神奈川県高等学校教育会館

教師の専門職性について−特に研修との関わりで−



全国教育法研究会

 研修は教育公務員特例法によって教育職にだけ認められており、教員としての専門職性の根幹を形作っている。しかし、現状は職務研修に限りなく近い研修のみが認められ、自主研修はほとんどが認められていない。(実態については成果物久保論文に詳しい)ここ30年の歴史をみれば、これまでもそれほど熱心に自主研修が行われてきたわけではない。研修と称して事実上休暇に近い扱いはされていたのが実態である。現在、休暇が余っているのだから、研修ではなく休暇を取ればいいのだ、という考えがあるが、かっての実態をイメージしているのではないだろうか。今も昔も自主研修は行われてこなかったのである(福岡で時短と研修が区別なく扱われてきたことが成果物柿沼論文に書かれている。)。
 そうであれば研修はまったく新しい視点で白紙から作り上げていくしかないのではないか。
 その点で初任者研修をどう考えるかということが重要になると思われる。成果物の論文等によれば初任者研修の最大の成果は初任者同士の情報交換等が最大のものであるようだが、これは副産物であろう、研修自体の内容の検討が重要であるが、ほとんど行われていない。
 ベテランの教員は官製研修そのものに拒否反応があり、内容の検討への問題意識が薄い。しかし、自らの労働に関わる研修は労働組合の最大の問題意識でなければならないし、要求の主要なものであるはずだ。労働組合の研修への要求等も今後調べてみる価値がある。
 教育法学会の研修に対する問題意識もはなはだ心許ない。教師の教育権の独立を前提にして、「研修計画の事前提出は検閲にあたる」とか、「校長の研修承認は“授業への支障”の有無を確認するだけの羈束行為」とか、かなり以前の説がそのままになっており、現実を変えるためにはまったく力にならないものばかりである。これでは“世間”から相手にされないのではないだろうか。
 研修に関する制度改革について前掲久保論文はいくつかの教育公務員特例法の条文変更について次のような提起を行っている。
  1. 研修の主体性の確保
  2. 勤務としての研修の明記
  3. 研修費の支給
  4. 長期研修の規定の新設
  5. 研修を行う場合の制限規定の明確化
 改めて“世間の理解”を得られるあらたな制度設計が必要ではないだろうか。


研究計画
  1. 年次研修の実際
  2. 若手教員の年次研修への取り組み
  3. ベテラン教員の官製研修を見る眼差し
  4. 研修をめぐる文部科学省の方針
  5. 教員養成と研修
  6. 自主研修をめぐる理論的諸問題
  7. まとめ
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