちんと検討した上で出てくるものだろうな、と思っていました。それが前期計画の中でいっぺんいボンと出てしまった。これは予想がはずれました。
 資料でお配りした「ニュースレターNEZASU」にも書きましたが、県立高校改革推進計画で、県も県立高校の削減を盛り込んでいますが、ボトムのとき6万人規模に縮小するとは言っても、県立高校への入学希望者を受け入れるにはどの程度の県立高校全体の規模を維持しなければならないかを考えると、最初言われたような25校から30校の削減まで行くのかな、もう少し数の少ないところで落ち着くんじゃないかな、と思ってたんですが、前期計画で14校の削減という、非常に大きなものが出たと思っています。その辺で私の予想は大きくはずれてしまいました。思ったより大きな計画になってしまったという印象を持っているところです。

司会:では梅本さん、お願いします。

梅本:横浜東武学区の平安高校と寛政高校の統廃合、2005年度以降の総合学科導入・新設校設立ということについて、寛政高校の職場で発表がどう受け止められたかは、「ニュースレターNEZASU」31号に概要を書いておきました。この原稿を書いたのが9月でしたから、それから2ヵ月経っておりますが、全体的にはさしたる変化はないというふうに見ております。当事者意識が希薄だ、とそこにも書きました。なぜ希薄なのかは、これから議論を進めていく中で明らかになっていけばいいと思っております。もう一方の平安高校の状況は私自身知りませんので、ここでは申し上げません。何か質問があれば、後でしていただきたいと思います。

司会:はい、ありがとうございました。では、高村さん、お願いいたします。

高村:「ニュースレターNEZASU」に書いてありますが、現場の反応は大体3つくらいあります。「神奈川新聞」では、白羽の矢が立てられた学校は一様に驚きの色を発した、とありますが、驚いていないんですね。川崎南高校は、イトーヨーカドーが隣に建てられていて、みょうちくりんな敷地の形になっています、変だな、ということは以前から重々分かっているんです。学校前の道路の拡幅工事が10年ぐらい前から予定されながらさっぱり手がついていないとか、考えれば、なるほどそうかな、と後で思い当たるんです。
 鍵括弧付ですが、「統廃合」などということが昨年度あたりからいわれるようになってから、私は、うちはまず間違いなくその対象になるであろう、と考えていました。“寝耳にぬるま湯”ぐらいはあったかもしれないが、寝耳に水、なんてことはなく、驚いていないんです。
 何でうちなんだ、という感覚はありました。お鉢が回ってきたか、町内会の役員が回ってきたくらいの感じ、というところでしょうか。これが一つ。
 二つ目は、決め方に不満がある、というか、県当局のやり方については、やはり、大きな不満があります。本校の現状は、たまに教職員課の方が来て、ちょっとだけ見て帰ったりはあるんだけれど、昨今本稿が置かれている状況は以前に比べると大変になってきていて、それを知ってこういう計画を作ったのかな、という感覚ですね。せめて、もうちょっと現場の話を聞いて、あるいは、もうちょっとよく見てからやってほしかったな、というところが強くあります。不満、不信もあるかな、という感じです。
 9月2日に県の担当の方に来てもらって、説明してもらったんですが、「計画の大枠は示しますが、後は現場やってください」ということでした。今の状況はすごく大変で、不満はあるんだけれども、不満ばっかり言っている場合じゃない、というのもあります。とりあえず不満は置いておいても、何をどうしたらいいのか、よく分からない。
 県の方から2時間ほど説明してもらったんですが、よく分からん、ということがよく分かった、というレベルでしかなかったんです。今から我々がどこまで決めることができるのか、とか、仮に我々が決定した内容にお金とか人間をつけてくれるんだろうか、とか。言われるように5年間で1蝶50億円の財源が不足している、で、この再編計画全体に450億円、再編対象校には350億円かける。建て直しを含めて結構金が掛かるのに、建て直し以外のところにソフトの部分を含めて、十分なお金をかけてくれるのかという不安がありました。
 いつまでに、何を、どう決めていいのか、現時点で、さっぱり分からない、という状況で、当惑している、というところが我々学校の大体の雰囲気だと思います。
 一応予想していた。不満がある。三つ目には、どうしたらいいのかよく分からんということです。
 当初、県が立てたこの行革に対しては正面切って反対すべきじゃないか、という言い方はありました。今でもあると思います。ただ、そういうことを言っている場合ではないだろう、ということもあります。この際これを上手いこと捉えて現状を変えていなければなと、前向きに考えていこうというスタンスが今出来つつある、ということが希望かなというところです。
 

