まとめ

 各学校現場がこれまでとは違った新しい取り組みをしょうとしていることを、今回の調査結果からうかがうことができた。
(1) 各学校の卒業必要単位数と最大取得可能単位数の開きがこれまでよりも大きくなる傾向がある。これにより生徒の選択の幅も大きくなると考えられる。
(2) 卒業に必要な単位数において、学校間の違いが広がっている。
(3) 週あたりの授業時間数においても、学校間の違いが広がっている。
(4) 単位授業時間においてもこれまでとは違う動きが見えた。いままで50分以外の授業時間を設定する学校は一部に限られていた。今回の調査では相当数の学校が50分以外の授業時間を設定する予定になっている。
(5) 学期制も2学期制をとる学校が大幅に増えている。
(6) 学校独自の設定科目も、これまでは置く学校は一部にかぎられていたが、今回の調査ではほとんどの学校が設定する方向で検討している。

  これに「総合的な学習の時間」が加わる。こうした工夫の結果、学校間のカリキュラムの違いはこれまでよりも大きくなると考えられる。おそらくこれからは同じ普通科であっても、カリキュラムの上ではかなり違っていることになるのだろう。とくに卒業に必要な単位数の多い学校、最大修得可能単位数の多い学校は、当然のことながら週あたりの授業時間数も多くなっている。この傾向は、各学区の「進学校」とみなされる学校の中に、多く認められるようである。しかし、今回の調査では対象とするすべての学校から回答を得るには至っていない。また具体的なカリキュラムの中味にまで立ち入る調査もおこなっていない。この段階での断定は差し控えなければならない。
  また、各学校が独自の工夫をすすめることから、学校現場の負担がこれまで以上に大きくなることも予想される。「総合的な学習の時間」ひとつをとってみても相当のエネルギーが必要になる。その上に新しいさまざまな取り組みが重なる。いっぽう卒業に必要な単位数はそれほど大幅には減少していない。単位数が減ることにより現場に余裕ができるはずだ、と期待することはむずかしい。まして学校5日制にともなうウィークデーの余裕のなさもある。さらにこれまでとは違い、自分の専門教科以外の授業も教員は持たなければならなくなる。現場の努力を待つということではすまなくなるだろう。新しくつくられたカリキュラムがその趣旨にそって実現されるかどうか、その鍵を握っているのはこれからの条件整備だといえる。
  最後に年度初めの忙しい時期、しかも新しいカリキュラムを編成している時期に、アンケートにご協力いただけたことを感謝いたします。
(カリキュラムプロジェクト.三橋正俊、本間正吾、武田麻佐子)