神奈川県高等学校教育会館

生徒の今日的健康課題と養護教諭実践の研究



子どもの健康課題と教育実践研究会

  
 校内一人配置(一部非常勤加配)で養護教諭は生徒の健康問題や学校保健の課題に取り組んでいます。
 養護教諭の教育実践を記録することで自らの実践を対象化して振り返り、また専門職集団で検討することにより他者の視点を得るだけでなく、参加者はその実践を追体験することができます。
 参加者各々の経験に照らし合わせて実践を検討評価する過程は単にレポートを批判するのではなく、謙虚さと互いの信頼関係を前提としつつ報告者から提供された実践記録を教材として学ばせてもらう貴重な機会です。一橋大学名誉教授 藤田和也先生をお招きして深い検討を共有することができました。

  1. 今年度検討されたレポート
    1)学校の安全と事故を考える 〜ケンジ(仮名)が話してくれたこと
    2)本当の自分をわかって欲しいと訴えたA子
    3)家庭環境に振りまわされる子どもたち
    4)莉緒(仮名)の不登校 〜学校と家族の協力〜
    5)神奈川高校教育改革とこの頃の養護教諭

  2. レポートの概要
    1)学校の安全と事故を考える 〜ケンジ(仮名)が話してくれたこと
     4階の校舎から飛び降りたケンジが語った中学校での抑圧された日常と教師・学校への不信感。そして高校入学をきっかけに解き放たれ「糸が切れた凧」(本文より)のようになったケンジの奇行とその心情を養護教諭として初めて知ることになった。安心感を持って過ごすことが安全観を育て危険と安全を冷静に判断・行動する力を身につけることになるのではないかと気付かされたレポート。

    2)本当の自分をわかって欲しいと訴えたA子
      しっかり者という印象を持たれていたA子が「私がいなくても困る人はいない…声をかけてくれる仲間はいるが、心配されるのは嫌だ」と話して以来欠席が続くようになった。同時にリストカットも始まったが、医療機関につなげることもできないまま養護教諭として対応を模索しながら関わった事例。無事卒業はしたもののA子との関わりを振り返ることで、養護教諭としてできたこと、できなかったことを再確認したレポート。

    3)家庭環境に振りまわされる子どもたち
     母親から暴力を受け児童相談所が関わるA子の苦境を知りながら「この年齢なら自力で暴力から逃げることができるはず」と言われてしまい、安心して日常生活を続けることが困難な状況にある事例。
    父親の女性関係と借金で家屋を失い、知り合いを頼って転々としながら借金取りから逃げ隠れする生活に疲労困憊している事例等、親の心身の問題が子どもに深刻な問題を及ぼしているレポート。

    4)莉緒(仮名)の不登校 〜学校と家族の協力
     自分の言葉で気持ちを伝えられない莉緒は友人関係が難しく、高校でも不登校になった。莉緒の気持ちを先取りして手を打ってしまう母、妹の苦痛を取り除くためにできることは何でもしてあげたいと願う兄。自立に必要なことは何かを家族に考えてもらえるよう担任・スクールカウンセラーと協力してサポートしたレポート。

    5)神奈川高校教育改革とこの頃の養護教諭
     新しい校内組織や総括教諭の導入により養護教諭の仕事や立場にどのような変化が起きているのか。
    学校保健業務が、新しいグループ編成の中で抱えている課題を問題提議したレポート。

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