学校をどう変えるのか

司会:ありがとうございます。それぞれ該当校の率直な感想をお話いただきました。
 神奈川高教組が主催するが投稿会議に私も出ておりまして、いくつか、例えば、小田原地区の方で問題がある、城内高校を中心として反対という意見もありますけれども、神奈川全体として、各学校がそれを表に出して運動を展開していることは聞いていない。今お話があったように、戸惑いながらも、じゃあこれからどうするんだ、という形で話が進められている。これは、ある意味で予想されていたということです。昨年の県の将来構想検(県立高校将来構想検討協議会;県教委の諮問機関、97年4月設置、98年9月答申提出)の中間まとめで、新しいタイプの高校を作るんだ、拡大するんだ、ということも指摘していましたし、適正規模の学校をということで、統廃合を含めた再編整備をすることが既に明らかになっていて、問題は、どういう新しいタイプの高校か、どの学校がその対象になるのか、ということで進んできた経過があります。
 今年になって、具体的なタイプ学校とは、総合学科なり、単位制なり、フレキシブル(県はフレキといっています)なりが出来るんだ、ということも明らかになりました。具体的な学校数も、先ほど本間さんの方から出ましたが、6月には、前期と後期で25校から30校の減だと進められてきました。
 名目はあくまでも、生徒に対して柔軟な学校を作る、ということで、新しいタイプの学校を作ることが今回発表の大きな目的であります。
 最初に触れましたが、今の神奈川の高校生の実態を見て、それぞれの学校で様々な模索がされる中から、条件整備や新しい科目の設置を目指しても、予算がない、人的配置もないとされ、我々が件に対して計画を持っていって、こういう格好にしたいんだといっても、はいじゃあやりましょうか、とはならなかった。しかしここにきて、今度は県教委から、ポン戸提示されて、この枠内、この学校でなら、予算も人もつけますよ、という形で出てきたわけです。今具体的・日常的に生徒とかかわっていて、「こういう学校なら、今より子どもたちにとっての教育展開が出来る」と判断できるかどうか、その評価をめぐって、議論があるんじゃないかと思っております。
 そこで、次の段階で、この計画をどのように具体的に受け止めて、当該の学校で進めようとしているのか、評価と今後の方向性をお話いただければ、あるいは、それにかかわる別の課題でも構いませんが、もう少し踏み込んでお話いただければ、後半の皆さんとの議論になるんじゃないかと思います。

手探りの中で――「今までの生徒が来られる学校にしていきたい」

高村:余り景気のいい話は出来ないんですが、今の本校の現状をベースにおいて改革が考えられなければならないだろう、と思います。本校にいらした方もここにちらほら見えますが、ここ数年、本校の生徒の状況が非常に変わりました。
 ご存知の方は多分三分の二ほどいらっしゃると思いますが、「指定校」(課題集中校とほぼ同じ意味――編集者)という名前があります。本校はその言い方ではないんですが、限りなく指定校に近い、「指定校もどき」とでもいいますか。
 日常の中で、大きな、しかも今まであったこともない問題・時間が起きるという状況になっています。それをどうすれば良いのか、解決法というか、きちんと議論する場が本校ではなかったというか、日常に追いまくられていたというと良いわけになるのですが、今回の計画が出される以前に、この学校をこういうふうに変えていこうという理屈の上でのポリシーを打ち出し得なかったという現状があります。
 そこで先ほどいったように、こういうことが出たからには、この現状を変えていくために、何とかこれを使っていけないか、という発想で、今考えています。この計画が出た後で我々が考えたのは、今すぐ何をやるのか、ということです。これをきちんと議論しましょう、というのが一つです。
 二つ目は、相手のある話で、本校だけで話が出来ない、特に移行期の問題は、非常にシビアな両校の問題が出てくるのですが、川崎高校はご存知のように定時制と昼間と両方あります。言ってみれば三つ学校があるようなものですが、抱えいる状況がさまざま違う中で、いかに協力体制を作っていくか、これが、シビアな問題の二つ目です。
 移行期については、フレキシブルに関わらず、統合される学校すべてに言えることですが、2002年度に入った生徒が3年生になり、2004年度に新校が開校するときに、2年生・3年生には、そうでない生徒がいる。2003年度の新しいカリキュラム(新カリキュラムは2003年度から学年順に適用される――編集者)を最初に適用される2年生と旧カリキュラムの3年生がいるという渾然一体。うちの学校は2004年度フレキシブル開校で、しかも定時制もいる。そういう状況の中で、例えば、生徒指導の問題とか、教務規定をどうするとかとか、移行期の最初にシビアな問題を考えていかなければいけない。
 さらにその前に、入試。入試選抜については、県当局の発表では、6クラス規模の学校は最終的に残すとして、その前の2年間に2校が3クラスずつの募集をそれぞれやっていくことを考えているようなんですが、そういうやり方でやって一緒になって上手く行くのかどうか、という問題。そういうことを経験した方はどこにもいないということで、非常に不安です。
 非常にせこいレベルの話なんですが、2004年度の3年生の元の学校(例えば旧川崎高校)に大学から指定校推薦が来たときに、壮ではなかった川崎南校の3年生にそれを保障できるのかどうか、こういう生徒間の個別の利害となれば、非常にシビアな問題として出てくるだろう、ということがいっぱいあると考えられるんですね。
 そのことを十分考えたうえで3クラス規模の入選を2回ずつやっていくと、県当局が考える、とはとても思えない。ただし入試制度をこういうふうに変えてくれ、とはなかなか言いにくい現状もあるようです。
 そういった問題が移行期には出てくるのですが、何よりも、出来あがっていく学校がどんな学校になっていくのか、これが、よく分からないというレベルで済まされなくなっています。今、本校では、「再編問題検討委員会」を作って、検討を始めました。入り口のところで、既に2回長時間にわたって議論しました。
 何を議論しているのかといえば、今言った個別の移行期の問題はとありあえず後に置いておいて、どんな学校を作るのか、これだけで既に合計3時間ほどやっているのですが、未だ合意された方向性が見出し得ないということです。
 例えば、新しい学校のコンセプトというのは県が発表したものにはいろいろ書いてあるんですが、我々にすれば、もっと身近なレベルでのコンセプトが必要であると考えています。先ほど言いましたように、地域性もあるんでしょうが、非常に問題のある生徒が入ってきています。その生徒を結果的によそに追いやるような学校にはしない方向性を考えようと。
 神奈川総合高校という学校が県下最初の単位制高校として出来て、結果的にどうなったかというと、議論もあるんでしょうか、割といい学校が出来上がった。県下全域から募集することもあったんでしょうが、魅力のある、新しいスタイルの学校ということで、結果的にそういう学校になってしまった。もし本稿がフレキシブルスクールで、しかも、県の言う通りさまざまな魅力あるコースを用意して、全権一区募集とした結果、倍率が高くなって、今まできていた生徒がこれなくなるようになったんでは困る、という考え方をしています。
 今学校に来ない生徒がいっぱいいます。中途退学者もいっぱいいます。そもそも中学校の段階から、学校そのものに馴染んでいなかった生徒がいっぱいきているんです。そういう生徒が、今よりちょっとだけでも行ってみようかな、と思える学校、こういう考え方が必要ではないかと、私は考えています。言い方を変えると、そういう生徒をきちんと受け入れていける学校づくり、それがまずコンセプトとして一番重要なのではないか、と考えています。
 ところで、では、どうしたらそれが出来るの、というと、回答はそんなにすっきりとは出ません。全県一区募集で、そういう生徒が入るように保障するというのは、入試制度上無理だと思います。
 入試制度の入り口だけの話ではなくて、そういう生徒も入ってきて、そうではない生徒も入ってこれる学校、という県側のコンセプトがありますね。じっくり勉強が出来るし、おそらく大学受験を念頭に置いた表現だと思いますが、自分の進路に適用して、そういう子も一緒に学べる学校、という言い方をしています。そういう人々すべてが丸飲みで居場所がある学校になれるようなカリキュラムづくりとか、生徒指導のシステムづくりとかが出来るかどうか、です。口で、出来ます、ということは簡単に言えるかもしれないけれども、非常に難しいと思っています。そのために、まずは最前線にいる我々が知恵を絞るべきだろうという観点で話し合いをしています。
 例えば、退学生徒の受け入れ、という言い方をしていますね。どうやって具体的に受け入れるかについての県の計画は、具体的に何も言及していません。また、ニューカマーと呼ばれる人々が川崎、横浜東部の寛政・平安高校辺りは非常に多いんです。そういう生徒をも優先的に受け入れて、しかも、そういう生徒がしっかりと日本語学習を含めて、学習していけるようなカリキュラム設定とか、各論もたくさんあります。今いる生徒、保護者の方々からすれば、私の子どもが行ける学校がなくなっちゃうことはどうしても許しがたい、という意見が多くあります。そうした要望に応えられる学校としてスタートできるかどうかがなかなかうまく言えないことが、今の我々の悩みになっています。今では、学校に自分を合わせなくちゃならないが故に学校に来れなくなる生徒が一杯いたんですが、ある意味ではフレキシブルという言い方は、自分に合わせられる学校に出来るととか、そういうような場所として保障できるかな、ということも考えています。
 これから、まず最初のコンセプトをまとめていく段階にさしかかる時期なんですが、残念ながら、今のところ、相手の川崎高校と最も基本となる線での議論がまったく出来ていません。予定では29日からの週に最初の両方の顔合わせをすると決まりました。本校の側からすれば、もっと早い時期に、県のオフィシャル委員会(我々はそう呼んでいるんですが)ができるはるか以前に、こちら側の体制を整えておいて、県が上位下達、つまり、こうなったからこうしてくださいという言い方を何とかさせないために体制づくりをしようとしたんですが、今の時点までに具体的にスタートしていないということです。
 ご承知のとおり、県の「県立高校改革推進計画」の第7章は、再編計画と直接関係ないんですが、校長のリーダーシップとか、その体制づくりとか、強く打ち出しています。そういうふうにしないためには、こちら側が先にしっかり体制を作っておく必要があることを痛切に感じています。

司会:どうもありが乙ございました。少なくとも、今いる生徒が来られなくなるような学校になってほしくない、さらに今いる学校に合わなくて退学していくような生徒も含めて来れるような学校、ということで、これからの学校づくりの一つのあり方をお話いただいたかと思います。
 次に梅本さん、お願いいたします。

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